そういうこと
「俊、腐腐、腐腐腐腐腐腐腐」
「な、なんですか...?」
教科書をとって戻ると、真似とももは大層な笑みを浮かべて、こちらへ身を寄せた。その表情から、先ほどの状況を見たのだと、直感で理解した。
それに気づいた俺は…
「あ、あはは…」
どこか引き攣った笑みを、真似たちに浮かべた。
「や、やっぱ、腐腐、『腐』でござる!最高…」
なんて聞こえた言葉は無視して話題を逸らそうと、別の話題を振った。もっとも、真似たちには意味がなかったようだけど。
「ふふ、やっぱり、面白いね。」
そんなももの言葉を聞いたとき、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「やば」
急いで自分の席へと向かう。幸いまだ先生は教室に入ってきていない。廊下の方の窓には先生の姿が映った。急がないと。
「よし、授業始めようか!」
ぎりぎり席に座れて一安心だ。
大体の先生というものは生徒が遅刻したら怒るくせに、自分が遅れても謝罪も何もしない。まあ、そういうものだ。
そんなことを思いながら数学の授業を受けた。
「ってことはね、つまり、ここはこうなるわけで、だからここはそうなるんだよ。わかった?近くの人とわかったか聞いて。」
黒板に書きながら説明する先生。随分と指示語が多いけど数学の授業はきっとこういうものなのだろう。
隣の席にいる翔を見てみると、Youtubeを机の下で見ている。一番前の席なのにそれをできる勇気がすごいと思う。そして、そんなことし続けているのに、先生にばれていないことにも驚きだ。
「翔、わかったん?」
そう聞いてみると翔は、
「うん、わかったわかった」
まだまだ動画を見ながら平然と言うものだから俺は思わずこう言った。
「youtube見てるくせに?」
「いや、聞いてたらわかる。」
あんな指示語だらけの言葉だけで分かったらしい。
「嘘下手やな。」
「はあ?嘘ついてないし。なんでそんなこというん」
「はーい、じゃあやりますよー」
先生の言葉を聞いて翔はようやく顔を上げた。そして俺に一言。
「なんであれってそうなるん。意味わからん」
翔はそう言っては急いでノートに黒板の内容を書き写し、俺の肩を叩いてわからないところを聞いてくる。
「やっぱ嘘やん」
翔には聞こえない言葉を呟いて、俺はゆっくり、適度に嘘を交えながら教えた。嘘は今までの仕返しみたいなものだ。
「は、へ?いってることちがうやん。さっきはそれは違う言ってたやん。」
適度に混乱し始めたのを機にしっかりと教えてあげると、
「初めからそうしろよ。」
なんて愚痴を言われたので俺は笑いながら
「お前もyoutubeなんか見てないで、授業しっかりうけとけ。」
なんて言ったら翔は黙って再び顔を机の下に向けた。
「俺落ち込んだ..」
翔はそんなこと言ったが、
「youtubeまた見るんかよ」
俺は悪態をついて、授業に戻った。
何気ない日常を愛してやまないと、そう信じている自分がいるのは、なぜだろうか。




