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34:ふぁーすと・こんたくと

 


 とりあえず、まずはどんなお客でも案内しないと。

 平常心、平常心。


「あちらのテーブル席のほうへご案な――」


「あら? 皆さんお揃いでどうしたのです?

 このような場所で奇遇ですね」


「おや、ルファスとセリアがどうして?

 偶然にしては……妙だけど、よかったら一緒する?」


 正解ですヴィル様。

 こいつらが偶然なんて、あるわけないじゃないの。

 そもそも、ここに集まり過ぎなのよ。

 何? いつから『魔女の家』は観光名所になったわけ?


「では、お言葉に甘えて……あら、席が足りないようです。

 すみません、用意してもらえます?」


 うっさい。

 ヴィル様に近づかせる席なんかねーわ!

 ……と、いいたいところだけど、師匠の教えは守らないと。

 まだ・・、お客さんだしね。


 貼り付けた笑顔でニコニコ対応するも、彼女はこちらを見もしない。

 ヘカテ、私の顔見てドン引きしているのバレてるから、あとで覚えておきなさい。




 ようやく厨房へ避難できたけど、気になるのはあのテーブル。

 そもそも、こんな辺境の店に行くルートなんてなかったけど?

 だって店の存在すら出てこないし。

 あのテーブルが気になるのは、私だけじゃない。

 実に珍しい光景なので、私たちだけじゃなく、お客さんたちも注目しちゃっている。


「おい、あれも先輩の知り合いか?」


「ええ。どっちも初対面だけど、二人とも知ってるわ」


「何だソレは」


 だって、それ以外に説明できないし。

 銀髪の背の高い男性はルファス・カドベールのはず。

 攻略対象の中では筋肉質で、細身な体のどこにそんな力が? というほどの力自慢だ。

 その力の源が魔女の力ってわけだけど……あの様子じゃ、彼女に教えてるわね。

 どこの陣営だったかは忘れたけど、今は東の魔女ヒロインに首ったけなのは間違いなさそう。


 そして、もうひとりの彼女。

 どうやら師匠も勘づいたらしく、まだ料理中というのに私を工房の方へ連れて行く。


「師匠、店はいいんですか?」


「クロのやつに任せてある。それよりこっちが重要さ。

 アレが、例のやつかい?」


「十中八九、そうですね。

 見た目もですけど、私ですら圧倒されますもん」


 魔女は各陣営の国から出ない……基本的には。

 それは戦力の流出を防ぐ目的であったり、管理されているという証明のためだったりもするけど、その場所特有の龍脈を使えるという点が大きい。

 地脈は他の魔女でも使えるけど、龍脈はその地域で契約した魔女しか使えない。

 しかも国が認めないとその全力を発揮できないらしい。


 でも、ここにいる東の魔女は違う。

 彼女は師匠ですら掌握できていない、ここ中央の国の龍脈を手に入れている。

 でなきゃ、この魔力で胸を締め付けるような圧迫感の説明がつかない。

 ということは、彼女は国に認知されている魔女なの?


「まさかあんな化物がいたなんてねぇ……」


「疑問なんですけど、クロが平気そうだったのは何でです?」


 私と師匠とは対象的に、クロだけはのんきにフンフンと料理を続けていた。

 こっちは彼女にバレないように必死だったというのに、クロだけは影響を受けなかったのかしら?


「アレはこの店の結界に守られているからね。おそらくあの魔女からの威圧感もカットされたんだろうさ」


 何それ、羨ましい。

 こっちは既に先制攻撃をくらったというのに。

 あちらの思惑が不明な今、まだ下手な行動はできない。




 師匠との作戦会議も終わり店へ戻ると、相変わらず注目を集めるテーブルは賑やかだった。

 ヴィル様、ヘカテ、カトレアちゃん。

 その中でカトレアちゃん以外は生徒会のメンバーだったらしく、その四人で盛り上がっていた。


 おかげで話に入れないカトレアちゃんが、まるで捨てられた子犬のようにこっちを見てくるけど、サッと視線をそらす。

 ……やっぱり我が身が大事だからね!

 まずは情報収集するため、犠牲になって?

 私も皿磨きが忙しいし!


