表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王の終活」   作者: クロネコ
13/60

13話 報告と救出 (魔)

魔将アーミーとの決闘で勝利した魔王ルシフェウスは、その後も最後の魔王として演説を行っていた。

魔王城の側にある決闘場。

銀の槍をもつ魔将アーミーと、魔王ルシフェウスの戦いにより、破壊された石畳の修復を2体のカエルの姿の魔物達が行っていた。


「なぁゴライアス〜

この闘技場壊したの魔将のアーミー様と、魔王ルシフェウス様らしいゾ?


スゲェよナァ。

オラもこんな地味な能力じゃなかったら、決闘場がこんな風になるまで激しく戦ってみてぇゾ!


オロロロロ…」


灰色のカエルの魔物は口から灰色の液体を吐き出し、石畳の道の壊れた部分に流し込んだ。


「ピパピパ。


俺だってお前の吐瀉物(としゃぶつ)を綺麗にたいらにならす仕事なんかしてなければ、強い魔物になってただろうぜ?


こう見えて俺はジャンプ力には定評があるんだぜ?」


ピパピパより少し大きな緑の身体のカエルの魔物、ゴライアスは手の水かきを使い、灰色の液体を素早く綺麗に平らに整形していく。


「確かにオラよりお前なら強い魔物になれると思うゾ?ゴライアス。

強い魔物といえば、(いにしえ)の巨人兵って知ってるかナ?


大昔第五人魔大戦(だいごじんまたいせん)の時に魔王ザーガン様が使役していた巨人族ダ。


オロロロ…」


ピパピパは再び灰色の液体を吐き出す。


「おう!知ってるとも。

1体で100人の人間達を葬たって話はよく聞いたなぁ


でもアイツらはデカイだけで知性がないからな。暴れ出すと手がつけられない点ではタチが悪い。


今は確か東の果て…

魔将ヴォーラス様の管理のもとで2000体ほど眠りについてるとか…」


指を器用に使って、石畳の溝を作ったあとピパピパの吐瀉物を洗い流すために、ゴライアスは真水の入ったバケツに手を突っ込んだ。


「そうそう、その巨人達が最近目覚めたらしくてな?

ヴォーラス様も抑えるのに手を焼いてるらしいゾ。


ちょうど魔王様の演説があった頃だったから、それで目覚めたんじゃないかって、もっぱらの噂だゾ」


バケツで手を洗うゴライアスを眺めながら、ピパピパは言った。

整形して直した石畳はすでに固まっていた。


「そりゃあ、ないんじゃないか?

俺たちも大概だが、巨人は目の前にあるものを壊すまで止まらないくらい頭が悪いんだから。


でも、このまま魔王様を倒すであろう勇者を襲ってくれたら、面白い事になりそうだな!」


大きな口をニンマリとさせながらゴライアスは答えた。


「確かにナ!


世界の加護を受けた人間と、破壊しか能のない巨人。

バトルマニアなオラとしては、どっちがどんな風に勝つのか気になるゾ!」


ピパピパは興奮した様子で灰色の身体を揺さぶり、拳で殴るような仕草をした。


「さて、ピパピパ。


仕事も終わったし居酒屋蟲王(いざかやむしおう)炎魔(えんま)コオロギ串でも食べに行こうぜ」


バケツを持って、ゴライアスはペタペタと綺麗な石畳を歩き、ピパピパを誘った。


「いいネいいネ!激辛最高ダ!

オラも腹減ってたところだゾ!


オラは炙り(炙り)ミルキーワーム丼の特盛も食べたいゾ!」


ピパピパもお腹を鳴らしながら、楽しそうにゴライアスの緑の背中を追いかけた。


〜魔王城 司令塔〜


魔王ルシフェウスは今日も全国の魔族達に''蛮性の角笛(ばんせいのつのぶえ)''を使って、自らの運命についてを語った。


一通り話し終えたところで部屋を出ると、杖をついた魔導師グーシオンが待っていた。


「魔王様。お疲れ様でした。


実はいくつかご報告がありまして…」


グーシオンはいつものように丁寧にルシフェウスに言った。


「なんだグーシオン?話すが良い。」


「勇者が魔王城にやってくるであろう期日が割り出せました。」


グーシオンは頭を下げながらルシフェウスに話した。


「仕事が早いなグーシオン。

今から玉座の間に戻るが、歩きながら聞いても良いか?」


ルシフェウスは玉座の間の方向を指差し、グーシオンに尋ねた。


「もちろんでございます!

