↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/13

第12話 『無敵ではない二人』

初日の三連勝は校内を大きく騒がせた。


参加表明を見た生徒は最初はみんな笑っていた。

水属性とレベル1のペアだったからだ。


ところが終わってみれば病院送りは6人。

龍王・水瀬ペアは無傷。


戦いは派手。

しかも必須スキルの魔装鎧は二人とも使っていない。


―――翌朝。

校内掲示板、公式も非公式も校内ネットニュースでも大きな話題があった。

個人戦予選で九条烈華がキックだけで全員病院送りにした。

風間紫苑も華麗に連勝スタート。

そしてダブルスは『驚異の新星現る』と龍王・水瀬ペアがクローズアップされていた。


―――龍王・水瀬ペア。

『あの水属性なんだよ、面白すぎるだろ、しかも強いって』

『水の・・・丸くなるやつ反則だろ』

『龍王何もしてないじゃん』

『いや、逆に何かしてるとか?』

『気のせいか?魔法全部逸れてたぞ?球体で弾いてるのか?』

『結界じゃね?』

『玉姫さまが強すぎ・・・龍王はいないのといっしょ・・・ワンマンチームだ』

『龍王は指揮官らしいよ』

『フィクサーじゃね?・・・冗談だよ。結局無能ってオチ!』

『今日は全敗するって、そんな甘くねえ』


まだまだ書き込みがあったが景真は朝から掲示板を閉じた。

(目立つのは嫌なんだけど、僕のことは下に見てくれてるみたいでよかった・・・理想的だ)


隣では月乃も同じ画面を見ている。


「ご、ごめんね、なんか変な感じになってるみたい・・・」

「ん?そう?」

「全部あたしが倒しちゃってるし・・・」

景真が役立たずだという書き込みで心が痛いのだ。


「いいんだ。そのことなら全然大丈夫、得意なのは分析なんだ、強敵はまかせて。あと指示を出した時は従ってくれるとうれしいけど」

「その方があたしはうれしいわ。田舎から転校してきてて結構世間知らずであたしは。あとあれ以外にも攻撃魔法はあるけどあれが得意で・・・あの・・・だめかなあの術・・・」

「全然いいよ、強いし、単純明快だし、美しいし、アレを主軸で戦っていこう」

「あとあの、攻撃魔法が途中で消えるのは、あれはなんなの?」

「ああ練習中なんだけどね、ほとんどの魔術を跳ね飛ばして反らす術だね、タイミングと角度が良ければ相手に跳ね返せる」

「すごい術ね」

「君には勝てないよ・・・ゴージャスだよ、水瀬さんは」

「ええ、うれしい」

なぜか景真は水瀬月乃相手だと饒舌だし誉めることができる、これが紫苑なら憎まれ口の応酬になるだろう。

(このシルエットが安心感をもたらしているのかもしれないな)

月乃自身、知らずに笑っていてそれに気づいて驚いていた、作り笑いじゃない自分の笑顔なんてもうしばらく思い出せない・・・。


「素敵な人ね、景真くん」

「ああ、よく言われるよ、君こそ唯一無二だよ」

「そんな」

景真は初めて素敵なんていわれた気がするがそんなことはどうでもよかった。

お互いに必要なものを補っていたのだ。


(これはラッキー、彼女が前衛で僕が後衛でしかも相手ペアも観戦者たちもほとんどは僕のフォトンシールドが見えないはずだし・・・目立つのは彼女だけ。実力を隠しながら戦える、なんてたってレベル1だからな)

(こんな人初めて、下界に思い切って出てきてよかったのかも、いきなり運命の人と会うとか・・・?いえまだ分からないけど)

何気ない会話で明らかに距離が少し近づいていた。




―――2日目。

今日まずは3試合だ、これは予選運営が相手を決める。

それからあと3戦だ。これは自由戦と言われて、希望者どうしがランダムで選ばれる。

ただしなるべくポイントが近いペアどうしがマッチする。

つまり二日目からは6戦戦える。

僕らは全部エントリーして勝たなくては上位には食い込めない。


・・・さて、昨日と違って相手は完全に警戒しているはずだ。


相手は1年生、2人とも風属性だ。

魔装鎧から少し緊張した顔がのぞいている。

「絶対近付くな!」

「水球になる前に倒せ!行け!カマイタチ!」

開始直後。

二人と風の召喚獣一匹が一斉に水瀬へ魔術を放った。


―――大瀑布―――

まだ巨大水球は完成していない。


(水瀬さん狙いか、僕は眼中にないと・・・いいね。まあ予知夢どおりだけど)


