波乱!ピンクジュエルVSちえり
ピンクジュエルは、何故この場所にちえりが居るのか、いつも側に居た勇吾が何故居ないのか、突然の出来事に戸惑っていた。
「ど、どうしてちえりちゃんがこんな所に居るの…?」
ちえりは、普段の子供らしい態度ではなく、年上のピンクジュエルに対しても高圧的な態度を取っている。
「ずっとあんたを待ってたのよ」
「私を…?」
ピンクジュエルは目を白黒させながらちえりを見つめた。
「ここに『魔神の壺』があるなんて、よく分かったわね」
「子供だからって、私を甘く見てたの?あいつには推理力なんてない、私が謎を解いてたのよ」
ちえりは蔑むような目でピンクジュエルを見つめる。
今まで千歳が見てきたちえりは何だったのだろうか、今は全く違う人物に見える。いや、これがちえりの本性なのだろうか。
「子供らしい態度を取ってたらみんなまんまと騙されちゃって、本当に見て欲しい事は何も見てないじゃないの」
「どういう事…?」
「警察なんて信用ならない、あんただってそう思っていたのでしょう?生憎、あんたの正体は分かってるのよ」
ちえりはピンクジュエルを指差して、こう叫ぶ。
「鳳千歳!あんたをここで追い詰める!」
ちえりは『魔神の壺』を持ってピンクジュエルから逃げた。
「待って!」
普段は逃げる立場のピンクジュエルが、まさか人一人を追う事になるなんて、全く予想していなかった。
「追い詰めるって言ってるのに逃げるなんて、どういうことよ!」
「分かってないのね、あんたと私は似たもの同士よ!」
千歳は、まるで自分を遠くから見ているようだと思った。今のちえりは、口調も態度も自分とよく似ていた。
「誰も私の味方をしてくれないのよ!」
「どうしてそう思うの?!」
ちえりはピンクジュエルにも動じず、ただ自分の思いをぶつける。
「本当は誰も信用してないんでしょ?!私だってそうよ!結局人間なんてね、自分の事しか考えてないのよ!」
「そんな…」
ピンクジュエルは、ちえりを追うのを止め、その場に立ち尽くした。
「そうやって精神的に追い詰めるのが私の狙いよ」
「凄いね…、あんたホントに小三なの…?私をここまで追い詰めるなんてね…」
ピンクジュエルはその場に跪き、
「私を見くびった罰よ、全部白状しなさい!」
ピンクジュエルは歯を食い縛った。
一方、アクアマリン達は、ピンクジュエルの姿が見えないと言って心配していた。
「おかしいな…彼奴の姿が見えない…」
「何処に消えたのでしょうか…」
アクアマリンは、ピンクジュエルの姿がずっと見えない事に不安を感じていた。
「アクアマリンさん?」
それを見かねた涼平がアクアマリンにこう話し掛けた。
「心配なんだろう…?」
「うん…」
「何処に行ったのでしょうか…?」
すると、一人の警官が厄神警部に向かって駆け付けて来た。
「厄神警部!向こうの部屋からピンクジュエルの声が!先に他の方が向かっておりますが!」
「そうなのか?!」
厄神警部とアクアマリンとりんかと涼平は、その警官に付いて行き、ピンクジュエルが居るとされる部屋に向かった。
ちえりはピンクジュエルの目の前に来て、指を差した。
「さぁ、観念しなさい!」
ピンクジュエルは追い詰められながらも、ちえりの顔をじっと見つめる。
「どうして私を追い詰めるの?私が、ちえりちゃんに何かやったっけ…?」
「理由なんてないわ!」
「理由がないなら…、何故私を…?」
「私とあんたは似てるからよ!」
すると、天井から大きな音が聞こえた。
「えっ?!」
ちえりの真上から、巨大なシャンデリアが落ちてくる。ちえりは避けようとしたが、間に合いそうにない。
「危ない!」
ピンクジュエルは、ちえりを庇って、シャンデリアを避けた。
突然の事でちえりは戸惑っている。
「何で…、敵であるはずの私を助けたの…?」
「目の前でピンチになってる人を放っておける訳ないでしょ?!」
「そんな…でも!」
「帰ろう…、待ってる人が居る場所へ」
ピンクジュエルはしゃがんでちえりと身長を合わせる。
「何よ!私にはもう帰る場所なんて…、ないのに…」
「ちえりちゃんも、お父さんとお母さんが消えたんだよね…?」
「それはそうだけど…、一緒にしないでよ!」
ちえりは、意地を張るのに疲れたのか、ピンクジュエルの目の前で泣きじゃくった。
「本当は…、呪宝なんてどうでもいいの。お父さんとお母さんに会えたら…、それで…」
ピンクジュエルはちえりの目の前に手を差し出す。
「ちえりちゃん、帰ろう…」
ちえりは、ピンクジュエルの手を振り払い、その場所に留まった。
ピンクジュエルは『魔神の壺』を持ち出さずに、その場所から立ち去り、屋敷から出ていった。ピンクジュエルの目には、哀れみが浮かんでいた。
アクアマリン達が着いた時には、ピンクジュエルの姿は消え、ちえりだけがその部屋に居た。
「ちえりちゃん、こんな所に居たんだ」
「あ…、」
厄神警部がちえりの前に来て、そっと手を差し伸べた。
「ちえり君…、行こうか」
「行くって何処へ…?」
「ご両親が見つかるまで、預かってくれる場所を探すしか…」
「お父さんとお母さんは、見つかるの?!」
せがむちえりに対して厄神警部は一言こう答えた。
「…尽力するよ」
警官の一人はちえりを連れて、パトロールカーに乗って何処かに行ってしまった。
一方、臼井刑事は、ピンクジュエルが落とした『魔神の壺』を持って戻ろうとした。すると、基博が駆け寄って来る。
「すみません、返してくれませんか?」
臼井刑事は、元大財閥の重鎮と呼ばれる人物に対しても媚びす、毅然とした態度で断った。
「この壺は盗難届が出されているのです、とても返す訳にはいきません。それに、どういう経緯であなたはこれを手にしたのですか?」
「それは…」
「この問題はお金で解決するようなものではありません。とにかく、署で詳しい話を聞かせてもらいますよ?」
「はい…」
基博は、臼井刑事に促されて、パトロールカーに乗せられて行った。
取り残されたアクアマリン、りんか、涼平は、二台のパトロールカーが行った方角を眺めていた。
「ちえりちゃん…」
「見つかるといいね、お父さんとお母さん…」
「ああ…、俺達の為にも…」
アクアマリンはそう言って顔に影を落とした。
「アクアマリンさん…」
アクアマリンは、二人の目の前で帽子と鬘を脱いで、青葉の姿になった。
「あの財閥が俺達の大切な人を、ものを奪った事は事実なんだ。涼平は五星財閥を憎んでいるか?」
「ああ…」
「でも…、行方不明になった母さんはこうも言ってるんだ。憎しみじゃ何も解決しないって…」
青葉は額の汗を拭いて、前を向いた。
「じゃあ何が解決するんだよ…」
「それが分かれば苦労しないよ…」
三人はこの場で別れ、それぞれの家路に付いた。




