トンチで操れ、水圧の術!
検証者枠に【水圧】をセットした。
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【水圧】
水の圧力を操る。
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圧力を操る、というところが重要だ。
上げるだけじゃなく、下げることだってできる。
「シナジーっスか?
圧力でどうやって涼しくなるんスか?」
「濃霧みたいに、気化熱を使うんですよね?」
俺はうなずく。
「その方向性だ。
山の頂上で水が沸騰しやすくなるって理屈だな」
「はい。
たしか、気圧が低くなるからですよねー?」
「んー?
それって水圧と違くないっスか?」
物質は外部から圧力を受けている。
周囲の空気に押さえつけられているのだ。
これを大気圧という。
「そうだ。
今の例は気圧の話だ。
でも、考えてみてくれ。
これも水にかかる圧力には違いないだろ?」
「だから操れちゃうんですねー?」
さすがリン。
理解が早い!
トウコがうさんくさそうに半眼で俺を見る。
「なーんか、トンチっぽくないっスか?」
「いいんだよトンチで!
俺とスキルが納得できれば使えるんだ!」
物理法則に従う必要などない。
ファンタジーなんだからな!
忍法なんて、大抵はトンデモ理論だよ!
暴論!
魔法はもっと自由だ。
そもそも理由すら問われない。
できるから、できる。
そういうもんだ。
忍法だって、そんなもんでいい!
とはいえ、俺は細かいことを考えすぎてしまう。
マンガでよく見る氷魔法なんて、ぜんぜん納得できない。
空中に巨大な氷塊を浮かべるような技。
アレはどうやって実現しているんだ?
空気中の水分を集めて?
それを冷却して巨大な氷の塊を作り?
さらに浮かせて、動かして、敵にぶつける?
ちょっと、できる気がしない。
どうしても、これは無理があるだろ!
と考えてしまう。
それだけのエネルギーがあるなら、敵やその周囲を直接凍結させたほうが良くないか?
空気中にそれほどの水分があるのか?
と考えてしまうのだ。
ケチをつける癖がついている。
これは現代人の宿命と言えよう。
でも、ここはダンジョンだ。
そして俺は忍者。
俺の術は現実を打ち破り、理想を力に変えてくれる!
そう思い込め、俺!
細かいことを考えて自分を抑えるな!
リンが俺を励ますように言う。
「思い込みの力ですね!
いいと思います!
ゼンジさんならできますよっ!」
「おう!
そういうことだから、あんまり突っ込むんじゃないぞ!」
スキルは勢い!
自分を納得させて思い込むのは案外難しい!
トウコが親指を立てて笑う。
「いいっスね!
トンチチートの力、見せてもらうっス!」
地味なチートだな!
俺は些細なズルを積み重ね、コツコツと成長していく。
これは創意工夫というものだ!
俺は手のひらに水をすくい、そこへ意識を集中させる。
「というわけで、水の表面にかかる圧力を減らしてみるぞ……!」
「はいっ!」
「まずは濃霧だ。
スキルの力で水を気化、蒸発させる!」
ファンタジーパワーで自然現象を捻じ曲げ、霧を発生させる。
「モヤモヤしてきたっス!」
「ここまではいつも通りですね!」
周囲の空気を押しのけるイメージ!
押さえつける力から解き放つ!
水よ、水蒸気よ……お前は自由だ!
飛び出していけ!
「ここで【水圧】を発動!
さらに【操水】もだ!」
霧を生み出す力に、さらに圧力を操る力をブレンド!
圧力を下げ、沸点を下げ、水が水蒸気に変わる手助けをする!
さらに【操水】によるダメ押し!
水の操作全般を司る総司令官……総帥閣下のおでましだ!
全水軍、突撃!
目標、空へ……!
俺の手のひらから、勢いよく水蒸気が立ち上る。
「おお!?」
手のひらにわずかな痛み。
いや、これは冷感。
冷たいんだ!
「うまくいきましたねー!」
「店長の手、氷ができてるっス!」
手のひらの上に氷ができていた。
薄い氷の層だ。
「ちょっと手のひらも冷えたけどな」
「大丈夫ですか?」
手を軽く握り込むと、氷がパキパキと音を立てて砕ける。
「ああ、凍傷にはなってない。
冷たいだけだ」
トウコが氷を指でつまみ、口へ運ぶ。
「ちべたーい!
ちゃんと普通の氷っスね!」
「食って確かめるな!
確かめてから食え!」
まあ、風呂の水を凍らせたものだから無害だろうけど。
「鑑定によると、普通の氷でしたー。
食べられますよー」
といって、リンが氷を口に運ぶ。
食うんかい!
「冷凍庫店長の誕生っスね!
これでいつでもかき氷が食べ放題っス!」
またトウコがよくわからんことを言っている。
「すごいですー!
一家に一台、ゼンジさんが欲しいですね!」
リンもまた、よくわからんことを……。
まあ、ホメ言葉として受け取ろう。
冷凍庫だろうが製氷機だろうが、やってやるぜ!




