第十二章 支配者を恐れさせた力
### 第十二章 支配者を恐れさせた力
兵士たち:「な……なんだ、この力は!?」
戦場に、しばしの沈黙が訪れた。
数十人もの兵士たちが、青ざめた顔でロキを見つめていた。目の前で起きた出来事を、誰一人として理解できずにいたのだ。何人かは後ずさりし、ほかの者たちは震える手で武器を握りしめていた。
雷撃が叩きつけられた地面からは煙が立ち上り、青白い火花が空中に散ったあと、次第に消えていった。
広場の中央に立つロキは、軽く息を吐き、それから兵士たちを見上げた。
ロキ:「どうした? なんで止まってるんだ? さっきまで、俺を捕まえたくて仕方なかったんじゃないのか!?」
兵士の一人:「お、お前……化け物め! 仲間たちに何をした!?」
ロキ:「別に変なことはしてないぞ! あいつらが襲ってきたから、身を守っただけだ!」
兵士の一人:「これが身を守っただけだと!? 一撃であいつらを空中に吹き飛ばしたんだぞ!」
ロキは、にっと大きく笑った。
ロキ:「だったら、俺の邪魔をするなよ!」
一方その頃、リンゴはロキに気を取られた隙を突き、包囲しようとする兵士たちと戦っていた。
一人の兵士が剣を振り上げ、頭上から斬りかかる。
キィィィン!
リンゴは剣でその一撃を受け止めると、手首を返して相手の刃を横へ弾き飛ばした。
リンゴ:「いつまで突っ立って見てるつもりだ? 戦いたいなら、俺が相手になってやる!」
別の兵士が右側から突進し、さらにもう一人が背後から襲いかかる。
リンゴは素早く身をかがめ、頭上を通り過ぎる剣をかわすと、振り返りざまに後ろの兵士の膝を蹴りつけ、体勢を崩させた。
男が地面に倒れるよりも早く、リンゴは肩で相手を突き飛ばした。その兵士は仲間の一人に激突した。
リンゴ:「人数だけは多いくせに、仲間同士の連携すらできないのか!」
兵士の一人:「黙れ! もう勝ったつもりになるな!」
兵士は槍を構え、リンゴに向かって突進した。
リンゴは一歩後退してから、槍の軌道を外れるように体をひねり、両手で柄をつかんだ。
そして一瞬の動きで槍を下へ押さえつけると、拳を相手の胸に叩き込み、後退させた。
しかし、体勢を立て直す間もなく、三本の剣が同時にリンゴへ迫った。
リンゴ:「ちっ!」
最初の一撃を剣で受け止め、二撃目をかわすために体を傾ける。三撃目は肩すれすれを通り過ぎ、危うく服を切り裂くところだった。
リンゴは後方へ跳び、素早く息を整えた。
リンゴ(心の中):「こいつら、攻撃の手を緩めない……このままじゃ、あの男のところへたどり着く前に体力を使い果たしてしまう。」
彼は兵士たちの先頭に立つ男へ視線を向けた。
領主は落ち着き払った様子で戦いを眺めていた。まるで、目の前で起きていることなど自分には関係ないと言わんばかりだった。
リンゴ:「あの男……ただ俺たちを見ているだけだ。まったく焦っている様子がない。」
リンゴは剣の柄を強く握りしめた。
リンゴ(心の中):「あいつには、何か隠しているものがあるに違いない。」
その頃、兵士の一人が剣を両手で握り、警戒しながらロキへ近づいてきた。
兵士:「動くな!」
ロキは不思議そうに相手を見た。
ロキ:「なんでだ? 何か大事な話でもあるのか?」
兵士:「お前を捕まえて、自分が俺たちより強いわけじゃないと思い知らせてやる!」
ロキ:「へえ? 先に向かってきた連中から、何も学んでいないみたいだな!」
兵士は叫び声を上げ、ロキの肩を狙って剣を振り下ろした。
ロキは横へ移動して刃をかわすと、相手の手首をつかみ、そのまま押しのけた。
兵士:「なにっ!?」
ロキ:「遅すぎるぞ!」
ロキが拳を持ち上げると、指先の周囲に青白い火花が現れ始めた。
バチバチバチッ!
