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53話 火事の後始末

 

 ハワードの姿が見えなくなると、フェスタが申し訳無さそうに口を開く。


「メルダ、その……研究の方は大丈夫だべか?」


 メルダは思い出したように後ろを振り返り、傾いた家を眺めると大きく溜息を吐いた。


「はぁ……まだわかりません。燃え残った資料を集めてみないと……でも、大丈夫です。ここで頓挫する訳にはいきませんので!」


 フェスタは指で頰を掻きながら悩んでいる。


「メルダの研究はこの国にとって無くてはならないものだべ。 ……よし! 家はオラが何とかするんだべ! その間は宿屋に泊まると良いべ!」

「はい! フェスタ様、ありがとうございます!」


 メルダがフェスタへ一礼すると、フェスタは申し訳無さそうに帰って行った。

 フェスタを見送り終えると、俺達は燃え残った家の中へ入っていく。


「改めて見ると酷いな……」

「真っ黒だわさ……」

「焦げ臭いっす……」

「原型を留めてないのである……」

「悲惨だな……」


「はぁ……ここから使えそうな物を掘り出すしかないわね……」


 室内には瓦礫や燃えカスが散乱し、焼け焦げた書類が舞っている。

 メルダは落胆の表情を浮かべると、俺に視線を向けた。


「ねぇトール。あんたの能力で元に戻せたりしないの?」

「残念だが、それは不可能だ。俺が出来るのは体内に飲み込んだ物を修理する事だけ。燃えた紙を“紙”として直す事は出来るが、文字の書かれた“書類”として戻すのは無理だ……」


「そう……わかったわ……」


 俺にも出来ない事があるのだと改めて認識させられ、遣る瀬無い気持ちになった。

 メルダが燃え残った資料を集め始めると、それを見た仲間達もメルダに続く。


「アタシ達も手伝うんだわさ!」


 フォンの言葉に俺達は強く頷いた。


「みんな……ありがとう」


 俺達は焼け落ちた家の中から、燃え残った資料や研究材料を掘り起こしていく。


「このビンはどうするんだわさ?」

「あっ、これはまだ使えるわ!」


「この半分焼けた書類はどうするっす?」

「うーん、これは研究データね。他のデータと合わせれば使えるかもしれないわ!」


「この奇妙な物体は何だ?……」

「ああ、これはスライムのコアね。まだ使えそうよ!」


「見た目よりも燃え残っているのである」

「そうね。案外被害は少ないかもしれないわ」


 数時間ほど作業を行い、まだ使えそうな物や燃え残った物が家の前に並べられた。


「こんなもんか……メルダ、どうだ?」

「大丈夫よ。これだけあれば研究を続けられるわ!」


「メルダはこれからどうするんだわさ?」

「そうね……フェスタ様に新しい家を用意して貰えるまで研究は中断ね。暫く宿屋に泊まる事になると思うわ」


「でも、家の前に並べた物はどうするっす? この家は傾いていて、いつ崩れてもおかしくないっす……」

「た、確かに……家の中に仕舞っても、目を離した隙に崩れたら大惨事ね……はぁ。仕方ないわ、宿に運び込むしか無さそうね……」


 メルダの家は倒壊寸前な程に傾いていた。

 おそらくフォンのデコピン一発で簡単に倒壊するだろう。

 メルダは傾いた家から運び出された荷物に視線を移すと、大きな溜息を吐いて頭を抱える。


「はぁ。でも、これ全部なんて宿の部屋に入るかしら……」


 メルダの家は平家だ。

 しかし、室内は意外と広い。

 そんな中に所狭しと研究の資料や素材が詰め込まれていたわけで、焼け残った物を家の前に並べても、かなりの量となっていた。

 そんな品々を宿屋の一室に収めるのは不可能だろう。


(仕方ない、俺がなんとかするか……)


 俺はメルダに一つ提案をする。


「なぁメルダ、この荷物を魔法で一つの塊にする事は出来るか?」

「ええ。結界の中に閉じ込めることは出来るけど……どうしたの?」


「ひと塊に出来るなら、俺が暫く預かってやるよ!」

「ホントに!? トールありがとう! アンタ見掛けによらず優しいのね!」


 メルダは目を輝かせて俺を見つめた。

 見掛けよらずは余計だが……


 塊にする理由は『空間収納』へ仕舞った後に、一つずつ選択して吐き出すのが困難だからだ。

 口の中のスイカの種を10個だけ吐き出せと言われているようなもので、そんな面倒なことはやってられない。


 メルダは杖を荷物の上に翳すと、詠唱を始める。


「??????」


 すると、荷物の上に球状の結界が出現した。

 さらに杖を一振りすると、結果の中に荷物が吸い込まれて行く。

 暫くすると家の前の荷物が全て結界の中へ収まってしまった。

 結界内は荷物が押入れの如く詰め込まれ、ミシミシと音を立てている。


「これでよしっと……」

「な、なぁ。あんなに乱暴に詰め込んで大丈夫なのか?」


「平気よ。荷物の一つひとつに結界を張ってあるの。多少ぶつかった程度では傷つかないわ!」

「そうか、なら大丈夫だな!」


 俺は荷物がひしめき合う様子に苦笑しながら、結界へ向けて手を翳し炎を纏わせると『空間収納』へ飲み込んだ。

 腹の中へ意識を向けると、荷物の塊となった結界が漂っている。

 どうやら問題無いようだ。


「よし、荷物は大丈夫だ。これでもう、運ぶ物は無いな?」

「ええ、あとは宿を探すだけよ!」


 俺は人型に戻ると、俺達は宿屋を探しに街へと歩き出した。


今回もお読みくださりありがとうございます。

ブックマークや評価を頂けると嬉しいです。


執筆中に144件目のブックマークを頂きました!

ありがとうございます!

次回の更新は10日の予定です。


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