秘密と暗躍
ハツハルト死亡の伝達を久遠時楓に柚葉が伝達して数分後には久遠時楓が率いる共存同盟軍が育成魔導連盟施設に到着し、生徒たちが何事かというおように見物騒ぎがひき起こった。
予想通りの事態だったことに対して教官たちは直ちに生徒たちを別室で待機させる。
施設に残ったのは最初の新学期当日と同じように教官数名に共存連盟軍関係者が立ち会う形となる。
事件現場の発端たる第1グラウンドにて現場操作が事細かに行われる。
その中で竜輝は剣幕を寄せた表情で楓ににじり寄っていた。
「話を聞かせろ。あんたはいろんなことをまだ隠してんだろ」
数分前にハルツハルトがしゃべっていた内容を明らかに久遠時楓は知ってると思い質問をしてみた。
彼女は完全に無視を決め現場を必死で動かす。
そんな彼女の態度は腹にくるものがあり胸倉を女だとかかまわずにつかむ。
「いい加減にしろ! どうして敵がここに表れる! 最初は理由すらどうでもよかったさ。俺は復讐が出来さえすればそれでよかった。だけど、ここには無害な人たちが大勢いる。そんな奴をみすみす見殺しになんかできない。だから、その理由を教えてもらわないと対処だって出来ねえ。奴らの目的は別に生徒ではないことは春津の行動で分かった。だったらなんだ! 生徒を危険な目にあわせる要因はなんだ!」
「ずいぶん、性格が変わりましたわね」
「っ!」
「最初のころは異世界人との共存なんか反対していましたのに」
彼女の詩人的に語る言葉に次第に力む腕の力はしぼんでいき彼女を突き飛ばす。
「久遠時軍事顧問、私たちも上の命令には何であろうと絶対でしたが今回ばかりは教えてください。やはり、敵の発言を聞いたからには気になります」
「そうなの」
美香、愛華、そして最後に柚葉も首を縦に振って真剣な目で彼女の答えを待っている。
ハルツハルトは言っていた。
『例の装置』とそれはここに何か隠してあるというような物言いであり、侵略派はそれを探すためにこの施設に潜入してるような感じであった。
ハルツハルトもまたその装置を探していたようだったのと何か情報を探ってたのだろう。
だが、自らの戦闘意欲が招いた独断専行が自らの上司の怒りを買い鏑木教官に殺された。
まず、この『例の装置』に関して竜輝はある程度予想は付いていた。
それを久遠時楓は何かを知っているということも。
「装置ってのはなんだ? 教えろ」
「はぁ、いいですわ。お話をしますわ。九条責任者どこか、空き教室を借りられますかしら?」
「ちょっと、まってくださぁい、ああ、一つありますわ」
端末を操作した九条責任者が女子棟2階の一室の許可を出す。
「それはよろしいのだけれど、私も同席させてくださらなぁい? 今回のでこちらもできる限りの対応をしなくてはいけないと存じますわぁ。それならこの施設の責任者である私もその情報は聞く義務があるんじゃないかしらぁ?」
そう、この装置の件については九条責任者は知らされてはいないようだった。
なんでも、この施設責任者になった当時特殊な政府秘匿物がこの施設内にあるということは教えてもらえたらしいのだがどうにもどこにその秘匿物があるのかは伝えられていなかったようだった。
(九条責任者が装置の存在を知らないとさっき言ってたのは本当なのか)
九条責任者には楓に問い詰める前に問い詰めを行っていたがその時の彼女は装置というものが施設にあることを教えてくれていた。
だからこそ、その装置の存在を楓問い詰める形となっていた。
「では、九条責任者も来てくださって構いませんわ。上も許可を出しますでしょう。それと、彼も同席いたしますわ」
そう言って楓の背後から現れたのは大柄な巨人。
大きな鬣に体表を体毛で覆われている。まさに顔はライオンのよう。
そう、フィリアス人の獣人族。
彼はなんだか貴重なスーツに着飾って何ともふてぶてしく立っておりこちらが圧倒される。
(ネメアー族のフィリアス人? 何もんだ?)
