表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
故郷への帰還
86/86

海へ行こう!

 レオノールは海へと来ていた。

 今まで吸収したことのない海の植物を手に入れるためだ。

 今日は海に行くとあって水着を着ている。当然ワンピース型の水着でスカートはヒラヒラと波打っている。その上から白いシャツを羽織り、麦わら帽子を被れば完成だ。

 先程からパシャパシャとカメラのシャッターを切る音がするが、慣れっこなレオノールは気にしない。ザザン、と繰り返す波と追いかけっこをして遊んでいる。ペロリと海水を舐めてみれば余りのしょっぱさに蔓がみょーんと伸びた。

 遊びに夢中になって本来の目的を忘れていたレオノールは、ハッとして立ち上がる。


「わたし しょくぶつ さがしてくる」


「遠くには行くなよ」

「一人で平気?」


 心配してくるサイフィードに力強く頷いみせると、レオノールは海の中へ潜った。

 後はいつもと変わらない。蔓を伸ばして広げていくだけだ。念のため根っこも伸ばしていく。


 海の中は面白かった。


 海中を漂う小さな植物はまるで胞子のようだし、根を張らずにそのまま海面を漂う植物もいた。適当に魚と魔物をつまみながら、レオノールがどんどん蔓を伸ばしていくと海底に沈んだ船に辿り着いた。


 お宝の匂いプンプンである。 


 ガサガサと船の中を漁ること暫し、思った通りキラキラ光る宝飾品を発見した。箱の中に入った金貨は特に興味がなかったが、サイフィードが喜ぶかも、とお土産にすることにした。

 レオノールが遠慮なく漁ったせいか、蔓が船を離れればズズンッと音を立てて崩壊していく。古かったし仕方ない、とレオノールがそこを離れようとすれば、巨大な影が海面を覆った。


 レオノールは知らなかったが、それはイカの魔物でクラーケンと呼ばれている。魔力濃度でいえばA級の魔物だが、海中に生息することもあり討伐難易度はS級だ。

 そんな魔物がレオノールに攻撃してきたのだ!これにレオノールは……激怒した。


『わたし なめられてる』


 魔物ごときが神に攻撃してきたのだ。その怒りもひとしおだ。

 太っとい蔓を作ってクラーケンをボッコボコに殴ると、ようやく彼我の実力の差を悟ったクラーケンが逃げ出そうとするが、それを許すレオノールではない。蔓で海上まで引っ張り上げて、ブッチブッチと魔物を引き裂いた。

 汚い魔物のシャワーが海面に降り注ぎ、同時に肉片もボトボトと落ちる。正に蹂躙という名に相応しい。


 暴れたことで少し落ち着いたレオノールは、もしかして美味しいかも、と心臓――魔核がくっついているので分かりやすい――と足を一本持って行くことにした。

 大量のお土産を手に……いや、蔓に、レオノールは砂浜へと戻って行った。

 




 その日、サルバンの冒険者ギルドに激震が走った。

 魔導船を護衛する冒険者から緊急連絡が入ったためだ。内容は普段はもっと南に縄張りを持つクラーケンが航海路上で発見されたというものだ。しかもサルバンの港からそう離れていない場所でだ。

 それだけでも大事なのに、事はそれだけではすまなかった。何とクラーケンを圧倒する強さの魔物が現れ、あっという間にクラーケンを引き千切って殺したと言うではないか。


「それは本当なのか?」


 サルバン冒険者ギルドのマスターであるジェノガが問えば、通信水晶越しに冒険者が抗議の声をあげる。


『俺はAランクの冒険者だぞ!嘘をつくと思うのか!』


 Aランクからは貴族を相手にすることも増えるため、昇格条件がより厳しくなる。マナーや言葉遣いは勿論のこと、その人格までが審査対象だ。その狭き門を潜り抜けた冒険者が、後から調べれば分かるような事に嘘を付く筈もない。


「すまん、失言だった。俺も混乱していてな」


『ああ、いや、気持ちは分かる。デカい蔓がクラーケンを真っ二つにしただなんて、この目で見ても信じられないからな。それよりもだ!その魔物……恐らく植物系の魔物だが、サルバンに向かっているんだ!沿岸にいる奴らを避難させなけりゃ大惨事になるぞ!』


「何だと!」


 ジェノガが怒鳴れば、一緒に話を聞いていた秘書が書類を取り落とした。


「今日はアクアネル公爵が弟君に案内すると、砂浜を貸し切っております!」


「クソがっ!公爵家に連絡しろ!手の空いているB……いや、Aランクの冒険者はどれだけいる!?」


「無茶を言わないで下さい!Aランクとなると簡単には集まりませんよ!?」


「とにかく連絡をつけろ!クラーケンを引き千切るような魔物だ!Bランクだと相手にならん!Bランク以下は避難誘導に回せ!」


 元Aランク冒険者のジェノガは、壁に立てかけてあった大剣を担ぐと冒険者ギルドを飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