楓の訪問
銀行の爆破事件から数時間後。
結局夕飯という時間帯などと呼べる時間からかけ離れた時間に夜食をとる形となってしまう。
時刻は12時。
事情聴取の長引きが原因で帰ってこれたのも1時間ほど前であった。
3人は爆破事件のせいで買い込んだ食材はだめになったので近くのコンビニ弁当で済ますという健康にも悪く暗い形の夜食となった。
沈黙が続けば続くほどに空気は淀み、沈み、さらに深く闇に心は汚染されているような感覚が芽生えていく。
「ん?」
ドアチャイムが鳴り、柚葉が席を立とうとしたが竜輝が手で制して、自分が率先して出向かうというように席を立ち、玄関へ向かう。
さすがに、この夜間の時間の訪問者は明らかなあやしさが際立っているのでドアスコープから訪問者の確認をする。
向かいに見えたのはまるで夜闇に溶け込む一匹の獣を思わせるかのようなダークグレースーツを着飾ってる美麗な女人が待っていた。ほっと安堵の息を下ろし、だチェーンを外して扉を開ける。
「久遠時楓さん、今夜分にどうしたんすか?」
「あなたたちの様子を見に来たんですわよ。大変な目にあったようですわね」
「ええ、まあ」
竜輝はさっそく、彼女をあげ奥のリビングまで案内をする。
彼女を連れて現れた竜輝を見てリビングにいた3人もうすうす感づいてたのかさほど衝撃を受けた感じはせずとも動揺しながら包帯を巻かれた傷を隠すように体を抱く姿勢をとった。
「あなた方の失敗を咎めにきたわけではありませんわ。謝罪をするのはワタクシのほうですわ。申し訳ありませんでしたわ」
「そ、そんな」
「軍事顧問は悪くありません」
「私たちの力不足なの」
楓が頭をたらすと3人は自らの力量不足を促して両者が自分のミスを反省するというような一種の反省会ムードになってしまう。
いや、もともとそのようなムードでありはしたのでさらに空気が悪くなったといえた。
「竜輝さん、あんたには感謝いたしますわ。どうやら、相手を撤退まで追い込ませたのはあなたのようですわね」
「撤退? ちげえよ。ありゃあ逃がしたようなもんさ」
奥歯をかみしめてあの時の記憶をよみがえらす。
あの男の冷めた目月が頭から離れず、憎く悔しいという感情の波が体中を支配していき表情に出始める。
一歩も動けなかったといえるあの男の前での自分の不甲斐無さは負けに等しい。
「警察から、事情は伝えられていますわ。財務大臣は爆発で死亡しましたわ」
「やはりそうなのね」
「悔しいですね」
「これで、金銭的な状況でもトラブルが起こるなの」
財務大臣が死んだことで警察にいた時でも警察のほうがいろんな金銭面のトラブルが起こったらしくあわただしくあったことを竜輝も見ていた。
財務大臣、つまり国の財政関係のトップの死は日本国の、否この共存国にはとても痛い状況となるのであろう。
特にありとあらゆる場所で財務大臣の認証などが必要となる事柄が対応できず一時騒動パニックが未だに生まれてると楓は語る。
「財務大臣の認証移行がなされない状況での死亡でしたから何もかもが停滞状態になりますわ。近年のデジタル文明では手痛いことをされましたわ」
特に一部企業の金の流通がストップもしたとの話である。
それにより、デモが生まれ始める恐れがあるとか。
特にあの銀行の利用者の金が全額吹き飛んだことで多額の賠償請求が政府になされてる状況である。
政府はまさに大打撃を受けて動けないという。
「動けないってどういうことよ!」
柚葉も敬語を忘れて怒鳴り散らし、楓へ迫った。
楓も目をそらし、「申し訳ないですわ」の一言を返すだけである。
「私たちの任務はどうなるのよ!」
「そのまま継続をしてもらって構いませんわ。でも、上からの援助は得られませんわ。あと、こちら、夕刻の爆破事件の監視映像ですわ」
楓の言葉を聞いて柚葉は一歩距離を置きつつ気持ちを静めた。
楓は端末操作で空間ディスプレイ上で指をスライドさせる。
4人の端末が震え、楓からデータが届いたことを知らせるロゴマークが画面についた。それぞれ、その映像を再生し流し見を行う。
ひどい、残虐性が見て取れる映像がくっきりと映っていた。ひとが火だるまになっていて、鉄筋に押しつぶされ、がれきに押しつぶされ、親とはぐれてしまった子供に襲いかかる火の海。まさにあの場にいたからこそわかるがあそこは地獄であった。
「爆破事件の犯人は侵略派とみて間違いないですわ。政府の見解も警察もそうと断定いたしましたわ。特に竜輝あなたの証言で育成魔道共存連盟教育施設の男子棟の監視を強化するようにとの伝達がきましたわ」
竜輝はなんら不思議には思わない伝達に「だろうな」と軽く受け答えをした。
あの時見た「ハルツ」と呼ばれていた男の着衣は明らかに育成魔道共存連盟教育施設の制服。あの動きもすべては熟練なる動きからなるものであったことはわかる。
「大丈夫だ。あすいや‥‥もう、今日になるのか‥‥‥には男子棟で教官を受け持ってるから「ハルツ」と呼ばれてた男を探してみる」
「その男を捕まえればトップもわかりますわ。だれであるか」
「そうだろうな」
竜輝は手元に流れる残酷な爆破映像を見ながら目を伏せて一大決心をする。
(絶対、見つけてやるさ。ハルツを)




