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外出へ

 次の日。

 病衣を身にまとった竜輝は個室である病室にある唯一の映像の液晶に傍らの端末で操作してチャンネルを切り替える。

 流れるどの番組でもやってる内容は共存によって変わった世界情勢に関する内容のものばかり。

 これもこの変わった世界の情事を少しでも知ろうという努力だがやはり納得できるものではない。

 でも、この地球のくだけたしゃべり方のようなものを吸収した。

「共存なんかできっ‥‥こねぇ」

 ちょっと、反復練習するようにそんな言葉を繰り返した。

 竜輝は最悪な気分を胸に抱きながら扉を見つめた。

 扉の窓枠には人影が差しこんでいる。

 なぜならば竜輝はしばらく、病院の一室での療養という名の監禁を命じられてしまうことになった。

 昨日の一件のせいで竜輝は危険人物とされてしまった。

 あちらとしては穏便に竜輝を扱いたいような話だが竜輝も共存なんかのために扱われるのはごめんである。

「いまさら許せるか」

 ふと、扉が開かれる。

 現れた人物は純粋な赤い長髪を肩に下げるようにゴムで結わえた髪型にモデルのような容姿にスタイルを持つ美女が来訪した。

 竜輝の幼馴染で死んだと思っていた愛華だった。

 彼女は昨日生きていたことを知ったしなぜ、生きたかという詳細も知られた。

 それもフィリアスにいる「共存」を望む派閥の援助のおかげである。

 いくら、彼女を助けたとしても竜輝のフィリアス人に対する好感度の変動はない。

「おはようなの」

「おはよう? もう昼だけどな」

 テレビに映ってる時刻は12時を指していた。

「ああ、そうなの。こんにちはなの。ずいぶんしゃべり方変わったなの」

「あ? いろいろとテレビで学んだ」

「そうなの」

 半笑いな彼女を見ながら竜輝はすっと目を細めて――

「それで、俺を拉致監禁してる人物が何用だ? 解放してくれんのか?」

「ええ、そうなの。」

「まあ、どうせしてくれ――なに?」

 ないんだろうと思っていた矢先に聞いた言葉に耳を疑う。

「なにを企んでる? 何かしてもおれの気持ちはかわらない」

 テレビ画面に向きなおりながらフィリアス人のレポーターらしき女性がこれまたフィリアス人に人間世界の良いところを聞くという番組が流れる。

「こいつらは心の中では腹黒い集団だ。俺をゴミのように扱ってきたんだ。人間を平然と殺す奴らだ」

「それは違うの。彼らも人間と同じでいろんな人がいるの。みんなが同一ってわけじゃないの」

「ふん、俺はそうは思わない。この映像に映ってるフィリアス人だってどうせ人間を見下してる。評価をしていたとしても心の中では見下してるさ」

「どうして信じられないなの?」

「どうして? わかんだろ! 愛華こそあんなひどいことさせられてどうして信用してんだ!」

「竜輝くん‥‥」

 竜輝は彼女が落ち込んでしまった様子を見て罪悪感を感じる。

 舌打ちしながら話を振り出しに戻した。

「‥‥それで何しに来たんだ?」

「そうだ、私と美香お姉ちゃんとあと、柚葉さんで一緒に外へ出かけようと思うの」

「あ? なんで? こんな変わり果てた地球の冒険なんか俺はしたくねえ」

「竜輝くんそれでも一緒に行こうなの!」

「絶対いやだね」

「だったら、力づくでも連れてくの」

「は? 力づく? 言っとくけど愛華俺はあっちで随分鍛えられ――」

 一瞬にして愛華は間合いを詰めていて竜輝の素手を取り手頸にかちゃりという音が響く。

 手錠だった。手錠の先は愛華の腕とつながれていた。

「さあ、一緒になの」

 無理にこっちで食い止めて動かなければいいと考えた。

 竜輝はその考えが誤りだったとすぐに後悔した。

 愛華は竜輝の知らぬ間に竜輝同様に成長していた。

 女とは思えない腕力で竜輝の肩が外れんばかりに腕を引っ張っていく。

 たまらず、竜輝は――

「わかった! いくっ、いくから腕をひっぱんなぁあああ!」

 容赦のない攻撃にさすがにたまらず音をあげた。

「くそぉ」

「私に逆らうからなの」

 ふと思った。

 竜輝がフィリアスに拉致される以前からこの地球は女のほうが力はすぐれていたなということに。

「はぁー、ちくしょうめ」

 病室を出て、出入り口にいた監視の人物がぎょっとしたまなざしでこちらを見つめた。

 その視線はあまりにも痛い。

「行く前に竜輝は着替えなの」

「へ?」

 不意に話の話題を振られ竜輝は素っ頓狂な返事をする。

「着替え? 俺はこの地球での今のサイズの衣服なんか持っちゃいねえぞ。着替えなんてそもそもこの状態でどうするんだよ?」

「ん? 私も着替えるから一緒に着替えればいいの」

 一瞬思考が停止した。

 幼馴染の愛華とは竜輝の記憶が正しければ同年齢、つまり17歳なのである。

 その17歳のもう性的知識やら男女間というものを理解した男女が一緒に着替えは間違いが起こるリスクが十分にあるだろう。

 なにより、いけない気がする。

 もちろん、竜輝は手を出そうなどとは考えてはいなかったがそれは背徳感に溺れる要因があったので全力で否定した。

「冗談じゃねえ。着替えなんかいい! このままで出かけ――」

「いいから、一緒に来るの。外の世界を知るためにもまずは身だしなみからなの」

「やめろぉおおおお!」

 竜輝はそのままどこかへ昔のように愛華に振り回されるがごとく引っ張られていくのであった。

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