竜輝らの注目するまなざしを一身に浴びて男はふてぶてしい声色で名乗った。
「共存派、フィリアス人代表。アンドロフ・グリアスだ。よろしくだ」
「グリアス‥‥グリアスってあの小国の国王‥‥」
竜輝は失礼も何も考えず独り言のように口から洩れてしまう。それを強く脳天にチョップをくらわし柚葉が「ちょっとこの馬鹿」と指摘する。
「わるい」
「いいんだ。君が噂の少年だか。聞いてるだ。我々も援助できずすまなんだ。侵略派の王国との戦争で大変だったんだ。助けることができなかったんだ。済まなかったんだ」
「あ、いや。その辺はだいぶ良く理解した。フィリアスにいたからこそ戦争の重さってのは十分わかるしそれに‥‥人それぞれの都合ってのはもう割り切った」
遠い眼をして笑みを浮かべた。
「何かっこつけてんのよ。馬鹿」
「馬鹿とはなんだよ!」
「馬鹿だからバカって言ったのよ」
「俺はこれでもここで教官やってんだぞ。馬鹿じゃねえ」
「教官と馬鹿は関係ないのよ」
子供のような言いあいを繰り広げれば次第に周りの視線は二人に集中していく。当人たちは全く気付きもせずに言い合いをののしりあいを続けていく。
「まったく、仲良しなの」
「「なかよく(ない)(ねえ)」」
愛華の一言で二人の言い合いが終わると楓が手をたたき。
「では、ここではあれですし、さっさといきますわよ。ほか部隊は引き続き捜査継続ですわよ。お願いしますわね」
「工藤教官、ここの調査を担当願いますねぇ」
それぞれのトップが自分の部下に指示を送りつけて女子等2階の空き教室へいざ向かう。
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育成魔導連盟教育施設の屋上の物陰には銀髪を風になびかせる一人の龍族のフィリアス人がいた。
イーリス・鏑木・アンネルゼ、この育成魔導連盟教育施設では教官として潜入していたフィリアス人の侵略派の一人である彼女。
彼女は腹部の傷をさすりながら龍族の能力たる千里眼で第グラウンドの様子をうかがう。
「なるほど」
どういう計略で行くのかがさっそく読めてきた鏑木はすぐにその場から移動をする。
裏庭に降り立った。
裏庭はまっさらな砂場と生い茂る木々がある程度のひっそりとした木陰場所。
秘密事を行うならまさにもってこいの場所である。
その木々の合間を縫ったところに数十人のローブを被った男女が待ち構えていた。
鏑木が降り立った目的は数人の侵略派メンバーとの合流だった。
その内の3人は施設内にもともと潜入済みの人物たち。
この者たちのおかげで内部に混乱を陥れ政府をパニックに陥れることができた。
それが鏑木の偽造殺人。
「偽造殺人の次はどうするのだ? まだあの装置の所在はつかめてないんだろう? 春津のおかげで本来の計画もめちゃくちゃだぞ」
数人の仲間のうち、きれいなハスキーボイスを出す施設内潜入班メンバーの一人が愚痴をこぼす。
「知ってる。けど、このまま、いく」
「ちっ、私が起こした殺しが無駄ではないか。本来なら、あれで教育施設では犯人探しで内部の調査員が動けなくし、私が犯人となって捕まる手はずだ。そのあとに捕まった私は政府と司法取引してわざとこちらの情報を流しあちらの情報も逐次リークするという作戦だった」
「げひゃひゃ、でも春津の柵のほうがもっと手っ取り早いぜ。あいつの作戦が俺は好きだった」
ハルツハルトの部下であった男のうちの一人でありまたきれいなハスキーボイスの彼女と同じ潜入班メンバーたる彼は腹を抱えて調子を狂わせるかのような厭味ったらしく笑い声をあげた。
さすがの彼女もカチンときて腰から一振りの刀を取り出し彼のフードを切りさいた。出てきた素顔は目元にすごいクマがあり、病弱そうな顔立ちとこけたほほ。しゃがれた口元。まるで、10代に似つかわしくない顔立ちをした少年。
「なにしやがるぅ!」
「うざいんだ。今すぐその首を飛ばすぞ」
「落ち着く。これからの作戦を言う。まず、マード、橘川。あなたたち二人はあの第1グラウンドメンバーに接近しフィリアス人トップに毒を植え付けなさい。ただ、接近するタイミングは装置のありかがわかったとき」
「ラジャーだひゃ」
「うっす」
「そして、鈴、あなたは何食わぬ顔で彼らを空き教室前で偶然出くわした感じを装い、わざと装置の話を聞いてしまったてきな感じを出して。ボスが廊下を歩いてるときに話題を出させるはず」
「わかった」
「他メンバーは私と一緒に施設の荒湯売る個所に時限爆破装置を取り付け、ボスの逃げ道を確保する。では、散会」
そうして、鏑木の主導のもと暗躍する侵略派の新たな作戦が始動する。
「鈴、どうした?」
「鏑木、すまない。腹を切ったとき、さすがの龍族のアンデットでも痛みはあるだろう?」
「気にすることはない。鈴はそのおかげで私は外部で政府を混乱させる作戦で上役たちの殺人を犯してきた。そして、施設内部の情報を鈴が集めた。あなたは特に活躍してる」
「鏑木。まったく、春津せいですべてが台無しだ」
「がんばりましょう。すべてはジョクーカ皇国のために」
「ジョクーカ皇国のために」
そして、鈴は去っていき蒼い髪を風になびかせ疾走していった。




