シャワー祭りと魔石の鑑定!
リンが顔についた血を布で拭う。
それを見て、トウコが思いついた顔で言う。
「あっ、店長店長!
せっかくなんで、あたし達に水をぶっかけて欲しいっス!」
「ぶっかけろってお前……。
ペットボトルの水は残り少ないから、節約しないとな。
そもそもトウコは汚れてないだろ!」
トウコがげんなりした顔で言う。
「もう暑くって汗だくベトベトなんスよぉ!」
水はあと一本しかない。
まさか熱水で洗う訳にもいかないし。
出口は近いはずだが、まだ見えていない。
油断して脱水症状で死亡……という末路は避けたい。
「うーん。
すぐ帰れるとは思うが、飲み水がなくなるのは困る」
「ソッチじゃなくて、アッチっス!
水噴射でぶしゃーっと!」
俺は言い聞かせるように言う。
「水噴射は微調整が効かないんだよ。
結構な水圧になるから、危ないぞ」
人体に向けて使うような術じゃない。
トウコが気楽そうに言う。
「そこはうまいことやってほしいっス!
お願いっスよ、店長エモーン!」
無茶振りを!
俺は少し頭をひねる。
「うーむ。
まあ、壁に当てて勢いを殺して……。
さらに【操水】も使えばなんとかなるか?」
リンが申し訳なさそうに言う。
「では、私からもお願いします。
さすがにちょっと、気持ち悪くて……」
ダンジョンでは、モンスターの血肉はすぐに塵になって消える。
とはいえ、少しの間でも気持ちのいいものではない。
周囲に敵は見当たらない。
オトリ分身を放って索敵させておけば、大丈夫かな。
「じゃ、やるか。
目や耳を守ってくれ」
俺は二人から距離を取って、両手を揃えて構える。
狙いは天井だ。
「いくぞ!
――【水噴射】、【操水】!」
水流が勢いよくほとばしり出る。
天井に当たった水流が弾けて降ってくる。
かなりのまとまりを持って、どぼどぼと床に落ちる。
これを当てたら、滝行みたいになってしまう。
「ちょっと角度調整して……」
水流を天井に当て、さらに壁に当てる。
微調整は【操水】で行う。
二段階の衝突で、かなり水がばらけてきた。
この角度でいいな!
ある程度ばらけた水が、シャワーのように降り注ぐ。
「よし、いいぞ!」
二人が、水の下に走り込んでいく。
「わあ、豪華なシャワーですねー!」
リンは髪から血を洗い流している。
そして先ほど貸した手拭いを丁寧に洗いはじめる。
そんなことしなくても、放っておけばキレイになるんだけど。
「うひょー!
涼しいっス!」
トウコは水量が多いところを選んで頭からかぶっている。
元気な小型犬めいた無邪気さだ。
床に跳ねた水が広がる。
これは時間経過で消えてしまい、残らない。
飲み水にはならないのだ。
【水噴射】はあくまで、一時的な水を出す術である。
となると水が奪った熱はどこへ行くんだろうか。
周囲の温度は少し下がっているように思える。
熱量保存の法則とか、どうなってるんですかね。
……まあ、気にすまい。
ファンタジー空間で起きる、ファンタジー忍法のやってることだし!
「アギャギャ!」
あ、分身がやられた。
釣れたのはゴブリンだ。
「ゴブリンが来たぞ!
戦闘準備してくれ!
――うりゃあっ!」
そう言いながら水流をゴブリンに向けて薙ぎ払った。
そのままゴブリンを倒し、出口を目指す。
さらにトカゲを狩ったところで、階段が見えてきた。
「よーし。
これで今日の探索は終わりだ」
「じゃあ、おフロっ!
すぐおフロに入りたいっス!」
「そうですねー」
階段に踏み込んだところで、俺は言う。
「あ、そうだリン。
魔石の鑑定を頼む」
「はい。
システムさん、お願いしまーす」
【サポートシステム】が現れて、魔石を鑑定していく。
結果は……。
<名称:火トカゲの魔石。カテゴリ:魔石>
「お、火トカゲか」
「普通のトカゲさんじゃないんですねー」
コウモリやカマキリはそのまんまのネーミングだ。
単にトカゲかと思ったけど、違ったな。
「爆発トカゲかと思ったのにハズレたっス!」
サポートシステムが鑑定を続ける。
<名称:赤ゴブリンの鉱夫の魔石。カテゴリ:魔石>
<名称:赤ゴブリンの投擲士の魔石。カテゴリ:魔石>
「赤ゴブリンさんなんですねー?」
「うーん。
まさか適当に呼んでいた通りの名前とな。
本名はまた違うと思っていたよ。
火トカゲときたら火ゴブリンだろ!」
もしくは赤トカゲだろ!?
統一してくれよ!
「あたしは燃え着火ファイヤー・インフェルノゴブリンだと思ってたんスけどねー」
「そんな長い名前なわけないだろ!」
「覚えられませんよねー」
「さーて、あとは戦利品チェックっスね!」
「トカゲさんのお肉、あるといいですねー!」
新しい敵と戦うのは、緊張感があっていい。
なにより、悪性ダンジョンと違ってすぐに帰れるのがいい。
実家のような安心感だ!
さて、手に入れた魔石をショップで引き換えよう!




