63:私の存在
それからヴィル様の行動は早かった。
夜だと言うのに生徒会の緊急集合をかけ、学園長にはレオン先生を呼び出すように要請。
時間はかかるということだったけど、生徒会室には瞬く間にいつものメンバーが揃った。
「で、アルフォンス王子はわかるけど、カトレアちゃんはなんでいるの?」
「それは、その、仲間はずれは寂しいのよ!」
かわいい。
じゃなくて、危険には巻き込みたくないのだけど。
「まあまあ。そこのクロ? だっけ。彼も部外者なことに違いないし、人手はあったほうがいいんだよね?」
「う……まあ、そうですかね」
アルフォンス王子がかばったことで、カトレアちゃんの目がハートマークに見えるわ。
よしよしされて嬉しそう……。
私も、できればヴィル様にしてもらいたいなー。
ちらっと見ると、ヴィル様はニコニコとこちらを見るだけ。
せっかくカミングアウトしたのに、あれから何もないのよね……。
「じゃあ揃ったことだし、フレアさん。
セリアさんの居場所を教えてくれるかい?」
ぱんぱん、と軽く手を叩いてヴィル様が仕切る。
それだけで場の空気が変わるから、さすが生徒会長ね。
カリスマ的存在なヴィル様、かっこいい!
「フレアさん?」
「ふふふ……あ、はい! 多分セリアさんは少し離れた場所にある廃屋にいると思います。
例えいなくても、何かしらの手がかりは残っているかと」
「お前がそういう根拠は何だ?」
カミーユの物言いにイラっとくるけど、信用されていないのも仕方ないわね。
だって私の存在、意味不明なんだもの。
「そうですね。あの、アルフォンス王子とカトレアちゃん、ヘカテにはご退室願いたいのですが……」
本当はカミーユにも退室してもらいたいけど、セリアのためならなんでもやりそうな男だ。
一人で勝手に動かれるよりはいてもらったほうがいい。
ただ、反論は名指しした人物のほうから出てきた。
「どうして! わたくしじゃ力に慣れないとでもいうの?」
「そうです。フレアさん、私たちそんなに頼りないですか?」
ここで正直にいうのは簡単だけど、余計な心配をかけたくない。
それに二人とも、ここにいるアルフォンス王子やクロの弱点になるのよ?
おとなしくしてもらいたいのだけど……。
そんな私の考えを代行するように、アルフォンス王子が立ち上がった。
「はいはい。ボクたちを危険な目に合わせたくないんだよね?
彼女たちには去ってもらうけど、ボクは残るよ。
君に……いや、君たちに聞きたいことがあるからね」
その目はクロのほうを向いている。
クロはヘカテを名残惜しそうに見ていたけど、結局何も言わなかった。
まだ粘るカトレアちゃんやヘカテはルファスが連れ出してくれた。
彼なら多少事情は知っているから任せても問題なさそうね。
残ったのはカミーユ、アルフォンス王子、ヴィル様。
そして私とクロが対峙する。
「じゃあボクが聞こうか。ある程度は生徒会長に聞いたけど、君はフレア……いや、クレア・ラグドーレでいいんだよね?」
今ならまだ引き返せる。
けど、私はもう決めたんだ。
「……はい。ある事情から匿ってもらい、今まで生きていました」
名前は出さなかったけど、彼らは『魔女の家』の常連。
誰が魔女なのかは明らかなことよね。
けど、対するアルフォンス王子の疑いはまだ晴れていない。
「じゃあ、指が欠けてないとおかしいわけだけど。
君は綺麗な指をしているね。屋敷に置いていったアレは何だったのかな?」
そういわれ、まじまじと自身の手を見てみる。
指が欠ける? なんで?
そういや魔女様が証拠としてクッキーを置いていくとかいってたからそれかな?
「魔女の指っていうクッキーのことですか?
身代わりに食べ物を置いていったはずなので、すでに腐っているかと……」
確認は? と視線で問えば、ヴィル様は無言で首を振る。
どうやら厳重に保管されているようで、状態まではわからないらしい。
「だとしても、もう一つ不可解な点があるんだ。
クレアとフレアは同一人物。そうすると、どうして名前を捨ててまで隠れる必要があったのかな?
君の存在が魔女様にとってメリットがあるようには思えないけど」
表向きは、魔女に殺されたことになってるけど。
実際にはこうして生きている。
なぜ魔女様は私を助けたか?
それを語るには、セリアと私の前世を話さないといけないけど――。
「それは、その。セリアにも関係ある話なので。
だから今は、私を信じて協力してくだいませんか?」
ここで全部話すこともできるけど。
それはセリアの口から――。
だって、とても信じてもらえるとは思えないもの。
でも、ヴィル様にだけは私から伝えたい。
アルフォンス王子はまだ何か言いたそうにしていたけど、事態が事態なので引き下がってくれた。
ただ、手に持った道具を見つめて不思議そうにしている。
「魔女に反応する魔道具がフレアさんとクロウドに反応しない?
だとすると、あのときの二つの反応はいったい……」
つぶやきはよく聞こえなかったけど、これで皆は仲間になってくれたと思っていいのよね?
クロのことはただの手伝いとして紹介し、外に出てったヘカテたちを呼び戻す。
それまでの間、ヴィル様が一言も喋らなかったのは気になったけど。
今はセリアを優先するため、ヴィル様の顔は見れなかった。




