新たな居住地
東京某都市内にある住宅街。
いろんな屋根の形をした一戸建ての家が隣接し、並列する住宅地である。
中にはアパートやマンションも入り混じっており特にマンションは高層マンションで、およそうん千万するだろうというほどの高級マンションであることが予想ができる外観。
この住宅地は何よりも驚くのはさほど、例の病院から離れてはいないことである。歩いて30分くらいである。
電車を使うほどの距離でもなく使うとすればバス。
それでも歩いて来れる距離なのでさほどといえる。
「ここよ」
「ここ?」
柚葉たちに連れられてやってきた新たな居住場所はそれはもうくそ高いマンション。
コンクリート平米の三角型の地上30階くらい建ての高層マンション。外には隣接する駐車場も完備されており、出入り口は電子ロック式。
まさに、どこぞの富豪家が好み住んでそうなマンションである。
一般的なマンションと変わらない自動ドア式の出入り口にはいるとさらに自動ドアがある。こちらは知ってるとおりロックがかかってるので仲の人物の許可がないと開くことはない。
「私の番号を入れてっと」
どうやら、ここにはもう住んでるという柚葉。美香や愛華も住んでるようでなんでも政府管理がされた社宅なのだという。
柚葉がロック解除の番号を入力し扉が開く。
「さあ、行きましょう」
出入り口には警備の人間が厳かな態度でにらみつける。
おもわずびくつきながら目を合わせないように柚葉たちの後をついていく。
エレベーターホールで立ち止まり、エレベーターが来るのを待つ。会談ももちろんあるのだが20階だというので階段で行くのはさすがに厳しく避けたい。
ポンという少しかわいらしい感じの音がなり、エレベーターの扉が開き乗り込む。
ここまでだれも一言も発することはせずエレベーターは地上20階へ向け上っていく。
到着音がなり扉が開き先に美香が降りてつづけて柚葉と愛華、最後に竜輝が降りる。
「部屋番号は2020だからここね」
マンションの廊下をまっすぐすすんだ突き当たりの一角。
代替このマンションの三角型の角付近に当たる部屋であろう一室の扉を開きぞろぞろと入っていく。
中には見知らぬ箱が3つほど玄関前に放置されている。
「あ、もう荷物届いてるのね」
「荷物?」
「あなたが今後使うであろう着替えと道具よ」
「そんなものまで政府は準備してくれてるのか?」
「そんなものって‥‥あたりまえじゃないの。政府はそこまでひどくないわよ」
「十分ひでえと思うけどな。ひとさまのことを数十年もほっといた連中だしな」
「それは‥‥」
沈黙する空気が流れて、一瞬にしてどんよりした面持ちに変わってしまう。
そんな空気をかき消すように一拍の音が響く。
二人の間から延びた手は小柄で小さな愛華の両手。猫だましというやつであろう挙動を行った彼女はいつものにこやかな笑顔で言った。
「さあ、どんよりしてても仕方ないの。さっさと、部屋の中入ろうなの」
「そうね」
「そうですね」
竜輝もうなづきながら柚葉を先頭に部屋の奥へ。
入ればリビングとダイニングキッチンが隣接した大きめなフロントルーム。
大きめの窓が目の前にみえ、そこからは東京の街が一望できる。
左側リビングにはしっかりとしたソファとテレビがあらかじめ備え付けがされている。
それに椅子やガラステーブル、カフェデスクが設置済みなのである。
これには舌を巻く。キッチンも一式そろえてあり、ダイニングルームには食卓用のいすと机があり、客が来ても大丈夫なように万全な対策で複数のいすがある。
「すげえな。社宅っていうのはマジっぽいな。でも、こんなに一式をそろえてるのは驚いた」
「政府はそこまで今のあなたを邪険にしないわよ。しっかりと活動してくれるようにそれなりの報酬を支払うわ。あと、これが政府からの生活支給金」
柚葉は端末を操作し空間ディスプレイを移す。
そこに譲渡申請なる言葉がうかんでおり、暗証番号を四ケタ入力されたロゴマークが映って数秒後、竜輝の持つ政府からもらいうけた端末が微振動を起こす。
「開いてみなさいよ」
「えっと」
「はぁー」
乱雑に竜輝の手元から端末を奪い取り、ぴぴっと素早く操作をすると空間ディスプレイに料金残高表示が現れる。
「二百万っ!?」
「そう、もともとは入ってた百万に今日の分を上乗せして二百万。あんたさここに来るまでずっと病院食で済ましてたようだけど今日からは自給自足だから」
「自給自足」
それはフィリアスにいたころにさんざん経験させられてるのでなんら問題じゃないのだがあまりにもいい思い出ではないので気分が落ち沈む。
「そんない心配な顔市内で平気ですよ。姉である私も同伴して一緒に買い物に行きますから」
「あ、私も一緒に行くの」
「二人とも甘やかしてはだめよ! 竜輝は少しでもこの世界に順応するためにも一人でできるように――」
「ままあ、そう硬いことをいうものではないです雪。まだ、リュウちゃんも来たばかりですしはじめてのこちらでの自給自足ですし、変わり果てた買い物方式もまだ見て覚えただけなのですからここはサポートということで同伴としてもいいでしょう?」
などと言いくるめて柚葉はダンマリとなりながら大きく息を吐いて「わかったわよ」という。
「じゃあ、きまりですね。美香お姉ちゃんがしっかりとこの世界のモノ買い方をサポートしてあげます。まあ、一度見てるからできるでしょうけど」
「いや、たすかるよ。一度見ただけじゃああいまいな部分も多いものだし」
「では、そろそろ夕食の時間帯ですから早速買い出しに行きましょう。部屋のことについては今後はここだということも理解したようですしね」
「ああ、けど本当にこんな部屋使っていいのか?」
「馬鹿。いいのよ。あんたの居住場所なんだから。ちなみに私は二〇一九、美香が二〇一八、愛華は二〇二一だからなんかあれば呼びなさいよ」
「おう」
なんだかんだでいえば彼女も心遣いをしてくれる。
そんな雪を見て愛華がに八着ながら余計なひと言を漏らす。
「ツンデレなの」
「っ!」
ゴツンという鈍い音がこの広い部屋に響いた。




