6-2
オレリアスは、部屋から出ると、そのまま一人で外界へ向かった。
道中、オレリアスは、様々なことを考えた。
まずは、あの細身の男のこと。
一体、あの男は今、どこに隠れているのか。
昨日、クイを伴って領内を歩き回ったが、それらしい人物は現れなかった。二人の兵長の報告でも、有力な手掛かりは何もない。身元が怪しい人間も見つからなかったし、これでもう、打てる手は一つきりだ。
(正直、気が進まないが、今日会議室で、直接クイを問いただす。)
そして、クイのことについても考えた。
(彼女は、芯の強い女性だ。)
若さゆえによく泣いたが、彼女は、どんな運命にも立ち向かおうとする気概を持っている。あの気丈さは、他の女性には見られない。その強さこそ、オレリアスが結婚相手に求めているもの、そのものだった。
(……失いたくない。)
これまでずっと、オレリアスは、女性を扱いづらいものだと思っていた。
この外見がいけなかったのか、すべてが威圧的に見えてしまうらしく、オレリアスは、女性の前では常に紳士的に振舞わねばならなかった。
だが、そのうち、オレリアスは、女性に合わせることが面倒になった。どうせ、素で付き合える女性などいない。例外的に、スフィアだけは対等に口論できたが、あれほど口うるさい女は、こちらが勘弁してほしい。
だが、クイは、スフィアとも違っていた。
社で恐ろしい目に合わせてしまったのに、クイはオレリアスを好きだと言った。こちらを恐れるどころか、嬉しそうに頬を染めて、「頼りがいのある素敵な方」とも言ってくれた。
(……どこまでが、本心なのだろう。)
彼女を信じていないわけではない。だが、彼女は厳しくしつけられた女性だ。もしかしたら、結婚相手のいい所だけを見る様に言われているだけなのかもしれない。
(……クイ。)
オレリアスは、クイを試したくなった。
オレリアスは、外界の森の中に入ると、魔獣を切って返り血を浴びた。血振りをして剣を納め、オレリアスは、血で汚れた自分をかえりみる。
(スフィアは、返り血を浴びた俺を魔獣みたいだと言っていたな。)
誰の目にも恐ろしく映る自分を、クイは、どう出迎えるのか。
オレリアスは、自分のしようとしている事にため息をつくと、クイの待つウテリア領へと踵を返した。




