34話 バカ国王
今回は人名を強めに入れております。
くどいと感じましたら、感想にてご指摘ください。
フォンへ視線を向けると、ニヤニヤと嬉しそうに震えながら、白目で倒れていた。
「あひゃ……あへへ……」
「「「「「はぁ〜……」」」」」
俺達はそんなフォンを横目に、頭を抱え、深く溜息を吐くのだった……
「この金貨は妾が独断で用意したものじゃが、各国の意見を伺いたい。この褒賞は、妥当か?」
すると、各国の王が口を開く。
「妥当だな」
「妥当だべ」
「妥当じゃ」
「妥当だね」
「妥当じゃの」
“五人”の王が妥当と判断を下した。
そして、最後に漁業都市タナトス王国に回答が回る。
国王と思しき人物が口を開こうとした時、背後に立つ男がその人物に耳打ちする。
背後に立つ男は、全身を白のスーツのような服に身を包み、白いシルクハットのような帽子を被っている。
その装束は、異世界のそれとはかけ離れていた。
異質な空気を纏うその男は、耳打ちが終わると俺達を見下すような鋭い視線で眺める。
そして、国王と思しき人物が、白服の男に頷き口を開いた。
「妥当ではないのぉ」
タナトス国王が異議を唱える。
「我が国は其方らに討伐依頼をしていないのでおじゃる。よって、我がタナトス王国は支払いを拒否する!」
その言葉でフォンは真顔に戻り、体が薄っすらと黄金色に輝くと、踵を支点にニュッと垂直に起き上がる。
そして、血管が浮き出る程の怒りの表情を浮かべている……
《タナトス・ハイベイ……あンのバカ国王! アタシの金貨をよくも奪ってくれたんだわさ!……》
フォンの気持ちもわかるが、金貨はお前“だけ”のものじゃないだろ。
俺“達”の金貨な……
漁業都市タナトス王国の国王。
どうやら名前はタナトス・ハイベイと言うらしい。
その男が発言を終えると、魔王シェリーが不満な表情で詠唱を行う。
「??????」
すると、7つの金貨の山のうち、端に積まれた山が、すっと消えた。
「ああっ! アタシの金貨がっ!……」
そんなフォンをジト目で眺めていると、タナトス・ハイベイが口を開く。
「なんじゃ其方、与えられていないものを自分の物にしようと抜かすでおじゃるか? 流石狐よのぉ。獣人風情が……」
獣人風情と言った瞬間、ダルスの体が白銀色に輝き、腕を振り上げた。
「てめ……むごご!」
《抑えるのである……ここで手を出したら取り返しのつかない事になるのである!》
《くっ……こいつ……覚えてろよ……》
ドラムがダルスの腕と口を抑える。
すると、ダルスは落ち着きを取り戻し、静かにタナトス・ハイベイを睥睨した。
「ふん! 獣人風情がマロから金貨を受け取ろうなど……烏滸がましいのでおじゃる!」
そんな台詞を吐き捨てると、タナトス・ハイベイは席に着いた。
俺はその態度に強い不快感を抱き、嫌味を口にする。
「海賊が発生する程の余裕が無い国から、無理して褒賞を貰うわけにはいかない。その金貨は国民に使ってやるといい」
すると、タナトス・ハイベイは顔を震わせ、唇を噛み締めていた。
一連の遣り取りを眺めていた魔王シェリーは、深い溜息を吐くと、最後の締めに入る。
「ふぅ……では、タナトスを除いた6国、合計3250枚の金貨を褒賞として授ける」
諦念の表情をする魔王シェリーを横目に、俺は大量の金貨が積まれた台車を兵士から受け取る。
そして、全身炎化すると、金貨の山に炎を纏わせ『空間収納』へと飲み込んだ。
その様子をタナトス・ハイベイは目を丸くして眺めている。
「も、燃えたじゃと!? こやつ、金貨を燃やしたでおじゃる……」
背後に立つ白服の男は慌てる国王には見向きもせず、俺を眺めると不気味に嗤い、呟く。
「良い能力を持っていますねぇ。わたくし、羨ましい。イフリートさん……」
男の声量は無に近しかった。
しかし、何故か俺にはしっかりと、その言葉を聞き取ることが出来た……
俺が金貨の回収を終えると、魔王シェリーは口を開く。
「では、これにて臨時虹会を終了する。解散じゃ!」
魔王シェリーの言葉に、各国の王が立ち上がり、退出しようと動き始めた次の瞬間。
「ん?……!?……」
俺は体内で何かが弾けたような感覚に襲われた。
そして、視界が真っ暗に閉ざされ、意識を失う……
※ ※ ※
トールは突然人型に戻ると、意識を失い倒れた。
その様子に、トールの仲間達は驚愕し、トールの元へと駆け寄る。
「「「「トール様!」」」」
そして、メルダがトールの頬を叩く。
「トール! ちょっとトール! あんたどうしちゃったのよ! ねぇ!」
「まさか……アレが起きるんだわさ!?」
「オイラ達の修行の成果が試されるっす!」
「我輩は、いつでも大丈夫である!」
「……」
「ほぅ……面白いですねぇ」
白服の男がオルガの様子を眺めニヤリと嗤う。
しかし、彼等がそれに気付くことは無かった。
そして、魔王シェリーはトールを一瞥すると、額に汗を浮かべ、静かに口を開く。
「くっ、矢張り今日だったか……」
そう呟くと、各国の王へと振り向いた。
「みな聞いてくれ! トールは三日前、人間を一万人殺した」
魔王シェリーの言葉で兵士や人間国王達が騒めく。
しかし、二柱の魔王は動じない。
「グラハム、フェスタよ、この意味がわかるじゃろ?……」
魔王グラハムと魔王フェスタは静かに頷いた。
「“進化”が始まるんだな?……」
「この緊張感は、久しぶりだべ……」
三柱の魔王の額からは汗が流れ、じっとトールを見つめる。
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