ついさっきだ。

景真はわずかに目を閉じていた。

夢の書庫だ。

分身は丸一日、訓練していた。

その数200万回以上、気の遠くなるほどの反復練習だ。


―――光子結瞬―――


その正体は、60分の4秒だけ現れる極小の光の盾だ。

ゲーム好きの僕に言わせると4フレームだけ現れる、1秒は60フレーム。


弾丸を弾丸で撃ち落とすような精密さが要求される異常に難しい術だ。

失敗すればそのまま直撃、あるいはただの隙、防御失敗時は2秒ほども魔術が使えなくなるのだ。

成功すれば魔力消費はほぼゼロ、さらに間髪入れずに次の盾を作ることができる。

さらに盾の強度はびっくりするほどの硬さを誇る。

単発魔術だけなら理論上無効化できる。命はタイミングだ。

成功すればメリットは凄まじい・・・魔力消費無しで敵の攻撃を跳ね返せる、あるいは無効化できる。

だが超難易度で誰も使いこなせない。

だから不人気魔術だったらしいがきゅんちゃんが見つけてきたのだ。


―――コン!


景真は分身に軽く触れる・・・それでスキルや練習で得られたすべてを習得できる。

(うわ、すごいな。自分の指先のようにこの盾を使いこなせるぞ)


水を召喚している水瀬月乃の目の前。

何もない空間。

ほんの一瞬だけ光が弾けた。


パンッ。


迫りくる風弾が消える。


次。

風刃。

また光る。


パンッ。


風刃。


パンッ


風の刃はあらぬ方向に飛んで行った。


観客席がざわついた。

「今何した?」

「魔法が消えたぞ」

「見えた?なにかの術?」

「いや」

「軌道変わっただけじゃね?」

「だからなんで変わったんだ?」

開始線から動かずに景真本人だけは何事もなかったように立っている。


「水瀬さん・・・」

「うん!」


その一言で十分だった。


―――ゴォォォォ……

巨大な水球が既に生成されていた。

圧倒的な質量は高速回転しながら相手ペアに突撃した。

風の召喚獣は一瞬で巻き込まれ消滅。


「カマイタチが!くそ!」

「来るぞ!」

相手ペアは左右逆方向へ逃げる。


しかし景真が淡々と指示を飛ばす。

「まず向かって右を倒して」


巨大な水球が水しぶきとともに突撃していく。

昨日計算した、重さは約14トンだ。


「そのままね」

一人轢く。


「左に最速でカーブ・・・そこで20度左・・・」

もう一人、回避しようとしたが景真の指示通りで正面から轢かれた。

魔装鎧が砕け飛び二人とも救命バリアに包まれた。


「終了・・・」

「お疲れさまでした」


試合終了。

時間。

18秒。




―――二試合目。


この試合も秒で瞬殺だった。

ダブルスで秒殺は珍しいのだが観客と化している生徒たちは大いに湧いていた。


三試合目。

今度はペアの一人に飛行型がいた。


「次の相手は空飛ぶ奴がいるからね、向かって左が空を飛ぶ。右から倒して」

「え、そんな能力なの?」

困った顔で月乃は闘技場の上を見上げた、体育館の天井までが闘技場として結構高い。

「大丈夫だよ」

すでに景真は予知を3回終えていた。

(やっぱ苦戦するよね・・・でも相手もポイント低いしそれほどの実力者じゃない。飛行もレベル低いし、まあ苦戦っていうか)


あっという間に・・・。

一人目は轢かれた。


もう一人は空を飛ぶ、1年生では強い方なんだろうけど。

飛行魔術はそこそこ難しい部類に入る。


「とにかく空中の相手を追いかけて・・・」

「はい!」

「火炎放射は低レベルだから大丈夫」

「はい」


相手の真下を通り抜けてはまた狙う。

そいつの火炎魔術では水球にダメージはない。

(もう少し、もう少しだ・・・そこ!)


「今!最速で全力でまっすぐ!」

「え、はい」


相変わらず景真は開始線から動いていない。


「結界の端まで行っても全力だからね」と声を出しているだけだ。

凄まじい回転力で重さ14トンの巨大水球は・・・結界の壁を垂直に登っていく。


「えええ!うわ!あ・・・」


―――ドゴォン!

―――ドン!ドン!ドン!・・・・ドサッ!


