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報告会議

連れてかれてきたのは屋上。

フェンスに囲まれた広い庭のような空間。

ベンチが数個設置された屋上のベンチへそっと腰掛け隣り合わせに座り竜輝は痛む耳を抑える。

「あんたって本当に変態ね」

「だから、何もしてねえっての」

「じゃあ、どうして幾鈴教官が泣きながらあんたの両手なんて握ってたのよ?」

「それは感謝をしてたからで――ってどうしておまえがそんなに気にするんだよ」

「それはあんたの教官でもあるからよ」

「さいですか」

 面倒なと思いながら顔をゆがませ、うっとうしげな表情で空を見上げる。

 上空に飛行機雲が伸び、夕焼け空に一つの線を形作る。

 そのきれいな空を見つめながら竜輝は本当に自分の平和的な生活を送ってると実感がしてくる。夕焼けの時間帯はあの7歳のころからはひどい仕打ちの修練の時間だったことが頭の中に鮮明に映りゆく。

「ちょっと、私そこまできつく言ってないでしょ? 何泣いてんのよ」

「え」

 言われて気づけばほほを伝う涙のしずく。

 どうやら、感動に無意識な涙を流してしまい自らも動揺をする。

「あはは、目にゴミでも入ったか」

「はぁ? あんたちょっと驚かせないでよ!」

 乱暴者の彼女のひじ打ちが脇腹へ食い込み息苦しくなりつつうずくまる。

「ぐぉ‥‥」

「――て、こんなことしてる場合じゃないわ。愛華と美香は遅いわね」

「なんかあんのか?」

「あるのかじゃなくってあるのよ」

「あ?」

 彼女の答えと同時に屋上の出入り口が開き、2名の美女が入ってくる。

「お待たせしました」

「待たせたの」

「早く報告を願います」

 愛華と美香の登場に何となく察しがついた。

 どうやら、端末デバイスを取り出したところを見るにおいて今日の監視結果をこの4人で確認をしようという名目なのだろう。

「まず私からですね。本日1日中、大学部2年の蓮杖鈴さんと見回りを行っていましたが何もなかったです」

「私も大学部1年生側でも不穏な感じはなかったの」

 二人が結果報告をし、柚葉が取り出したデバイスに詳細に何かを打ち込んでいく。どうやら、報告書のようである。

「高等部も何もなかったわね。運勢竜輝、あんたのほうは? 教官で不穏な奴はいた?」

「いいや、そんな奴はいなかった」

「そう、なんか逆に不気味ね。初日にあれだけのことがあったにもかかわらずこの施設は皆一言も事件の話題は出さないし、それ以前に何も起こらないってのが不思議よ」

 彼女は顎先に手をおいてまるで、どこぞの本で読んだ名探偵の仕草化のような思考姿。おもわず笑ってしまいかねない。

「でも、その話題に関してはここが軍事学校だからみんなそういうのなれてるって工藤善次郎教官が言ってたぞ」

「え」

 柚葉が眼を大きく見開き、共学に満ちた感じで両肩に手を置き竜輝をゆすぶる。

「どういう意味よそれ!」

「いや、事件など多々目にすることはあるから大した話題性はないみたいなことを言ってたって話だよ」

「工藤善次郎、たしか元警察官である人間の男性教官よね」

「まさか、あの人疑ってるのかっ!?」

「ええ」

「いやいや、あの人はそんなことするような人じゃない」

「ひとは見た目で判断できないわよ」

「かもしれねぇけど」

 彼女は疑うようにして端末を操作し、工藤善次郎と書かれたファイルを開きそこに記載された詳細なデータを読んでいる。

「でもさ、軍事学校だからってのは大いにありうるだろう」

「そうなの。だって、この施設はどうにも時折政府からの特殊軍事任務を請け負うこともしばしあるという話なの」

「‥‥‥‥」

 柚葉は愛華の助言を聞くとすっかりと黙り込んでしまう。

 どの人物を疑ってもおかしくない状況ではあるが工藤善次郎、彼が侵略派であることや鏑木教官を殺した線はかなり薄いと思われる。

 そもそも――

「たしか、柚葉も言ってたじゃないか。今回の犯人は生徒にいる可能性が高言って。教官である工藤さんは容疑者から外れる。それに侵略派ってのはフィリアス人だろう。なら、人間である彼ではない」

「柚葉ちゃん、リュウくんのいうとおりです。工藤教官は絶対にこの事件にかかわりはないでしょう。彼は私たちの存在を知った時の驚きようはまさにそのものです。演技という感じではなかったですよ」

「わかったわ。確かに考えすぎね。各自、明日からはまた慎重に動きましょう。明日は竜輝は男子棟の監視を任せたわよ」

「ああ、そういえば、幾鈴教官にも頼まれたんだ。教官やってくれって。だからちょうどいいよ」

「よろしいわ。それと、上からの報告でどうにも昨日未明に神奈川県の某市内で爆破事件があったそうなの。しかも、その犯人が学生で上はどうにもその犯人はこの施設の生徒じゃないかって疑ってるそうよ。どうにも爆破事件の件は侵略派と因果関係があるとかって話よ」

「爆破事件ですか」

「厄介なことなの」

 3人は平然と口に漏らしてるが厄介どころの騒ぎではない。

 テロの容疑者がこの施設にいるということはいつここも爆破されてもおかしくない死と隣り合わせいなってる状況であるの過酷になっているということだ。

「3人とものんきにそんなこと言ってるけど俺らも危ないってことだろ? そう急に探さないと俺らも殺されるんだろ。だったら悠長にせず早めに見つけないと」

「そうやって、あわてたって奨がいないってわからないの馬鹿。敵は誰だかわからない状態だしこっちだって素性を隠して行動をしてるつもりよ。今は慎重に探り合ってるほうが適作。過剰にこっちが動いたって相手に刺激を与えるだけよ」

「そうなったら、相手も攻撃をしてほかの生徒を巻き込みかねないです」

「っ」

 なるほどといわざる得ない言葉で納得してもやはり心にはざわつきは生まれる。

 本当に安全な工作はほかにないのであろうか。

「あわてるのもわかるけど今はゆっくりと慎重に相手をあぶり出すのよ。さて、今日の報告会議は終わりよ。そうだ、竜輝あなたは今日は病室に帰宅しないで」

「は?」

 突如言われた帰宅拒否の言にさすがに度肝を抜かれる。

 この年でホームレスを強いられるとはなどと思えば。

「今、ホームレスかよこの年でとか思ったでしょ」

「なんだよ、そういうことだろ? お前に与えられる部屋はもうねえんだってことだろ?」

「政府はそこまでひどくないわよ馬鹿。ちゃんとした部屋をあんたに貸し与えることができる場所ができたのよ」

「それって――」

 つまりは家ということを示唆してるのであろうことは明白。

「今からその場所に一緒に帰宅するわよ」

「はい?」

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