工夫の余地はどこまでも!?
ふう、ギリギリだが滝壺から脱出できた。
ギリギリといっても、バクチで動いたわけじゃない。
仮に失敗しても、溺死したりはしなかったろう。
水忍法を使えば浮上できるからな。
火傷せず無傷で脱出する限界が近かっただけだ。
「で、お宝はなんだったんスか!?」
俺は手を開く。
滝壺の底から掴み取ってきたのは……。
「熱水晶だな。
さっきの宝箱から出たものより、少し大きいか」
「ちょっとマシくらいっスねー」
やや質のいい熱水晶と言ったところか。
まあ、悪くない戦利品だ。
熱水晶は色々便利そうだからな。
手榴弾は強そうだし、いくつあっても困らない。
自律分身も、こうした品を持てば戦術の幅が広がる。
休憩を済ませ、自律分身を出して帰路を進む。
帰りも地図埋めを続けたおかげで、未踏破部分はなくなった。
その過程で幾度かの戦闘を乗り越えた。
放水グローブは違和感なく使えている。
水袋の容量には物足りなさを感じた。
だがまあ、これは許容範囲だ。
一度の戦闘で使う量としては足りている。
量が多ければいいってものでもない。
重すぎると近接戦闘の邪魔になってしまうからだ。
重心の問題もあるし、単純にタンク容量を増やすのは難しい。
とはいえ工夫の余地はある。
水袋を全身に分散させるとか……。
ふーむ。
手袋だけじゃなく、スーツそのものに組み込んで……。
うん。
工夫すればもうちょっといけそうだな。
今回は吸着トカゲ手袋の実地試験をするチャンスはなかった。
トウコに使わせると射撃に支障が出てしまう。
今日はリンがいないから、トウコの火力を落とすわけにはいかなかった。
まあ、低階層や拠点でも試せるからこれはいい。
「――ファストスラッシュ!」
刃が走り、ゴブリンチームの最後の一匹を仕留める。
「いまのがラスいちっスね!
おつっス!」
<熟練度が一定値に達しました。スキルレベルが上がりました!>
<【ファストスラッシュ】 3→4>
「おっ!
ファストスラッシュが熟練度で上がったぞ!」
「おめっス!」
「おお、いいな!」と自律分身。
俺のメイン攻撃スキルの一角!
いつでも頼れるファストスラッシュさんがパワーアップしたぞ!
これまでスキルポイントはほとんどつぎ込んでいない。
熟練度での自力成長ばかりですまないね!
それだけ頼りにしているってことで!
「トウコ、冷却くノ一装束はどうだった?」
「涼しかったっスよ!
さすがにもう温いっスねー。
あと気になるのは……中身がイマイチなとこっス!」
「ん?
どこがイマイチなんだ?」
中身は氷水だ。
どこか、改善すべき部分があったか?
「味っスよ、味!
次はジュースを入れてくるっス!」
「おいおい!
ジュースなんか入れたら掃除が面倒だぞ!」
ハイドレーションに入れるのは水だけにすべきだ。
糖分がチューブ内に入ると雑菌が繁殖しやすくなってしまう。
使ったあとよく洗わなきゃいけない。
掃除キットも買ってある。
細いチューブ内を洗うワイヤーブラシや、袋を広げて乾燥させるハンガーなどだ。
チューブやパックを洗うのは面倒そうだ。
「そこは店長にお願いするっス!
忍法でパパーっと!」
「調子のいいことを……」と自律分身。
「まあ、水忍法で洗えば簡単だけどな。
でも入れるのが水ってところは譲れんぞ。
そうじゃないと、いざというとき俺が操れないからな」
トウコが背負った水は【水探知】で感じ取ることができる。
視界の外にいても、だいたいの位置が把握できるのだ。
触れていないうえに袋に入っているから、ぼんやりとしか感じられない。
それでも位置が分かるのは、かなりのメリットがある。
「えーっ!」
「味が欲しいだけなら、スポーツドリンク味の飴を作ってやるよ。
口に含んで水を飲めば、それらしくなるだろ!」
濃い味をつけておけばいい。
熱中症や塩分不足を補う飴やタブレットなら、薬の範疇だ。
【薬術】で作れる。
わざわざ作らなくても買ってくればいいし。
「まー、それならいいっスね!」
「ご満足いただけたようで、どーも」
まあ、作るものが一つ増えたが、大した手間でもないだろう。
二十階層への階段が見えてきた。
今日の実地検証はこれで終わり。
放水グローブも冷却くノ一装束も試験結果は良好!
破砕手榴弾も作れるようになった。
材料の熱水晶も入手経路が増えた。
今回の成果はバッチリ大成功だ!




