ハルの始まり
祝!5000PV!
皆さん本当に有難うございます!嬉しくて涙がちょちょぎれそうです!
私立百合ヶ丘小学校。
ここ、百合ヶ丘では比較的最近にできた、新設の私立小学校だ。
校舎は昔ながらの白い校舎ではなく、お洒落なレンガ調。植木も、ただ単に真四角に切り揃えられているわけではなく、小学生達を楽しませるような可愛らしい造形のものばかりだ。そこに舞い散った桜が積もり、桃色の装飾を施していた。校舎から門までの間にある大きな噴水には、百合の花を手に持った天使の彫刻。
明らかに普通の小学校にはないものばかり。何を隠そう百合ヶ丘小学校は、ここ百合ヶ丘随一のお嬢様学校なのだ。
この豪華な装飾や建物も全て『恵まれた環境で子供を育てたい』という親の気持ちからできていると言っても過言ではない。
入学当初、学生達はその洋風な校舎の異質さにどぎまぎしながら過ごすこと請け合いだ。
中でも大きなレンガ造り風の校門の圧迫感は、去年、一昨年と新入生の度肝を抜き、震え上がらせてきた。
しかしそれも入学式からちょっとの間の話。三日もすればこの洋風のソレは朝の顔となり、毎日の始まりと終わりをを感じさせる学生達の友となるのだった。
だが…校門の威圧感に負けそうになっている生徒がここに一人。
校門から少し離れたところで立ち尽くす一人の少女。
肩に先がギリギリ届かない長さの茶髪はストレートながらも自由きままにふんわりとまとまり、端からぴょこんと跳ねた髪が愛嬌を感じさせる。
あたりをキョロキョロと心配げに見渡し、大きめの笑い声にビクビクする彼女。
もう四月の始め。新入生でさえ、既に入学式から二週間が経とうというこの時期にどうして?彼女が特別臆病だから?いや、そうではない。
佐久間 春。彼女が緊張するのも無理はないのだ。なんせ今日がここ、百合ヶ丘小への初めての登校。そう、彼女は…
…転校生なのだから。
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「うわぁ〜…大きい…」
こんなに大きな門は見たことないや。
絵本でみた巨人さんが作ってるのかな。でも巨人さんは力もちだからレンガなんて掴めないと思うんだけどな…。
そんなことを思ってると、まさにお嬢様って感じの女の子がわたしの方を、通り過ぎざまにちらっと睨んでくる。
うう…どうしたのかな…こわいな…。
やっぱりむりだよお母さん。わたし、こんなお嬢様学校じゃやっていけないよ…。
そうだ。お母さんに渡された手紙をもう一回読んでみよう。
お婆ちゃんが送ってくれた黄色のランドセルから手紙を出す。
────ハルへ。
緊張しちゃだめよ。お嬢様学校とは言ってもみんなハルと同じ小学生。大丈夫、すぐに仲良くなれるわ。
こわいな、と思ったらすぐに先生や大人の人に言うのよ?そうね…緊張したら素数を数えるといいわ。
素数…?もとかず…かな?
お母さんの手紙は時々難しいことが書いてあってよくわからない。
────お母さんはまた忙しくてしばらく帰れなくなるけど、お婆ちゃんがお家で待ってるからね。安心して。
あと…この前した約束は覚えてるわよね?
ええと…たしか…
「人に良いことをされたらありがとう…」
────それだけ守っていれば大丈夫。新しい学校で良い生活が送れますように。
母より。
手紙を折りたたんで胸ポケットにしまう。なんだか元気が出てきたような気がする。うん、もう大丈夫。
お母さん。わたしがんばるよ。
わたしは巨人さんの門に向かって進む。
もう門の前だ。…やっぱり怖くて進めない。
固まっていると後ろから高飛車な感じの声をかけられる。
「あの〜詰まってるんですけど!」
あああ…!はやくいかなきゃ…!
あっ!門のレールに足が…!
た、倒れちゃう…!
ふわっ。
…あれ?わたし倒れたとおもったんだけど…。
なんだか優しい力でわたしの体が支えられてる。
「おっとと…大丈夫?」
……!うわぁ…凄い綺麗な人…!黒い髪!白い肌!それに真っ赤な瞳…!
