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5-1

   五日目

 

 早朝。

 オレリアスは、呼び出されて会議室にいた。

 会議室には、二人の兵長、ゴドウィンとスフィアが待っていて、地図や剣などが置かれた机上を、とても難しい顔で見つめている。

「どうした?」

 悪い話である事は、一目で分かった。

「ああ、朝早くに、ごめんなさい。いくつか報告したい事があって……。」

 スフィアは、机上の剣を指差した。

「まず剣の出所が分かったの。」

「ほう。」

 それは、不審な男が投げつけてきた剣だった。明らかに量産型の剣を、スフィアは、たった一晩で調べ上げてくれたらしい。

「早いな。で、どこの領地のものだった?」

 すると、スフィアは、軽くため息をついた。

「これはね、うちのものよ。」

「?!」

「先月の点検日までは、詰め所に保管されていたことが確認できたわ。」

「……。」

 オレリアスは驚きに声を失った。

 では、あの不審な男は、誰かが常に待機している詰め所から、誰にも気づかれずに剣を持ち出したという事か。

 さらに、ゴドウィンも、机上の布を引っ張り上げた。汚れた布だと思っていたそれは、広げてみると男物の服だった。

「これは、あの男の服です。」

 確かに見覚えがある。

 昨日、目撃したときより汚れているが、確かに、あの男はこの服を着ていた。

「これをどこで?」

 オレリアスが急かすと、ゴドウィンは、難しい顔で頷いた。

「昨夜、東の境界付近の、柊の植木の中で見つけました。」

「!?」

 それは、障壁のすぐ内側。

 そこに服が脱ぎ捨てられているということは。

「あいつは、今、ウテリア領内にいるということか!」

 オレリアスは、その事実に震えた。

 これまで外界に潜んでいると思われていた男は、実は、障壁の近くで変装し、ウテリア領内に潜入していたのだ。さらには、オレリアスたちのいる詰め所にも、何食わぬ顔で紛れ込んでいたことになる。

「どうなっているんだ。」

 オレリアスはうめいた。

 詰め所にまで侵入されて気づかなかったとは、もう素人の仕業しわざとは思えない。目的を悟らせない手際てぎわの良さもしかり。もしかしたら、かなり大掛かりな組織が動いているのかもしれなかった。

「うぅ。」

 これは、一領地で対応できるレベルのものか。

 今さらながら、アムイリア領の侍女や従者が早々に発ってしまったことが悔やまれる。彼らがまだウテリア領に居てくれたなら、何かしらの話が聞けたはずだ。もちろん、最終手段として、クイ本人に訊く手も残されている。だが、クイがあの男の存在を知ったとき、どう動くか予想がつかない。

「ゴドウィン。街道に検問所を設けて、他領地の人間を足止めしてくれ。それから、境界の警戒を強めてくれ。境界を出入りしていた人間がいれば、その場で拘束して構わない。」

 人手が足りない事情は分かっていたが、もうそれぐらいしかできる事がない。

「それから、スフィア。お前は、最近、他の領地から来た人間を、片っ端から洗ってくれ。たぶん、協力者がいる。」

「分かったわ。」

 そして、オレリアスは、ふうとため息をついた。

「俺は今日、クイ姫をなるべく人目に触れるように連れ回してみる。」

「?!」

 それをスフィアがとがめた。

「クイをおとりに使うつもりなの?!」

「ああ。」

「危険よ!」

「承知の上だ。クイ姫を連れ去られるようなヘマはしない。それより、お前は、領内の動きを見ていてくれ。何かしら、領内で反応があるはずだ。」

「……。」

 不満げなスフィアを制して、オレリアスは頭を下げた。

「無理ばかり言ってすまない。あの男は、必ず俺が捕まえる。何人協力者がいようと、そいつらにウテリア領を好きにはさせない。だから、あと二日。あと二日だ。俺に力を貸してくれ。」

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