勘は万物よりも鋭くて
「だーかーらー電流はA、電圧はV!」
「はあ?なんでなん。意味わからん」
「俺もだわ、何が意味わからんねん。知識じゃ」
現在、絶賛翔と意見がぶつかってる。
「じゃあ、Aはどっからきたん」
「Aはアンペアのやつ。ampereな」
「急に発音良すぎ」
「うるさい」
そんなことを話していると、
「はげええええええええ」
「朱羅ちょっとうるさい」
「ああ、すまんすまん」
そんな隼人と朱羅の会話を聞きながら、俺は翔と話す。別にけんかをしているわけではなく、普通に教えているだけ。翔はたまにめっちゃ呑み込みが悪い時がある。思考の問題とかじゃなくて、知識の問題だから別に頑張って覚えてもらうしかないのだが。
「三鷹くん、これはなんなん?」
隼人が口を開く。
「これってなんやねん。全然見えないっすけど。」
すると隼人はあ、という声を出して、訂正する。
「えっと、社会のワークの178ページの問い三。これって何。」
「ちょっと待ってな」
ワークをめくる手が急ぐ。
「あーこれはあれ。三国協商の国の集まりのことやから、あれや」
「どれ」
「あのー、連なって合わさってる国みたいな感じのやつ。」
「あー連合国か。」
「そうそう。」
「あーね。ありがと」
っていうか、隼人さっき、通話越しなのにどうやって俺に問題見せるつもりだったんだ。そんなことが俺の頭の中でふと思い浮かぶ。
「まあ、あほか」
「なんか言った?」
「なんもー」
隼人はたまに、少しの天然がでる。普段は、完璧そうで、完璧でない隼人は、どこか抜けている。それが、俺にとっては少しうれしかったりするのかもしれない。
――完璧な人間には何をしても思いは届かないのだから。
時は着実に流れていく。明るかった空は確かに黒の要素が増えていき、熱烈に輝く玉はいつの間にか空から消えていた。そんな時間にふと通知がイヤホン越しに聞こえた。スマホを見ると、俺がいつも使う連絡アプリからの連絡だった。真似からの連絡だ。しらない内に友達追加されていたらしい。
「なにをしておりますか。」
「今は勉強中」
「一人?」
「いや、隼人と。」
「二人ですか。二人ですよね。二人しかありえない。二人以外の可能性を排除しますね。それで、そんな二人で何をしているんですか。」
「別に、二人じゃないんだけど。翔と朱羅いた。」
「腐腐腐、そうですか。」
「え、そんだけ?」
「それだけですけど。すみません二人の時間をお邪魔して。」
「だから二人じゃないって」
俺が送ったメッセージは、絵文字で返されて、それっきり連絡は来なかった。
…いったい何だったんだろ。
「俺一回ご飯食べてくるわ。」
「はあ、じゃあ、俺も」
隼人と翔がそう言って、通話を抜ける。あのいい方は多分、もう一回戻ってくる。通話は俺と朱羅だけになった。朱羅とは昔からの幼馴染らしい。同じ病院で生まれて、親同士が仲いいんだとか。小学校が違うので、あったのはほんとうに最近で、お互いあんまり覚えていない。
「朱羅さん生きてる?」
「朱羅さんいきてるよ。元気元気。」
「おっけーだ」
「っていうか私思ってんけどさ、」
「うんうん、何を思っていたんですか」
「お前って隼人と話すときだけめっちゃ楽しそうやでな。」
…へ?




