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「魔王の終活」   作者: クロネコ
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51話 聖剣と老人

坑道のの中で謎の人形と戦ったラストル、ペティ、ムンナの3人は、敵を一掃した後謎の老人に出会う。


〜 絶対魔界領域 山中の街サバラン 坑道


その男をラストルは知っていた。

両親が盗賊に惨殺されたその日に出会ったホームレスの男。ラフだった。


「知り合いかい?ラストル。」


突然現れた男に警戒しながら、ムンナは聞いた。


「ああ…あの時、一緒に連れて行く事ができなかった人だ…


良かった…生きてた…」


ラストルは膝をついた。

我慢強くなっていたと思っていたのに、勝手に涙が溢れる。


「ラストル!?大丈夫??」


ペティはラストルに駆け寄る。

髭の老人ラフは頭を掻いた。


「…おや?思い出したぞ!


何年か前に突然エサ場にいた少年か!!

デカくなったなぁ!!」


ラフは思い出したようだ。

ラストルは涙目のまま、ラフと握手をした。


「ホントに…ホントに良かった!ラフさん。


でもあの時巨人が攻めてきたのに、どうやって…?」


ラストルはラフに聞いた。


「まぁ、いろいろあってな。


さすがにあの街に居続ける事もできなかったし、とりあえずこの山に逃げてきたら、運良く魔除けの山だったわけさ。」


ラフは髭を触りながらニコニコして答えた。


「えっと…ラフさんだっけ?

私はムンナ。戦士をやっている者だ。


他に人は居ないのかい?」


ムンナが次にラフに質問した。


「ああ、よろしく。

金を持ってる奴は次々と大都市へ飛んでっちまったからな。


この坑道には俺1人しかいないね。」


ラフはムンナを見ながら言った。


「こんな危ない坑道に1人で!?

人形の魔物がいるのに?」


ペティは驚きながらラフに言った。


「心配なさんなそっちの娘さん。

こいつらは俺の術だ。


こう見えて、昔はちょっとした魔術師だったのさ。


この坑道に魔の者が入って来ないようにする仕掛けさ。

たまに人間が入って来ても作動しちまうみたいだけどな。」


ラフは頭を掻きながら、人形の残骸を見ていた。


「ラフさん。こんなところじゃ生活も辛いだろう。


俺たちと一緒に街に戻ろう!

今度こそ置き去りにはしない!」


ラストルはその場から立ち上がり、提案した。

ラフは困った顔をしながら再び頭を掻いた。


「ふむ…とても魅力的な話なんだが…

悪い!俺はこのサバランという地から動けないんだ。


理由は…

そう!人間社会に馴染めないからだ。大都市に行ったところで俺はまたホームレスな生活を続けるだろうさ。」


ラフはキッパリと断った。

ラストルはその発言に少し違和感を覚える。


「そんな事言っても、ここは水も食料もないだろう?

同じ条件なら街でも良い気がするんが…」


ムンナが不思議そうに聞いた。


「だと思うだろう?

まぁ、とりあえず俺について来てみろ。」


ラフはスタスタと坑道の奥へと入っていく。

3人はしばらく呆然としていた。


「なんだか、不思議なおじさんだねぇ。


ホームレスの人間は自分の生活スタイルにプライドを持ってるって聞くけど本当だね。」


ムンナがラストルに言った。


「そうだな。

でも、無事が分かっただけでも良かった。


とりあえず行ってみよう。」


3人はラフの後を追った。



〜 坑道 深部 〜


「…どうなってんのこれ…」


ペティを含め3人は呆然とした。

坑道の奥には明るく広い空間が広がっていた。


天井が崩れているのか、青空が見え光が入ってくる。

光の差す地面には鉱山には無いはずの草花が咲き乱れ、壁には山の水が滝のように流れている場所もある。


近くにラフが生活しているであろう木の小屋があった。


「ここ、絶対魔界領域だよな…

魔王の領域は常に夜のはずなのに、なんでここだけ青空が…?」


ラストルは不思議そうにラフに聞いた。


「魔除けの山だと言ったろ?

頂上付近には魔王の力が及ばない。だから天井からは青空が見えるんだ。


世界中にここみたいな逸れた場所が何箇所かあったりするんだ。


ここでは草花も育つし、山の水は耐魔の鉱石の成分が滲み出て非常に綺麗なんだ。

食糧はよく蝙蝠(コウモリ)が入ってくるから、干して焼けばなかなかイケる。」


ラフはニカッと笑いながら、坑道の中の不思議な空間の説明をする。

ペティは蝙蝠を食べると聞いて少し引いている。


「アレはなんだい?」


ムンナが指差したのは日が差し込む草花の中心に刺さっている剣の(つか)ようなものだった。


「ああ、アレは…(くさび)だ。


山の守神(まもりがみ)みたいなもんだ。

この山を耐魔たらしめてるのがあれだ。


昔々、勇者が握っていたという6本の剣のうちの1つとかじゃないかね?」


刺さった剣を見下ろすラフは淡々と答えるが、ラストルは目を輝かせた。


「勇者の6本の剣!?

昔読んだ''勇者伝記(ゆうしゃでんき)"に書いてあった聖剣の一つじゃないか!


なんでこんなところに!?

ここはただの鉱山のはずだったのに。」


ラストルは不思議に思い聞いた。


「さぁなぁ…俺はここに来た時にはもうここに刺さってたんだ。


面白いんだぜあの剣。

刃の部分が触れないんだ。」


ラフはニコニコしながら3人を剣の刀身に触って見るように言った。

ムンナとペティは恐る恐る剣の刀身に触れる。


しかし、幻のように剣の刀身が透けて触る事が出来なかった。


「ほんとだ!確かにあるのに触れない!」


ムンナが驚く。


「なんの魔術がかかっているのかしら…

幻覚系…?それとも…」


ペティも刀身に自分の手を透かしながら分析していた。


「よし、俺も…」


ラストルが剣に手を触れた。

金属質の冷たく固い質感を指先に感じた。


剣に触れられてしまった。


「えぇッ!?」


ラストル以外の3人は非常に驚いた。

ラフはすぐにラストルの手を取り、目を見た。


「…少年。お前さんは、どっち(・・・)だ?」


しばらくラフは真剣な顔をしてラストルの瞳を見つめた。


「あの…どっちとは…??」


ラストルはどうして良いか分からず、ラフに見られていた。


「ふむ…なるほど素質(そしつ)の方か。」


ラフは納得した様子でラストルの手を離した。


「ラフさんどういう事だい?」


ムンナがラフに聞いた。

ペティもその質問が聞きたい様子で頷いた。


「俺が答えられる範囲で話してやろう。


とりあえず、そこの小屋に入れ。

茶でも出そう。」


ラフに続いて3人は小屋に入った。


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