9:意味が分からない。
◇◇◇◇◇
あふあふと欠伸をしながら、ベッドから起き上がりました。
手に、身体に、触れる布地がいつもと違うような。ベッドの弾力もいつもと違うような。
「あれ?」
部屋の中も違います。物凄く違います。
一瞬、自分の部屋と違いすぎて頭が真っ白になりかけましたが、思い出しました。
昨日の事件とキスを。
「っ…………なんでこんなことに……」
顔から火が吹き出しそうです。
ノルベルト様が仰った昨日のアレはどういう意味なのでしょうか? 物凄く雑な告白らしきものをされましたが、本気なのでしょうか?
沢山の疑問が頭の中でぐるぐると渦巻いて、目眩がしそうです。
そういえば、『明日また話そう』と言われましたね。
窓の外を見る限り、まだ日が昇ったばかり。皆が起き出すのはもう少しあとの時間でしょう。それまでは、昨日得られた情報の整理をしたいのですが、冷静にできるのか……ちょっと不安ではあります。
分かっていること――――。
ロラン様は、故意的に違う女性を連れて登城した。
ロラン様は、連れていたご令嬢を愛している。
ロラン様は、私がご令嬢を虐めたと思っている。
ロラン様は、私と婚約破棄をし、断罪もしたい。
ご令嬢は、モゼッティ男爵家のエリーザと名乗った。
モゼッティ男爵は、老齢かつ独身で天涯孤独の宮廷画家。
エリーザ嬢は、私がしたらしい虐めによって、最近まで寝たきりだった。
エリーザ嬢は、私が彼女を虐めた証拠を持っている。
――――ということくらいでしょうか。
再確認して分かったのは、本当に意味が分からない、ということでした。
なぜこんな事になったのかと考えても、私一人ではどうにもできないという、なんとも悔しい状況です。
鼻の奥がズンと重くなりました。
泣きたくない。
こんなことで、こんなにも理不尽なことに、屈したくない。だから、涙をぐっと堪えて天井を睨み続けました。上を向けば涙は零れ落ちないから。怒りを原動力に変えたいから。
コンコンと優しいノック音が室内に響きました。
いつの間にか太陽はしっかりと昇り、人々が動き出す時間になったのでしょう。
ノックに返事をすると、数人の使用人とリタが柔らかな微笑みを零しながら入ってきました。
「おはようございます、アマンダ様」
「おはよう、リタ」
リタに着替えを勧められたのですが、着るものなどあるはずがありません。だってここは王城で、昨晩に急遽この部屋に来たのですから。
「昨晩、伯爵家から取り寄せています」
リタがクローゼットルームの扉を開けると、昨日までは間違いなく私の家にあったドレスたちが収められていました。
「アマンダ様が何不自由なく過ごせるようにと、ノルベルト様の計らいですわ」
「…………凄いわね」
色んな意味で、凄いなと思いました。
まさか昨晩の内に全ての服を王城に移してしまっているとは。もしかして、他の荷物なども移動させていたり、しないですよね?
――――まさか、ね?