わたしはぽかーんとしてしまった。こんなに綺麗な人が世の中にいるんだ…。
「よいしょ」
そのまま黒髪の人はわたしを立たせると、ぱんぱんとわたしの制服の汚れを払ってくれる。
その間、わたしはずっと目が離せなかった。
「これでよし…と。もう倒れたりしないようにな」
「は、はい…」
「ルノさーん待ってくださいよー!」
そこに現れた人の姿にわたしはまたまたびっくりしてしまった。
真っ白な髪の毛。それよりも白い肌。それに黒髪の人と同じくらいのとんでもない美人さんだ。
「おー悪い悪い。…それじゃまたな!」
「あ、また…」
黒髪の人と、白髪の人。二人が並んで歩く姿はまるでどこかのおとぎばなしみたい。
わたしはしばらくぽけーっと二人の背中を眺めていた。
あんな人たちがいるんだ…!お嬢様学校ってすごい…!
また会えるかな…。
二人の背中が見えなくなった頃、わたしはふと思い出した。
「あ…!」
ありがとうって言ってない!
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わたしはばくばく鳴る心臓を抑えながら先生の後ろについていく。
先生が言うには、朝の会が始まる前に皆に自己紹介をしなければならないんだって。
それを聞いてからもう冷や汗が止まらない。
うぅ〜なんて言おう…。
「でも珍しいわねぇ。始業式が終わってすぐのタイミングで転校生なんて」
本当は始業式から出るはずだったんだけど、引っ越し屋さんの手違いで、荷物が別の場所に届いちゃったんだよね…。もし始業式からだったら、ここまで緊張しなくてよかったのに…引っ越し屋さんのばかばか!
「それに三人も」
え?三人?
「せ、せんせい。わたしの他にも転校生がいるんですか?」
「ええ、言ってなかったかしら?他にも二人。貴方と違って、本当につい先日に入学したいって届け出があってね」
へー…何か理由でもあったのかな。
「急だったから…今日の転校生は皆、同じクラスになったのよ」
ええ!?同じクラス!?
どどうしよう…わたしだけ自己紹介で失敗したりしたら…
今からもう顔が真っ青だ。
「ふぅ…ほら、ここよ」
えーと「6-A」…六年…A組?
わたしの前の学校だと数字で『1、2、3』って数えるクラスだったけど…。
うーんやっぱりお嬢様学校。こんなところでも英語の勉強だ。
「あれ?二人とも先に来てるはずだったんだけど…すぐに二人も連れてくるからちょっと待っててね」
先生がタタタ…とどこかへ駆けていく。
よ、よし!この時間で頑張って自己紹介を考えなきゃ!
えーと…まずは名前…それから…それから…。
ヒョコッ。
「あ!転校生の子!?」
ふぇ!?気づけば目の前に顔があった。
赤毛のポニーテールの女の子だ。声が物凄くハキハキしてる。
「そ、そうです…」
「へー!よろしくね!」
わたしの手を力強く握るポニテの女の子。社交的ってまさにこの人みたいなことを言うんだろうな。
「私、碧井千夏!チナツって呼んで!あなたは?」
自己紹介自己紹介えーと…。
「え…えとわたしは佐久」
「あ!そうだ!ここで紹介するより、ホラ!皆の前で紹介した方が効率いいじゃない!」
「へ?」
碧井さんが教室のドアをガラガラッと開けた。
え!?ちょちょっと!?
「ホラ壇に上がって!さぁ!」
碧井さん!?無理!無理だって!
いいからいいから、と背中を押されて教室に入る。
と同時に。
じぃ……。
視線。視線。視線。視線…。
皆がわたしを見てる…。
体が急にカチコチになった。
気づけばもう壇上。
だ…だめ…目が回りそう…。
跳ね回る心臓を押さえつけ…られない。顔が熱い。
しゃ…しゃべらなきゃ…。
「ひゃ…ひゃの…」
舌がまわらない…教室がザワザワし始めた。
あの…あの…。
あぁー!もうダメー!!
ガララッ!
え?誰か入って………………あ!!
「すいません!ちょっと迷っちゃって…」
「ほらやっぱり北館じゃないですかー」
ざわめいていた教室がシーーンとなる。そして次の瞬間。
教室内が一瞬で色めき立った。
わたしも頭の中ではまるで電気がビリビリ走るような衝撃を感じていた。
黒髪と白髪の超絶美少女コンビ。
ドアを開けたのは、わたしを門のところで助けてくれた、まさにその二人だった。
そのまま二人は壇上に登ってきて、私の真横に並んだ。
これって…
もしかして…もしかしなくても…
この二人が…転校生なの!?
次は2/14夜投稿予定です。