結界でできた壁際を飛んでいた彼は空中で巨大水球と接触事故にあい轢かれた。

そして彼は結界の天井にブチ当たり転がりながら闘技場中央に落下した。

苦戦した、今までに中では・・・62秒もかかってる。


勝利。

そして歓声だ。


『なんだ!この戦い方』

『玉姫さま、壁登れるのかよ』

『また無傷だぞ』

『あの水球無敵だ・・・魔術反射だ』

『すっげえ水瀬月乃・・・』

『あの戦車やっべ!』

『無能兄ちゃんって何かしてる?』




―――その日の夕方。

全試合を戦い終わって中庭でベンチに腰かけている。


携帯をチェック・・・ランキング更新。

龍王・水瀬ペア。

72位。

「もう72位?140組もエントリーしてるのに」

「まあ9連勝だしね」


月乃は信じられない顔をする。


「勝率100パーセントだしでもまだまだこれからだよ」

「地区大会出場枠って二組でしょ?つまり2位以上だけど・・・」

「まあ行けるよ」

「どうして?」

「月乃さんがいるからさ、君がいるとやる気が出るのさ」

「・・・え?」

景真は当たり前のように答えた。

頬が赤くなるのを月乃は感じていた。


(最悪、月乃さんを盾にして一瞬眠って未来予知する手もある・・・使えるものは使わないと、本当にこの月乃さんのサイズは頼りになるな、最高の相棒だ!)

(この人の言葉ってどうしてこんなに安心するんだろ。まだ6戦なのにこんなに信頼できるパートナーなんて・・・会ってまだ数日なのにずっと前から知っていたみたいな気持ち。指示は的確だし。あんな高度な防御術見たことないわ。やっぱりすごいんだ)


「そういえば初めて名前で呼んでくれたね?」

「そうだっけ?うれしくてついね・・・」

「え、うれしいの。そんな」


二人はにこやかに微笑みあっている。


(行けるよって言われるとそんな気がしてしまう。大丈夫って言われるとリラックスできる、なんだろうこの幸せな感じ・・・優しさと強さであたしを包んでくれる)

(こんな強い前衛最高だ・・・壁になるし、人目を引くし、僕より目立つし、悪いところがない)




―――旧校舎。

月乃とは手を振って先ほど別れた。


編集長はまたまた腹を抱えて笑っていた。

「くくくく・・・王様よ!」

「何?」

「お前戦っとらんではないか!」


(だいたい編集長は王様と呼ぶが全く敬ってこない、だがそこがいい)


「防御してるよ」

「いや相方が全部轢いとる!」

「そうだね」

「ニュウスペイパアの見出しが毎日困るのである!」

編集長は黒板へ書き始めた。


『暴食水星の食事処』

『なぎ倒せ!鋼鉄水球姫』

『災害指定少女』

『水圧戦車』

『転がる死神』


「全部違うな、水圧戦車はまあまあであるか・・・」

「僕はこの水球水まみれ煉獄でいいと思う」

「候補にも上がっておらん!却下である!」


後ろで手を組み編集長は悩み続ける。

景真はその横で新しい戦術を考えている。

今のところ自分には誰もほとんど攻撃しない。

守ることだけに集中できる。


―――光子結瞬。


きゅんちゃんによれば龍王家に伝わる奥義の一つらしい。

防御成功時は消費魔力最低レベル・・・防御硬度最強レベル・・・魔術・気功・魔装武具による攻撃を防ぐ・・・弱点属性なし・・・防御失敗時は魔力消費に加えて隙大・・・発動に必要な異能レベルは低いがスキルレベルは最高難易度・・・60分の4秒、半径12センチだけ無敵。

完全習得まで、あと少し。



 

―――夢の書庫。

現実では眠っている景真。

分身は今日も魔法陣の上で盾を出し続ける。


迎撃。

迎撃。

迎撃。


きゅんちゃんの声だけが静かに響く。

「迎撃成功率93.718%。」

「目標、一万回連続成功、これから尻尾での斬撃攻撃も追加します」


見た目は景真と寸分同じの分身は無表情で頷く。


「まあやるしかないけど。やれやれだ。レベルが低すぎるんだ」

「景真、無駄口を叩く暇はありません、主さまのために勤めなさい」

「もともと僕も主さまのはずなんだけど。もう少し敬ってもらわないと」

「貴方はわたしより後で生まれました、弟です―――」

「―――さま。分かりました。本体である龍王景真さまのために、この景真頑張ります」


失敗すれば、最初からやり直し。

現実では一夜。

夢ではさらに数十日が過ぎようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。