へこんだ心とフライパンを修復しよう!
フライパンバックラーの使い勝手は悪くない。
体全体を守ることはできないが、攻撃をうまく弾くように使えば……。
リンは筋がよさそうなので、練習次第では使いこなせるだろう。
しかし強度には課題がある。
強く叩くとへこんでしまうのだ。
採用するなら強度の改良が必要だな……。
せっかくなので、リンの新スキルを試すことになった。
【調理器具・修復】の出番というわけだ!
「じゃ、さっそくやってみてくれ。
材料が必要なら、魔石や鉄鉱石があるぞ」
俺は忍具作成台と、資材置き場を指差す。
そこには各種の現実素材や、ファンタジー素材が揃っている。
「はい、やってみます!
ゼンジさんはいつも魔石を使っているんですよね。
じゃあ魔石と……鉄鉱石を使わせてもらいますね!」
リンは素材を忍具作成台に置くと、真面目な顔で手をかざす。
「修復ー!」
かけ声と共に、魔石と鉄鉱石が淡く光る。
俺の忍具作成の発動と似ているな。
その光が盾のへこみに集まっていく。
時間がかかるのも同じようだ。
そして――キラキラと輝いた。
「おお、エフェクトがちょっと違うんだな!」
「ピカピカになった感じですねー!」
そういうイメージで発動したのかな?
忍具作成の場合はもうちょっと地味だ。
これはこれでいいのだ。
ダンジョンで使う場合、目立ったら困るし。
俺はへこみを確認する。
「すっかり直ったみたいだな」
「はい!」
リンが嬉しそうに笑う。
「こうなると、現実素材でも直せるか気になるな。
クギでも使って……でもまあ、それは次回にしよう!」
「そうしましょう!」
わざわざ壊してから直すのは馬鹿らしい。
もったいないことはしないのだ。
それに、これはあくまでも試作品。
とにかくどんどん試してもらおう!
「フライパンバックラーについてはこれくらいにしよう。
強度については素材や強化の仕方を考えるよ。
次の品は、これだ!」
ここに取り出しましたるは鍋のフタ!
「これは……フライパンのフタですね?」
「そうだ。
さっきのフライパンとセットなんだ。
サイズ感はほとんど同じだな」
「あっ!
透明になっていて中が見えるタイプですね!
こういうの、焼き具合が見えていいんですよねー」
料理に便利な設計である!
「さすがにガラスは盾に使えないからポリカーボネートにした。
残念ながら熱には強くないんだ。
料理には微妙かもしれないな」
ポリカーボネートの耐熱温度は百二十度前後だ。
変色したり変形したりするかもしれない。
「そうなんですねー。
でも私が【防火】をかけながら使えば大丈夫ですよ!」
「お、さすが家事万能の火魔法だな!」
家事から火事までお手のもの!
リンがフタ盾を手に持って構える。
「これは軽くていいですね!」
「強度はいつものトンファー盾に近い。
攻撃されれば傷がつくが、修理……修復すれば問題ないな」
いつもは俺が忍具作成でリメイク修理していた。
これからはリンが自分で修復できる。
これまでと同じように数回の攻防で使い心地を試した。
ほぼフライパンバックラーと同じ結果だ。
確認を終え、リンが言う。
「素材のおかげか、いつものトンファー盾に近い感じですね。
扱いやすい気がします」
「それなら、取っ手もトンファー風のほうがいいか?」
今はバックラー風だ。
トンファー風にするなら、握りのでっぱりを追加すればいい。
「いいですねー!
それでしたら……形もいつものトンファー盾みたいにできますか?」
「できると思うぞ。
形としてはフライパンから遠ざかるが……」
横幅をやや狭め、縦長の楕円形。
取っ手部分を幅広にして……。
そこまですると、もはやフライパンとは言えない気がする。
しかしリンは自信ありげに頷いている。
「きっと大丈夫だと思います!
ゼンジさんみたいに、私も調理器具さんと仲良くなればいいんです!」
忍具作成君のことかー!
俺が心中でスキルを擬人化していることはとっくにバレている。
やや気恥ずかしさを覚えながらうなずく。
「う、うむ。
それなら大丈夫そうだな」
ひ、必死に隠してなんかいないんだからね!
別に恥ずかしいことじゃないけど、なんか恥ずかしいぞ!
ともあれ、リンが意識してスキルとの友好関係を築こうというなら好都合。
きっと武器寄りにカスタマイズしても使いこなせるだろう!
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■お手並み拝見、【調理器具・修復】!




