第56話 再設計義務
例外回数:五。
協定補則第五条に基づき、
“再設計準備段階”が自動発動された。
上限までは、あと一。
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三文明合同会議。
空気は静かだが、張り詰めている。
「境界消失は、想定外だった」
サエルが言う。
「条文は、物理境界を前提としていた」
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「境界が概念化される可能性を、考慮していなかった」
Σが続く。
「制度の前提が、世界構造に依存している」
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レインは頷く。
「協定は、境界を守るための設計だった」
「だが、境界が揺らぐなら」
「守る対象が変わる」
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中央評議会。
レオニスは沈黙していた。
境界消失の瞬間、
封鎖拡張を主張したのは自分だ。
固定を選べば、
断層は一点に集まっていた可能性がある。
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「制度強化案を提示する」
ゼル=イグナが口を開く。
「例外回数上限を引き下げる」
「予備評価の閾値を厳格化」
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「それは」
ミラが静かに反論する。
「揺らぎをさらに地下へ沈める」
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コレクティア内部。
「揺らぎの事前圧縮は危険」
Δの波形が強くなる。
「だが無制御は不可」
Σが応じる。
集合意識内で、初めて明確な二極化が生じる。
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辺境領。
「再設計義務は、条文通りなら例外六で発動」
セシリアが確認する。
「だが準備段階は今」
「時間は、残り少ない」
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レオニスは、ゆっくりと口を開く。
「私は」
会議に向けて言う。
「制度を守りたい」
視線が集まる。
「だが、制度が世界を縛るなら本末転倒だ」
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レインは、初めて彼を見る。
迷いがある。
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「揺らぎは」
レオニスは続ける。
「制御できると思っていた」
「だが、境界が消えた瞬間」
「制御の前提が崩れた」
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沈黙。
それは、敗北ではない。
認識の更新。
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「再設計は」
レインが静かに言う。
「強化ではなく、緩和であるべきです」
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「緩和は不安定を生む」
ゼルが言う。
「固定は破断を生む」
ミラが返す。
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三文明は、初めて明確に割れた。
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ノクス残骸圏。
地下の揺らぎが、ゆっくりと浮上する。
数値は小さい。
だが周期が短い。
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例外回数:五。
次が六なら、
協定は再設計義務を正式に発動する。
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戦えない参謀は理解する。
制度は、守るものではない。
問い続けるものだ。
次の揺らぎは、
世界ではなく、
協定そのものを揺らす。
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