「先輩、同じ皿を何度も磨くのやめてくれ。

 普段からそうだが、今はまさに給料泥棒だぞ」


「黙らっしゃい。

 ちなみにあの彼女、クーちゃん化を解除できる方法を持っているわ。

 ただ、今は関わらないで。まずは向こうの出方を警戒するのよ」


 会話を盗み聞きしたところ、彼女の名前はセリア。

 セリア・リーゼルってカトレアちゃんが呼ぶところから判明した。

 生徒会のメンバーだったり、ヴィル様やヘカテと仲が良いのはわかる。

 でも、ルファスと恋人関係になるのは、まだ早かったはずでは?

 あまり覚えていないけど、戦争がーとなって、ルファスの力が必要になってからだったはず。


 うーん、と頭を悩ませていた時間は、師匠が背中を軽く叩いたことで中断された。


「いつまで皿を磨いてんだい。ほれ、いってきな」


 師匠はどうも私に情報を探らせたいみたいね。

 コト、と置かれた料理は、ヴィル様たちのテーブル行き。


「……ちなみに、いろいろぶちまけるのは?」


「東の魔女はけったいな魔力の持ち主だ。もし触れられるようなことが、わかってんだろね?

 そんときはアンタの魔力がぶちまかれるよ」


「脅さないでくださいよ!」


 つまり、触られたらやばいということね。

 それ、私にとって彼女は歩く引火性危険物みたいなものじゃないの。

 平常心、平常心……。




「おまたせしました。こちらがご注文の品となります」


「ちょっとフレア! 戻ってくるのが遅いのよ。

 べつに仕事をしているわけでもないのにっ!」


 仕事中よ! とツッコミたい。

 けど、こちらをジッと見つめる視線が三方向からくるため、妙に緊張するわね。

 レリーナ、セリア、ルファスと、そんな興味津々に見ないでくださる?


「こちらの方が、フレアさんですか?」


 そうして上から下までたっぷりと目を通して、無邪気な顔でヴィル様に問いかけるのはセリアだ。

 ルファスと付き合ってるみたいだし、ただの好奇心よね?

 ヴィル様を狙うライバルなら、容赦しないわよ?


「うん。最初はセリアさんがここで働いているかと思ったけど、彼女は中々楽しい人物だよ。

 どこか懐かしい気持ちになるしね」


「そうなのですか。この方が……」


 なるべく目を合わせないようにしているけど、あちらからひしひしと視線を感じる。

 セリア・リーゼル。

 私の髪型と金髪なところが同じで、ゲームのヴィル様いわくソックリな存在。

 目の前にしても、全く似てませんけど?


 物語では自分から周りを振り回し、攻略対象がサポートに入ったり守られるキャラだったけど、今の彼女はお淑やかな女性だ。

 猫を被っているだけかもしれないけど、東の魔女ヒロインにしてはおとなしすぎる。

 一番謎なのは、ここにきた目的なのだけど――。


「ところでヴィル会長。

 最近はどこかに出かけていましたが、この場所にですか?

 理由としては、会長が落ち込んでいた原因である妹様に似ているとかでしょうか?」


「よくわかったねセリア。彼女はまさにクレ……いや。

 君も言っていたように、不思議とこの場所が落ち着くんだ」


 他の皆が呆れるくらい、誤魔化すの下手ですよ。

 でもそんなヴィル様も素敵!


「俺もわかるな。こんな綺麗な女性がいるのだから」


 ヴィル様に見とれていたせいで反応が遅れ、

 え?

 と思ったときには遅かった。


 セリア……ではないけど、そのつれ。

 ルファスが私の手を取り、軽く引っ張られる。


 その時、体内から何か吸い取られるような――。


「っっ!!」


「何ッ!!」


 手を放したのは同時だ。

 けど、確かにアレは。あの感覚は……。


「アンタ、届け終わったならさっさと戻ってきな!

 裏から取ってきてもらうものがあるのに、いつまで油を売っているんだい!」


「し、ししょー……」


「お前さんも、うちの店員に手ぇ出したら、わかってんだろうね?」


 師匠の威圧に、同じテーブルにいたヘカテやカトレアちゃんも巻き込まれてしまったらしい。

 他の常連からも刺すような視線が集まっているため尚更だ。


 私はそのまま逃げるように工房へひきこもり、その日はもう顔を出さなかったけど……。

 ルファス程度の魔力なら大丈夫よね? 暴走しない?

 不安になった私は師匠に詰め寄ったけど、いい返事はもらえなかった。


 ……もう!

 何なのよあのチャラ男! セリアと結ばれているんじゃないの?

 今度ヘカテやカトレアちゃんにあったら問い詰めないと!




次回は別視点です。

相変わらず書き溜めゼロなので、毎日更新が途切れたらすみません。

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