第57話 六度目の前に
例外回数:五。
次が六なら、
協定は強制的に再設計段階へ移行する。
だが世界は、
制度の都合を待たない。
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警報は、静かに鳴った。
今度は大規模ではない。
小さな位相歪みが、
三文明の複数地点で同時発生する。
「閾値〇・九四」
「〇・九六」
「〇・九三」
いずれも、未到達。
だが同時。
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辺境領。
「分散共鳴」
レインが即座に言う。
「六に到達させる形ではなく、
六を“避けながら”圧を高めている」
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中央評議会。
レオニスは立ち上がる。
「予備評価、全域展開」
「それは揺らぎの圧縮だ」
補佐官が小さく言う。
「承知している」
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三文明通信。
「六度目を発動させるべきだ」
ゼルが言う。
「強制再設計に入るべき」
「発動は危険」
ミラが反論する。
「六は象徴になる」
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Σの演算が走る。
「未到達事象の累積値、臨界接近」
「六を回避しても、圧力は消えない」
Δの波形が重なる。
「六は数字」
「揺らぎは数値ではない」
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沈黙。
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レインが、静かに言う。
「六を待たない」
視線が集まる。
「強制再設計ではなく、
自主再設計に入る」
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「条文にない」
ゼルが言う。
「補則第五条は“到達時”発動」
「準備段階は既に始まっている」
レインは応じる。
「六は、制度の都合の数字だ」
「世界は数字を待たない」
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レオニスが、ゆっくりと頷く。
「自主再設計なら、
六を象徴にしなくて済む」
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サエルが言う。
「百年後の予測は空白」
「今は、柔らかくするしかない」
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空の歪みが、さらに増える。
だが閾値は越えない。
世界は、六を誘っている。
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「協定を」
レインが言う。
「境界保護型から、
揺らぎ吸収型へ変更する」
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「吸収?」
セシリアが問う。
「揺らぎを一点に集めない」
「三文明で分担する」
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Σが即座に演算する。
「負荷分散モデル、構築可能」
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レオニスが言う。
「制度強化ではなく、負荷共有」
初めて、
彼の言葉がレインに近づく。
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ノクス残骸圏の地下。
沈んでいた揺らぎが、
わずかに軽くなる。
分散の兆し。
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例外回数:五。
六は、発動していない。
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戦えない参謀は、
数字を超えた。
制度は守られたのではない。
更新された。
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