~無理ゲーにもほどがある!2~
ふと、時計の針に目を向けると、時刻は夜の8時を少し回ったところだった。親と半ばけんかをするように家を飛び出し、大学へと進学しているため、一人暮らしはもちろんのこと誰からの支援や援助も無い状態だ。それ自体は自分で選んだ道であるが故、後悔などはしていないが、時たま、誰も話し相手がいないことを寂しく感じたりもする。
今日届いたゲームはまさにそういった思いを忘れさせてくれるほどの素晴らしい作品だ。ストーリーは結人自身が考えたといっても公募があったのは数年前のことで、内容をこと細かく記憶しているわけではないので、懐かしさとわくわく感が止まらない。
「それにしても、もうこんな時間か。俺としたことが何一つ用事が終わってないぞ」
どや顔で独り言を言いながら、さっきまでプレイしていたゲームの曲を歌い、洗濯機まで歩いて行きスタートをかける。時間はいつもよりかなり遅くなったが、洗濯物を回している間にお風呂へ入るのが結人の日課だ。
そのまま服を脱ぎ浴室へと入る。そこそこ引き締まった体にシャワーを浴びせながら、明日は大学が休みだから今日は何時まであのゲームをしようか、と考える。今こうしてシャワーを浴びているのが煩わしく感じるほどにまであのゲームにはまってしまった。
次は確か、あの川向こうにある王国を目指したらよかったんだよな。などと考えていると、湯気で霞んだ浴室に、普通では無いはずの緑豊かな草原やそこを流れる小川が見えた気がして手で顔をこする。何度か瞬きをして見たが、いつもどおりの風呂場が広がっているだけだった。
「ん?ゲームにのめりこみすぎて幻覚まで見えるようになったか?時間のことなんかすっかり忘れるくらい集中しすぎてたからな」
ぼやきながらシャワーを止め、風呂場から上がり、適当な食材で腹を膨らませた結人は、夜が更けるまで、例のゲームを堪能したのだった。
結人は椅子にもたれかかりながら、大きく伸びをしていた。時計に目をやると夜中の3時を少し回ったところだった。PCの画面には、きれいな草原に剣が突き刺さり〔Your Dead〕という文字が浮かび上がっている。
「そろそろ寝るか。徹夜でやろうかとも思ったけど死んじゃったしな」
結人はPCをスリープモードにしてベッドにもぐりこみ、部屋の明かりを豆球にして目を閉じる。
脳が興奮しているせいか、脳裏にさっきまでやっていたゲームが浮かびあがり、なかなか寝付くことができなかったが、体は疲れていたらしく、いつの間にか夢の世界へと落ちていったのだった。