操風で送風! 問題を見える化しよう!
風忍法の初仕事は、風呂上がりに涼を取ることだった。
手をかざして発動したが、手から風は出なかった。
ちゃんと風は起きている。
周囲の空気を動かして前方に流す、という形でだ。
これは空気を生み出す術ではなく、動かす術だから当然か。
空気の流れが起きるので、俺も涼しさを甘受できる。
リンが俺に笑いかける。
「ありがとうございます。
優しい風で、すごく心地いいですー」
「さすが扇風機の術っス!」
起こせるのはそよ風程度。
扇風機の風量なら弱くらいだ。
どうにも迫力に欠ける。
涼むにはいいが、戦闘では使えないだろう。
まあ、スキルレベル一だとこんなものかな。
水忍法の【操水】はもう少しマシだったが……。
風を強めても、タオルがたなびく程度でしかない。
せめて強風……いや、中でもいい!
こんなものなのか、風忍法!
いにしえの忍者は、あいさつ代わりに風でスカートをめくっていたと聞く。
だが濡れたタオルは重く、動かせない。
「うーん。
【操風】は【操水】と比べてパワーが弱いな」
生活に便利。
しかし戦闘では使えない。
そんな手ごたえだ。
やはりスキルレベルか……。
いや、まだ馴染んでいないだけ。
使い込めばスキルは応えてくれるはずだ!
「なかなか涼しいっスよ!
このままなら体を拭かなくても乾きそうっス!」
「トウコちゃん。
髪を乾かすから、ちょっと動かないでねー」
そう言うとリンはトウコの髪に手を差し入れる。
トウコは嬉しそうに目を細めている。
火魔法を応用してトウコの髪の水分を飛ばしているのだ。
すぐにそれを終えると、今度は自分の髪の毛を乾かしていく。
髪を乾かす魔法だ。
便利なものだな。
もはや、ほぼ火魔法じゃないけど!
【防火】と【ファイアボール】などを絶妙に組み合わせ、髪を傷めないよう扱っているのだ。
凄いよなあ。リンのコントロール力!
俺も見習おう!
翌日。
二人は学校へ出かけている。
俺はひとり、自分の拠点で風忍法を試していた。
トウコの言葉で検証者枠に【操風】をセットしたが、これはいい機会だ。
ずっと気になっていたんだよね。
今のうちに練習しておこう。
俺は人に見せる前にじっくり練習しておきたいタイプなのだ。
本番一発勝負で運に身を任せる気はない。
【風忍法】は前々から【検証者】にセットしていた。
しかし、あくまでも【風忍法】は基礎スキルである。
関連スキルが取得できるようになる効果しかないのだ。
実際に使える関連スキルを取らないと意味がない。
そもそも、使っていないから熟練度だって貯まらない。
これじゃあ、枠を圧迫しているだけ。
使わないなら、枠から外してしまえばよいかというと?
それは、論外!
外すと風忍法を二度と取得できなくなってしまうからな。
二系統の忍法を操るロマンを捨てるわけにはいかない!
「よし決めた! 今日は【操風】を使い倒すぞ!」
間引きを兼ねて、クローゼットダンジョンの低階層を周回する。
うーむ。
やはり、風を吹き付けても効果は低いか。
ダメージは与えられないらしい。
ゴブリンを驚かせるくらいがせいぜいだ。
注意を引いてよそ見させるくらいはできるが……。
もっとこう、ズバッといけないものか。
むん、と俺は意識に力を込める。
風を狭めて、勢いを乗せて、風の刃を作るイメージ!
しかし、発動しない。
「……やはり【風刃】がないとダメか……」
なら、風の壁は?
強風は?
次に試したのは、敵の攻撃を防ぐような風の壁だ。
強風を吹き付けるイメージで……!
むむ……どうにもうまくいかない。
「慣れた【水忍法】の感覚でいけるかと思ったけど、難しいな」
水と風では感覚が違う。
風は 透明で、軽くて、形がない。
目に見えないから、つかみどころがないのだ。
水忍法でも、水より霧のほうが操りにくく感じるし……ふむ。
気体を操るのは難しいんだな。
ふむ。
イメージしにくいこと、これが問題だな。
問題点がわかったなら、あとは改善するだけ!
「見えないってことなら……濃霧!」
霧を発生させ、薄く周囲にばら撒く。
霧は空気中の水蒸気だ。
そこには空気も含まれる。
【水探知】で霧を知覚して……。
空気中を漂う水分がわかれば、周囲の空気を感じることに通じる。
そこへ【操風】を発動!
空気を含んだ霧が動く!
お!? いいぞ!
よし! 感じられる!
風の動きが手に取るようにわかる!
これで【操風】の精度が目に見えてよくなった!
【濃霧】は地味ながらサポート能力は高い。
いろんなスキルの起点として使える良スキルだ。
これを組み合わせれば【風忍法】も扱えそうだ!




