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ドラグ君の新たな一面

 なんだろう、これ。どういう状況なのかな。

 あたし以外のみんながドラグ君を慰めてるよ。か弱い男の子を励ましてるよ。兄さんまで一緒になって。


「これでわかったはずだ。三次元の女に夢を見るもんじゃない。あれは人の皮を被った悪魔だ。いい勉強になっただろう」

『う、うん。これからは十分に用心する。恐ろしい人と契約したことを少し後悔してるけど、ぼっくはドラゴンだから強くある』

「その意気なのだ。わたっしも精一杯協力しよう」


 兄さんはともかく、エルファさんまで熱い掌返しなんてひどいよ。ちょっとはあたしも構ってくれたっていいよね。

 もうこの世界にはあたしたちしかいない。みんなで協力して生きてかなきゃなんだよ。


「そう膨れるな。私たちはちっぽけな存在であることを受け入れ、のんびりと過ごそうではないか」

「いやいや無理だよ兄さん。文明が滅びちゃったんだよ。ドラグ君が全部壊しちゃってくれちゃったんだよ」

「文明が滅びたのならば築けばいい。私たち百人とドラゴンでな」

「無理! 異世界で原始生活なんて嫌だよ!」

「わがままを言うな。私だって納得はしていない。今一度吟味してみたが、エルファ以外に私のお眼鏡に叶う奴はいなかった。してエルファ、どうなんだ。私と付き合う気になったか?」

「あれは本気だったのか? 冗談かと思い聞き流していたのだ。きさっまの好みに満ちたのは嬉しいが、わたっしはハーフエルフ。純な人間とは違うところがあるから難しいかもしれないのだ」

「そんなこと知るか。君は君だから素敵なのである。それに理由などないし、わざわざ御託は必要ない。私が他人を褒めることなど珍しいんだ。誇っていいぞ」

「なんとまあ自信に満ちた奴なのか。やはりきさっまには敵わないようだ。戦いに敗れただけでなく口説かれるとは。わたっしとあろうものが揺れ動いてるのだ」


 エルファさんの目が完全に乙女のそれだよ。頰に手を置いて体をモジモジさせちゃって。眩しすぎて直視できない。


「そうか。このまま押せば攻略できそうだがやめておこう。焦らすのも戦略だからな」

「そっ、そうか。わたっしの腹は決まったのだがな」


 早速効果が出てるみたいだね。なんで兄さんは異世界でギャルゲーやっちゃってるの。どこまでもゲーム脳なんだから。


 色々とあったけど、みんなで相談した結果、とりあえず大陸に戻ろうってことになったよ。元凶であるドラグ君を引き込んだから恐いものはないってことでね。恐いものはおろか何もないんだけどね。


 ドラゴン化したドラグ君の背中は大きいから、みんなを大陸に運ぶのなんてあっという間にだった。

 大陸に着いた途端に泣き出す人や叫ぶ人が出たけど仕方ないよ。大切な人を亡くしたのだから。簡単に現実を受け入れられるわけないよ。


「泣くも叫ぶも後回しだ。これからどうするのか本格的に考えなければならないんだ」

「それは酷だよ兄さん。大切な人を亡くして泣かない人はいないよ」

「くだらん。泣いて叫べば生き返るとでも言うのか。泣かれて叫ばれ死者は迷惑してることだろう」

「そんな言い方ないんじゃないかな」

「物事の考え方など千差万別だ。私は誰が死のうが泣かない自信がある」

「あたしが死んじゃっても!?」

「そうだ。だらしなく涙と鼻水を流すなどあり得ん」

「薄情な兄さんだよ。妹として悲しい」

「失礼な。誰も悲しむなとは言ってない。私は泣いて悲しむことはないと言ってるんだ」

「えっ?」

「私なら笑って悲しむ。人が死んで悲しまない奴を私は軽蔑する。悲しみ方も千差万別だ」


 兄さんは、あたしにそう言ってエルファさんの隣に行った。性格さえなんとかすればパーフェクトなんだけどなぁ。実に惜しいよ。嘆かわしいよ。

 エルファさんは泣いてなかった。でも色々な人の名前を言いながら祈ってたの。その姿は騎士というよりも聖女だね。


 遠目からエルファさんを見ていたら、そっとドラグ君があたしの隣にきた。


『お姉ちゃん』

「ドラグ君、どうしたの?」

『ぼっく、自分勝手に暴れたんだね。反省してる。お姉ちゃんにボロボロにされて痛感したよ』

「ボロボロはオーバーじゃないかな」

『それだけ痛かったんだ。体も心も』

「えーと……ごめんね」

『ううん。愛のある暴力だった』

「ど、ドラグ君?」

『殴られて蹴られて響いたんだ。最初は痛かったんだけど、どんどん気持ちよくなっていって、恐怖すら快感に変わったんだ』

「ちょっと冷静になろうかドラグ君」

『ぼっくは至って冷静だよ。お姉ちゃんのことは恐いけど、それがまた刺激的で魅力だよ』


 ドラグ君の瞳がキラキラと輝いちゃってるよ。なんか特殊性癖に目覚めちゃったみたい。もしかしなくてもあたしのせいだよね。あはは。話題を変えないと。


「ドラグ君は、これからどうしたいのかな?」

『これからもいっぱい反省する。だから、ぼっくをいっぱい……い・じ・め・て』


 ドMショタ……だと……!?

 あたしには刺激が強すぎるよ! 鼻血が出てきて目の前が真っ暗になーるー。

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