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【新章開始】社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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トンチで操れ、水圧の術!

 検証者枠に【水圧】をセットした。


 --------------------

 【水圧】

  水の圧力を操る。

 --------------------


 圧力を操る、というところが重要だ。

 上げるだけじゃなく、下げることだってできる。


「シナジーっスか?

 圧力でどうやって涼しくなるんスか?」

「濃霧みたいに、気化熱を使うんですよね?」


 俺はうなずく。


「その方向性だ。

 山の頂上で水が沸騰しやすくなるって理屈だな」

「はい。

 たしか、気圧が低くなるからですよねー?」

「んー?

 それって水圧と違くないっスか?」


 物質は外部から圧力を受けている。

 周囲の空気に押さえつけられているのだ。

 これを大気圧という。


「そうだ。

 今の例は気圧の話だ。

 でも、考えてみてくれ。

 これも水にかかる圧力には違いないだろ?」

「だから操れちゃうんですねー?」


 さすがリン。

 理解が早い!


 トウコがうさんくさそうに半眼で俺を見る。


「なーんか、トンチっぽくないっスか?」

「いいんだよトンチで!

 俺とスキルが納得できれば使えるんだ!」


 物理法則に従う必要などない。

 ファンタジーなんだからな!


 忍法なんて、大抵はトンデモ理論だよ!

 暴論!


 魔法はもっと自由だ。

 そもそも理由すら問われない。

 できるから、できる。


 そういうもんだ。

 忍法だって、そんなもんでいい!


 とはいえ、俺は細かいことを考えすぎてしまう。

 マンガでよく見る氷魔法なんて、ぜんぜん納得できない。


 空中に巨大な氷塊を浮かべるような技。

 アレはどうやって実現しているんだ?


 空気中の水分を集めて?

 それを冷却して巨大な氷の塊を作り?

 さらに浮かせて、動かして、敵にぶつける?


 ちょっと、できる気がしない。


 どうしても、これは無理があるだろ!

 と考えてしまう。


 それだけのエネルギーがあるなら、敵やその周囲を直接凍結させたほうが良くないか?

 空気中にそれほどの水分があるのか?

 と考えてしまうのだ。


 ケチをつける癖がついている。

 これは現代人の宿命と言えよう。


 でも、ここはダンジョンだ。

 そして俺は忍者。

 俺の術は現実を打ち破り、理想を力に変えてくれる!


 そう思い込め、俺!

 細かいことを考えて自分を抑えるな!


 リンが俺を励ますように言う。


「思い込みの力ですね!

 いいと思います!

 ゼンジさんならできますよっ!」

「おう!

 そういうことだから、あんまり突っ込むんじゃないぞ!」


 スキルは勢い!

 自分を納得させて思い込むのは案外難しい!


 トウコが親指を立てて笑う。


「いいっスね!

 トンチチートの力、見せてもらうっス!」


 地味なチート(ズル)だな!

 俺は些細なズルを積み重ね、コツコツと成長していく。

 これは創意工夫というものだ!


 俺は手のひらに水をすくい、そこへ意識を集中させる。


「というわけで、水の表面にかかる圧力を減らしてみるぞ……!」

「はいっ!」


「まずは濃霧だ。

 スキルの力で水を気化、蒸発させる!」


 ファンタジーパワーで自然現象を捻じ曲げ、霧を発生させる。


「モヤモヤしてきたっス!」

「ここまではいつも通りですね!」


 周囲の空気を押しのけるイメージ!


 押さえつける力から解き放つ!

 水よ、水蒸気よ……お前は自由だ!


 飛び出していけ!


「ここで【水圧】を発動!

 さらに【操水】もだ!」


 霧を生み出す力に、さらに圧力を操る力をブレンド!

 圧力を下げ、沸点を下げ、水が水蒸気に変わる手助けをする!


 さらに【操水(そうすい)】によるダメ押し!

 水の操作全般を(つかさど)る総司令官……総帥(そうすい)閣下のおでましだ!


 全水軍、突撃!

 目標、空へ……!


 俺の手のひらから、勢いよく水蒸気が立ち上る。


「おお!?」


 手のひらにわずかな痛み。

 いや、これは冷感。

 冷たいんだ!


「うまくいきましたねー!」

「店長の手、氷ができてるっス!」


 手のひらの上に氷ができていた。

 薄い氷の層だ。


「ちょっと手のひらも冷えたけどな」

「大丈夫ですか?」


 手を軽く握り込むと、氷がパキパキと音を立てて砕ける。


「ああ、凍傷にはなってない。

 冷たいだけだ」


 トウコが氷を指でつまみ、口へ運ぶ。


「ちべたーい!

 ちゃんと普通の氷っスね!」


「食って確かめるな!

 確かめてから食え!」


 まあ、風呂の水を凍らせたものだから無害だろうけど。


「鑑定によると、普通の氷でしたー。

 食べられますよー」


 といって、リンが氷を口に運ぶ。

 食うんかい!


冷凍庫(フリーザー)店長の誕生っスね!

 これでいつでもかき氷が食べ放題っス!」


 またトウコがよくわからんことを言っている。


「すごいですー!

 一家に一台、ゼンジさんが欲しいですね!」


 リンもまた、よくわからんことを……。

 まあ、ホメ言葉として受け取ろう。


 冷凍庫だろうが製氷機(せいひょうき)だろうが、やってやるぜ!

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