~無理ゲーにもほどがある!3~
結人は、ドンッと落下するような衝撃が体に走り目を覚ました。
「いててて。ベッドから落ちたか?」
痛む体をさすりながら結人はゆっくりと体を起こし、周りを見渡す。しかし、あたりは文字通りの真っ暗闇で、一寸先も見えないのではないかというような闇の中に結人はいた。
空気はひんやりとしていて少し肌寒くすらある。なんだこれ。部屋の中が一切見えないなんてこと今までなかったぞ?いぶかしみながらも上体を起こす。寝始めた時間が遅かったせいで頭の中がボーっとしている。とりあえず、落ちたのであればベッドは結人の横にあるはずだ。
ベッドに戻ってもう一眠りしようと思い、ひざ立ち状態で暗闇の中手を伸ばしていくが、伸ばした手は何に触れることも無くむなしく宙をさまよい、そのままバランスを崩した結人は前のめりに手をつく形となった。
ベッドが無い!? まさかそんなはずは・・・。そこで初めて気がついたのだが、この手に当たるざらざらとした感触の中に、たまに感じる少しごつごつとした感じ。これは、地面だ!
何度触って確かめても間違いなく乾いた土の感触だった。しかしベッドで寝ていたのに、なんんで土の上にいるんだ?寝ている間に誰かに拉致され、山にでも放り出されたのか。しかし当然、そんなことをされるような覚えはないし、そもそも一寸先が見えないということはないだろう。いったいここはどこだ。
などと考えていると、水道の蛇口から水が一滴たれるかのような音が耳に届く。どことなく聞き覚えのある音にほっとする自分がいたのだが、次に聞こえてきたズル、ズル、となにか重たいものを引きずるような音と、時たま聞こえるフシューと言う音に、安堵とは程遠い恐怖心が芽生えた。
「おいおい。何の音だよ」
思わず口をついて出た言葉だったが、その声は周りの壁に当たり思ったより大きく反響する。そこで初めて自分がどこにいるのか気がついた。ここは<洞窟>だ!ベッドで寝ていたはずなのに、なぜ洞窟にいるのか。それにこの得体の知れない音はなんだ? その何かを引きずるような音は次第に大きく、結人にだんだんと近づいてきているようだった。しかし、暗闇で視界が悪く、あたりの壁に音が反響してどちらから近づいてきているのかいまいち判断できない。
「これが夢なら覚めてくれ」
と願いつつ、ありきたりだが自分の頬をつねってみる。おもいっきり痛かった。どうやら夢というわけではないようだ。
そんな馬鹿なことをしている間に音はだんだんと近づいてきて結人の数メートル後ろでとまったのが分かった。これだけ近づかれるとフシューフシューという息をするような音がはっきりと聞こえる。結人は嫌な汗が吹き出るのを感じながら、こわばるからだを奮い立たせて後ろを振り返る。
暗闇で何も見えないはずなのだ。見えないはずなのに、目の前には鋭いとげを連想させるような真っ白い歯が、円を描くようにいくつも暗闇の中浮かんでいた。おいおいまじか! 無理ゲーにもほどがあるだろ!? 結人は自分が叫んだのかさえ解らないまま、その歯の中へと吸い込まれるようにして飲み込まれたのだった。





