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(駄目だ、こいつとは、分かり合える気がしない。)
よほど恥ずかしかったのか、クイは、ソファの背もたれに顔を突っ込んで、小さく丸くなっている。
(まったく、なんで朝っぱらから、しかも会議室なんかで……。)
そこまで考えたとき、不都合な記憶が頭をよぎった。
(あ。)
そういえば、オレリアスがクイを襲ったのも、真っ昼間の社だった。
あのとき、大雨で辺りは薄暗かったが、あれは間違いなく昼間だった。それに、社も公の場所だ。誰がいつ、何時入ってきても、何も文句は言えない。
(ち、ちがう。あれは、少し脅かしてやろうと思っただけだ。クイは俺を嫌っていたし、少し脅かせば、言うことを聞くと思っただけだ。)
しかし、今度は別の考えが脳裏をよぎった。
(……クイも、領主を脅してウテリア領を奪う気でいたな……。)
そうやって考えると、二人の発想は同じだった。
何事も力で解決しようとする短絡的な思考。
(いや、俺は、クイとは違う……。)
否定しようとして、オレリアスは、やめた。
相違点を挙げても仕方がない。
共通点の方がはるかに多いのだ。
二人とも、己の剣の腕だけで、ずっと大切なものを守ってきた。
(そうか。)
オレリアスは、冷静さを取り戻すと、
(俺たちは、似たもの同士なんだ。)
と、観念した。
(それでいいんだ。互いに尊重しあえば、誰よりも分かり合える。)
オレリアスは、クイを見た。
詫びなければならないことは、いくらでもあるのに、彼女はもうすでに何もかも許して、ここにいる。これから先もずっと、自分を慕って、そばにいてくれるのだろう。
オレリアスは、彼女の気持ちに報いたかった。
「クイ。」
オレリアスが呼びかけると、クイは、恐る恐るこちらを向いた。
「……はい。」
「クイ、俺と結婚してくれないか?」
「!?」
正式なプロポーズは初めてだ。
「俺と結婚してくれ。」
「……ほ、本当に?」
「ああ。」
「……わ、私でいいの?」
「いいんだ。」
未だ半信半疑のクイに、オレリアスは、優しく微笑みかけた。
「俺は、お前がいいんだよ。」




