LOG.02 悔しいほど美しい未来都市
まずい、早くしてくれ。
[×SYSTEM:再起動…完了]
よし。
敵はどこにいる?
[×HOSTILE:ビルの隙間に1名]
[×ANALYSIS:人間、スナイパーライフル]
打たれる前にやるぞ。
俺は瞬時に引き金を引いた。
カチッ
引き金の感触が、とても軽い。
その銃弾は敵の頭部に直撃した
[×TARGET:生命反応なし]
[×KILL:人間]
人間はポリゴン化して消えていった。
なんだ、意外と簡単だな…。
前世ではFPSはあまりのめり込めなかったが、才能があったのかもしれない。
いや、もしかしてこれが転生特典なのか?
だとしたら激アツだ。
[×HOSTILE:前方に2名]
[×ANALYSIS:人間、アサルトライフル]
今度は動く相手だ。
だが俺には奴らの軌道がわかる。
俺の銃口は敵に吸い付けられるように、視界に映る。
そして弾を交わしながら弾を撃つ。
[×TARGET:死亡]
16発撃って10発命中。
かなりの打率だな。
やっぱりこれが俺の転生特典!
[×AIM:オート]
ん?
なんだ…これが原因か。
転生特典かと思ってぬか喜びしてしまった。
オートエイムだと?
そんなのつまらないな。
よし!
[×AIM:オート…マニュアル]
これでどうだ?
数発撃って試したが、やはり引き金が重たい。
こっちの方が緊張感があっていいな。
[×HOSTILE:前方に5名]
[×ANALYSIS:人間]
俺は重い引き金を引いた。
パン…!
俺は忘れていた。
これがゲームではないことを……。
数時間後…
ライフルはこんなもんかな。
次はお待ちかねの…
ビー…
体の芯に重低音が響き渡る。
何の音だ。
再び虹色の光が視界一面に広がり、一瞬で移動した。
どうやら、現実世界に強制送還されたみたいだ。
同じ顔、同じ身体のドロイドたちが規則正しく並んでいる。
せっかくいいところだったのに。
まあいい。
時間があればまたやってみよう。
重低音が鳴り響き、
さっきまで壁だと思っていた巨大な扉が開いた。
どこかに移動するみたいだがどこに行くんだ?
[×RESULT:NSF軍事部の全バトルドロイドがボストンの残存人類殲滅を最優先としている。]
ボストンって、さっきアメリカ最後の人類都市と言われていたはずじゃ…
ということは、もう戦争は佳境なのか。
それにしてもこの体は便利だな。
考えるだけで次の作業が行われ、簡単に情報を得ることができる。
人類が簡単に滅んでしまうわけだ。
ドロイドたちは一斉に歩き出し、俺はそれに続いた。
列はほとんど乱れることなく直進する。
行進なんていつぶりだ?
なんだか小っ恥ずかしいな。
だが、そんな感情も一瞬でかき消されるほど、扉の外は美しかった。
この時、俺はこう思った。
世界が、加速している———。
だが、一瞬にして視界は大量の白文字で覆われた。
[×LOCATION:ニュー・サンフランシスコ(NSF)中央区]
[×TIME:2046年9月5日 23:04]
[×WEATHER:気温24℃ / 湿度40%]
[×API:0.0001%(クリア)]
[×DENSITY:高 / 周辺ドロイド数:14,520体]
[×ANALYSIS:NSF総本部タワー(高さ1200m)]
[×ANALYSIS:エアカー(メーカー:インペリウム)]
[×AD:インペリウム社——『空を飛ぶ自由を、あなたに』]
[×AD:YUGEN——『永遠の美しさをこの手に』]
[×WARNING:上空ルートB7は政府専用機のみ通行可能]
[×NEWS:『政府が公式発表!残存人類の発見者に報酬を』]
待て待て、情報量が多すぎる。
わかるのは、螺旋状のビルと空飛ぶ車。
あとはVRMMOの広告ぐらいか。
UIが邪魔だ。
消えろ。
再び視界は開け、街の光を映す。
これは、本当に美しい。
ネオンが光り輝く街並みは、
俺たちが想像した100年後の未来都市そのものだ。
人間の手では実現不可能だっただろうな。
悔しいほど、美しい。
顔は上空方向に固定され、そのまままっすぐ進んでいった。
俺たちが出てきた建物———湖を超えたあたりで、談笑する声が聞こえてきた。
[×ANALYSIS:オメガドロイド]
[×RESULT:民生型のアンドロイド]
本当、人間そっくりだ。
さっきのババアもオメガみたいだな。
違いを強いて言えば、頬の金属が剥き出しになっていることぐらいかな。
よく見たらたくさんいるな。
どのくらいいるんだ?
[×RESULT:NSFの総人口は3億人強]
人口密度えげつねえな。
ったく自動車やら高級ブランドやらといい、人間を殺してまわっている癖に人間の真似事とは、謎が深まるばかりだ。
それと、謎はもう1つある。
いろんな年齢層のドロイドがいるのに、子供のドロイドが一人も見当たらない。
意図的に子供は排除しているのか?
[×SEARCH:ロード中……アクセス権限なし]
権限なしか。
何を隠してるんだ?
しばらく行進を続け、街の明かりが薄くなり始めたあたりのところまで来た。
そこにあるのは巨大な軍事用プラットホームだった。
どこか東京駅を彷彿とさせるような外装だ。
さっきまでの近未来の建物と比べ、落ち着いた雰囲気で趣がある。
と思っていたが内装は、なかなかSFしていた。
[×ANALYSIS:大陸横断チューブ列車]
[×RESULT:ニューサンフランシスコとモントリオールを繋ぐ列車。時速5000kmで走行可能]
2036年の前世ではリニアですら実現しなかったのに、ここまでとは。
ドロイドたちが順番に乗り込んでいき、俺もようやく中に入ることができた。
中は思ったよりも殺伐としてるな。
まさに戦地に送られる傭兵だ。
ドアが閉まると甲高い効果音と共にゆっくり前に進み始める。
機体は加速し、一瞬にして音が消えた。
チューブは透明のはずなのに、光の粒子で、全く外の様子がわからない。
俺はポカンとそれを眺めるしかなかった。
そして、1時間はあっという間に過ぎて行き。
———2046年9月6日モントリオール———
[×ANALYSIS:NSF軍事部モントリオール拠点]
サンフランシスコの本部と似たような作りの軍事施設が一つあり、民間人は住んでいないようだ。
湖の上を30Mの円形の壁が囲み、変に閉塞感がある。
ふと壁上に浮かんだ月を見た。
それは半分が光、半分が闇の半月だった。
俺はまだ知らない。
この半月の、正体を。待ち受ける、『希望』との出会いを。