では…お供いたしますぞ。」


長い回廊を進みながらグーシオンは話し出した。


「勇者が魔王城に到着するのは今からおよそ17年後。


今は東の果ての村にて、なんの苦労もせずに育っている模様でございます。


ご存知の通り、魔将ヴォーラス殿の管轄区域ゆえにその土地で17年を過ごしたならば、最初に戦う事となるのはヴォーラス殿でしょう。


勇者の名前も判明しております。名前は…」


グーシオンが勇者の名前を言おうとした瞬間、ルシフェウスは声を遮るように止めた。


「待て、グーシオン。


名前までは聞かなくとも良い。

余を殺す勇者はおそらく最後(・・)に相応しい名前だろうからな。」


ルシフェウスはニヤリと笑った。


「あの…魔王様?

もしや、すでに勇者の名前を知っておいでなのでしょうか?」


グーシオンは不思議そうに尋ねる。


「さてな?


ただ、余の''超直感(ちょうちょっかん)''の権能で感じるのだ。


歴代の勇者達とは少し様子が違う。

何がどう違うとは説明し難いが…」


ルシフェウスは考え込みながら回廊をあるく。


「なるほど…

魔王様がお悩みになられるという事は、さぞかし癖の強い奴なのでしょうね…


隠密諜報部隊おんみつちょうほうぶたいには、引き続き情報を探らせております。


それと…あまりよろしくない報告も一つ。」


グーシオンの表情が曇る(くもる)

話している間に玉座の間に到着していた。


グーシオンは玉座の間の扉を開けた。

天井が映るほど丁寧に磨き上げられた鉛色の床が広がる。


ルシフェウスは玉座まで敷かれた朱殷色(しゅあんいろ)のカーペットを進み、低い階段を登り、玉座へと腰を下ろす。


「話すが良い。

そのよろしくない報告とやらを。」


頬杖をついて聞く体制のルシフェウスに、グーシオンは階段の下から報告をする。


「はい…実は、魔王様が演説をなされてから、既に何体かの魔物が人間達に投降したとの情報が入っております。


しかし、ある程度予想できていた事ですが、投降したあとは人間達からは奴隷のように扱われ、辱められ、回復力の高い魔物については食糧用として、定期的に身体の一部削ぎ落とされるような状態にあるとの事です。」


「…」


ルシフェウスは目を閉じて沈黙した。

グーシオンは少し間を置き、続ける。


「ひとまず、隠密諜報部隊には助けられる者達は救出したとの報告は受けております。

しかし、未だに助けられておらぬ者もおります。


やはり…

人間と真に解り合うのは無理なのではないでしょうか?」


グーシオンは不安な顔をしながら、ルシフェウスを見た。

ルシフェウスはしばらく目を閉じて考えた後、口を開いた。


「…そうか、救出した隠密諜報部隊に褒美を与えよ。


そして、まだ救出できていない者達のリストと場所を割り出してはくれまいか?」


「わかりました。すぐに手配いたします。


リストは分かりましたが…一体何をされるおつもりで?」


グーシオンは少し驚いた様子で、ルシフェウスを見た。

ルシフェウスは目を開く。

その目からは怒りが表れているのがわかる。


「救いに行く。


余は言ったのだ。

全ての魔の者を救うと!!


余の考える人間との和解までの道筋は既に見えているのだ。

ただ、その決定的なタイミングはまだ先だ。


それまでに不幸になる者は余が許さぬ。

必ず救ってみせる!」


ルシフェウスは少し口調が荒くなった。

鋭い眼光が更に鋭くなる。

グーシオンは深々と頭を下げてながら同意した。


「承知しました。魔王様。

すぐに準備いたします。


ちなみに、今わかっているところでは北部の地スノウスンという国で何体か捕まり、奴隷にされているとのことです。


北の地の戦士どもは、何故か全体的に強いため、救出に向かっている部隊も手をこまねいている状態との事です。」


グーシオンは伝えた。

ルシフェウスはそれを聞くと、ゆっくり玉座から立ち上がった。


「よし、では参るとしよう。」


「え!今からですか!?

魔王様自ら?」


玉座を降りる、ルシフェウスを目を丸くしながら見た。

ルシフェウスはそれを横目に、通り過ぎながらグーシオンに言った。


「魔王は意外に暇でな?

こういう時に自由に動けるところが王の特権というもの。


それに、余は魔王ぞ?

どこぞの戦士風情には負けぬ。」


魔王様はニヤリと笑いながら、光と共に転移(テレポ)の魔法を使い、その場は姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