51話 放火と絶望
家の中では資料や研究材料と思しき物が轟々と音を立てて燃え盛っていた。
「いやぁぁぁぁ! 資料が! あたしの資料がっ!!」
「??????」
メルダは涙を流しながら、燃え盛る資料を凍らせ火を消している。
だが火の勢いが強すぎる為、消火が追いつかないのは明白だった。
「メルダ、落ち着け!」
俺は声を上げ、家中に炎を纏わせる。
炎は一瞬にして室内の全てを包み込んだ。
そして、息を吸うように炎だけを体内に吸収する。
暫くすると、炎の中から燃えカスとなった資料が露わになった。
その様子にメルダの表情が凍りつき跪く。
「なっ……なんでこんなこと……火は確かに消した筈なのに……」
ついにメルダは放心状態となってしまった。
メルダが呟いた直後、オルガが何かに気付く。
「今、壁の向こう側で誰かが走る音が聞こえたぞ……」
すると、フォンが勢いよく飛び出した。
「ドーン!」
数瞬後、家の外から爆発音が響く。
俺達も慌てて家の外へ飛び出すと、フォンが何者かに攻撃を受けていた。
「くっ、何故ボクの存在に気付いた?……」
「アンタの足音だわさ! メルダの家に何をしたんだわさ!!」
フォンの相手は魔導師ハワードだった。
ハワードの周囲には、数個の火球が浮かんでいる。
「足音だと!? そんなもので……クソッ! こうなったらお前には眠って貰うしかないな……」
ハワードが前方へ手を翳すと、火球が勢いよくフォンへ向け飛んでいく。
やがて火球はフォンに直撃し、周囲に爆風が吹き荒れた。
そしてハワードは煙に飲まれたフォンを眺め、笑みを浮かべ。
「フッ、余計な事をしなければ痛い思いをしなくて済んだのにな……」
呟くと、ハワードは踵を返し立ち去ろうとする。
だが、フォンに炎は通用しない。
煙の中から飛び出したフォンは、ハワードに飛び付いた。
「な、なにっ!? お前、何故立っていられるんだ!?」
「アンタ! メルダの家に何をしたんだわさ! 答えによっては……ブッ飛ばすんだわさ!!」
「フッ、メルダはくだらない研究をしていたからな。目を覚ましてやろうと資料を燃やしてやったんだよ!」
「グシャッ……」
ハワードが答えた直後、何かが潰れる音がした。
「ぐっ、ぐあぁ……腕がっ! ボクの腕があぁぁぁぁ!!」
フォンは怒りのあまりハワードの両腕を握り潰した。
ハワードは苦痛に顔を歪め、腕からは大量の出血をしている。
フォンの表情は狂気を含み、このままではハワードを殺しかねない。
「アンタは! アンタは!! メルダの何を見てきたんだわさ!!!!」
フォンは更にハワードの両足を握り潰す。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
ハワードは痛みでフォンの言葉を聞ける状態ではない。
「親を殺されて、それでも必死で前を向いて……それをっ! それをアンタはっ!! アンタの所為でメルダはっ!! アンタなんて、アンタなんてっ!!!!」
フォンは手を握り、拳を振り上げる。
流石にこのままではまずい。
「やめろ! そこまでだ!!」
俺はフォンの腕を掴み取り押さえた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
フォンは息を乱し、涙を流しながら唇を噛み締めている。
「なんで止めるんだわさ! こんな奴の所為で……こんな奴の所為で! メルダは傷付いてるんだわさ!!」
「だからって! ……だからってな、こいつを殺して良い理由にはならねぇよ! フォン、お前は少し頭を冷やせ……」
フォンはハワードの腕や足を見つめ、俯いた。
「うっ……確かにアタシは正気を失ってたんだわさ……」
どうやらフォンは落ち着きを取り戻しつつあるようだ。
暫く様子見をしつつ、そっとしておいてやろう。
ハワードへ目を向けると、痛みのあまり気を失ったようだ。
俺はハワードを『空間収納』へ飲み込み、潰れた腕や足の治療を開始する。
だが破損が酷く、飛び散った肉片だけでは治療が難しい。
幸い、辺境の研究所から回収したキメラの残りがあり、これを流用する事で治療は数分で終了した。
魔王種への進化前であれば1時間は掛かったであろう作業が僅か数分で終わり、改めて進化したという実感が湧く。
そしてハワードを腹から吐き出すと、炎のロープを作成し拘束した。
※ ※ ※
フォンが落ち着いたことを確認し、俺は拳程の大きさの火の玉を空に向け打ち上げた。
さらに『視点変更』で視界を火の玉へ切り替える。
そして火の玉の周囲の安全を確認し、それを爆発させた。
「ドーン!!」
赤い閃光と重低音が上空に鳴り響く。
「今の音で、もうすぐ兵士達が駆けつけるだろう。こいつはメルダの家を放火した犯人としてフェスタに引き渡す」
「……」
フォンは無言で頷いた。
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(9月末頃を目標としております)
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