スキル振りタイム! どちらにしようかな?
拠点に戻ってきた。
装備を置いて身軽になる。
「さて、スキルを振るぞ!」
「店長、さっきのでレベルいくつになったんスか?」
「三十六になった。
スキルポイントは二十一ポイントある。
これなら上級忍術のスキルレベルも上げられるぞ!」
「いいですねー!
それで、何を選ぶんですかー?」
リンが笑顔で尋ねる。
トウコが腕を組み、したり顔で言う。
「もちろん、冷え冷えの術をパワーアップするんスよね!」
「俺は人間クーラーか!
まあ、そういうスキルもアリっちゃアリだが……」
しばらく暑い階層が続くはずだ。
【濃霧】で暑さ対策はできるけど、他にも方法は色々あるだろう。
たとえば、水の膜を使うのもいい。
体に纏う使い方には可能性を感じる。
俺の弱点である防御力を補えそうだ。
そんな期待感がある。
しかし、そのためにはパワーが必要だ。
弱い力で高度なことはできない。
歌うときに無理をして高音を出すようなもの。
かすれて、音程が外れてしまう。
細い腕で重い武器を振り回すのとも似ている。
素早く正確に動かすには、力に余裕がないとね。
リンが首を傾け、俺の顔をのぞき込む。
「それで、ゼンジさん。
どのスキルが気になっているんですかー?」
気になっているスキルはあるが、もうほとんど決めている。
「シンプルに【操水】か、【水探知】で探知範囲を広げるかの二択だな」
他のスキルも一応、考えてみた。
でも優先度は一段落ちるんだよな。
【濃霧】は今のままで十分だ。
育てればもっと広い範囲に霧を広げられるだろう。
とはいえ俺のダンジョンは洞窟で、あまり広くはない。
霧の量がなくても事足りる。
でも霧に隠れて戦うスタイルは悪くなかった。
ソロプレイなら迷わずこのビルドを突き詰めてもいいくらいに強い。
だけど仲間との連携には難がありそうだ。
草原ダンジョンのような広い場所ではまた違う。
範囲を強化する意味がある。
しかし、今はまだいい。
霧の冷却能力は便利だ。
スキルレベルを上げれば、気化させる速度も上がるだろう。
……ちょっと気になっている。
でもこれについては考えがある。
別のスキルと合わせてシナジーを生み出せるはずだ。
後で【検証者】で試そうと思う。
【水生成】もこのままでいい。
大量の水を作る必要はないからな。
飲み水や、術の種に使えればいい。
戦闘中に大量の水を生成すると、魔力消費もバカにならないしな。
そういうのは【水噴射】に任せておけばいい。
トウコが言う。
「なんで新しいスキルから選ばないんスか?」
「新しいスキルを取るにしても、まずは【検証者】で確認してからだな」
「空いた枠を使うんですね!」
「うむ。
で、【操水】を上げるのは、もっと複雑な操作をしたいからだ。
ほら、水の膜で鎧を作るとき、二人分は難しかっただろ?」
トウコが食いついた。
「おおーっ!?
ってことは、ひんやり鎧の術がパワーアップするんスね!」
それを聞いて、リンが思い出したように言う。
「あっ、いいですねー!
あの時、ちょっとトウコちゃんが羨ましかったんです。
私も、水の膜に包まれてみたいです!」
リンが期待の目を向けてくる。
俺はうなずく。
「じゃあ、後で風呂で試そうか」
「はーいっ!」
トウコがそれを聞いて口元をゆるめる。
「へへ、全裸で水鎧っスね!?
これはかなり、心が潤いそうっス!」
確かに、そそるな……。
じゃなくて!
忍べ俺!
どうやら俺は表情に内面が出ているらしいし!
話を戻そう!
「それに【操水】はすべての術に影響するんだ。
【濃霧】を覚えたおかげか、水蒸気も少し動かせるようになったしな」
【操水】は水を空中に浮かべられない。
それなのに空中の霧を操れるのは、少し不思議だ。
これは【濃霧】との合わせ技によって可能としている。
「濃霧と同時に使っているんですかー?」
「同時に使うというより、【濃霧】の感覚で【操水】を使う感じだ。
こう、使い方のコツがわかるみたいなイメージだな」
リンが同意するようにうなずく。
「私の魔法も似ているかもしれません。
区別はなくて、混ざっちゃってる感じなんですー」
リンは理論建てて魔法を操っているわけではない。
イメージ先行で、なんとなく使えている。
逆に俺はふんわりした使い方が得意ではない。
関連するスキルがたくさんあれば、そんな使い方もできるかもしれないな。
たとえば、水を浮かせる術があるとする。
それと【操水】を組み合わせれば、空中の水を操作できるだろう。
しかし残念。
水を浮かせる術は、今のところリストにないんだよな……。
今のところは、ない。
だけど、あってもいいと思う!
スキルの可能性は無限大だからな!
と、天の声さんか誰かにアピールしておく。
「水探知はいいんスか?
ちょっとサーチ範囲が足りないんスよね?」
「まあな。
だけど索敵はリンに任せておこうと思ってな」
リンは索敵に向いている。
得意な人がいるなら、任せてしまえばいい!
思えば昔の俺は、すべて一人でこなそうとしていた。
仕事中毒気味ということもあったが、そうせざるを得ない状況もあった。
人任せにするより自分でやったほうがいいと思ったりしていた。
だけど、仲間を頼ることは、怠慢ではない。
むしろ任せるべきなのだ。
リンが笑顔で頼もしくうなずく。
「はいっ!
頑張りますので、任せてくださいね!」
「というわけで、上げるスキルは【操水】にするぞ!」
「目指せ、水芸マスターっス!」
目指さないわ!
まずは基本である【操水】を上げることにしよう!