兵士は慌てて後ずさりし、目を見開いた。
兵士:「や、やめろ……近づくな!」
ロキ:「あれ? さっきまで俺を捕まえたがっていたのは誰だったかな!?」
しかし、ロキが攻撃を放とうとしたその瞬間、背後から鋭い声が響いた。
別の兵士:「今だ!」
二人の兵士が左右から同時に飛びかかってきた。
ロキは素早く振り返り、最初の剣をかわしたものの、二本目の剣を防ぐために腕を上げざるを得なかった。
キィィィン!
刃が腕当てに取り付けられた金属部品にぶつかり、小さな火花が飛び散った。
ロキ:「おっと! 危うく当たるところだった!」
彼は正面の兵士を蹴り飛ばし、次の斬撃をかがんでかわすと、相手の脚をつかんで地面に引き倒した。
だが、その背後にはさらに三人の兵士が現れた。
兵士の一人:「あの力を使わせるな! 全員で攻めろ!」
ロキ:「まったく! お前らは数に頼らなきゃ戦えないのか!?」
四方から兵士たちがロキに迫る。
ロキは両腕を上げ、全身の周囲に雷を集め始めた。
バチバチバチッ!
ロキ:「よし! そこまで言うなら、俺の力を見せてやる!」
しかし、攻撃を放とうとした瞬間、彼は自分の力の源である核から、突然、強烈な熱が発せられるのを感じた。
ロキ:「あ……!?」
その笑顔が、一瞬だけ消えた。
熱は急速に高まり、不快な痛みが体中に広がっていく。ロキは、核の力を連続して使い続けてはいけないと警告されたことを思い出した。
ロキ(心の中):「こんなときに……! 力を使いすぎた! 核が冷えるまで、少しの間、使用を控えないと!」
拳の周囲を包んでいた雷が、徐々に消えていった。
兵士たちは、すぐにその変化に気づいた。
兵士の一人:「見ろ! 火花が消えたぞ!」
別の兵士:「疲れてきたんだ! 今がチャンスだ!」
兵士たちは一斉にロキへ突進した。
ロキ:「なにっ!? ちょ、ちょっと待て!」
最初の攻撃を両腕で防ぎ、二撃目を避けるために素早く後退する。しかし、三人目の兵士に肩から体当たりされ、バランスを崩してしまった。
ロキはよろめき、片膝を地面についた。
兵士:「ようやく捕まえたぞ!」
男は剣を振り上げ、ロキに斬りかかろうとした。
だが、剣が振り下ろされる直前、鋭い音が空気を切り裂いた。
キィィィン!
リンゴの剣が、間一髪でその一撃を受け止めた。
リンゴ:「俺の仲間に手を出すな!」
ロキ:「リンゴ!」
リンゴは兵士の剣を横へ弾き、剣の柄で相手の腹部を強打して後退させた。
リンゴ:「大丈夫か!?」
ロキは素早く立ち上がった。
ロキ:「ああ、大丈夫だ! でも、核が熱くなってきてる。だから、雷を使い続けることができないんだ!」
リンゴ:「なら、今は使うな! お前が力を取り戻すまで、こいつらは俺に任せろ!」
ロキ:「でも、こんなに大勢いるんだぞ!」
リンゴ:「そんなことは分かってる! だから俺に任せろと言ってるんだ!」
疲労の色が見え始めていたにもかかわらず、ロキは笑った。
ロキ:「ははは! 分かった、頼りにしてるぞ!」
リンゴ:「後悔させるなよ!」
リンゴは兵士たちに向き直り、剣を構えた。
リンゴ:「ロキに近づきたいなら、まず俺を倒してみろ!」
兵士たちは再びリンゴへ襲いかかった。
今度は、リンゴも彼らが近づいてくるのを待たなかった。
素早く前進し、最初の斬撃を受け止める。続いて敵の周囲を回り込み、別の兵士の武器を剣で弾き飛ばした。槍は手を離れ、遠くの地面へ落ちた。
リンゴは軽やかに敵の間を駆け抜け、攻撃をかわしながら、次々と兵士たちを後退させていった。
全員を簡単に倒せるとは思っていなかった。
それでも、彼らをロキのもとへ近づけるつもりはなかった。
その後ろでは、マキが不安に胸を締めつけられながら、戦いを見守っていた。
片膝をつくロキの姿。そして、彼を救うために駆けつけたリンゴの姿。
そのすべてを、彼女は目にしていた。
マキ:「ロキ……リンゴ……」
彼女は手元に持っていた金属片を強く握りしめた。指の関節が白くなるほどだった。
マキ(心の中):「すべて、私のせいで起きている……。もし私がここにいなければ、二人がこんな大勢の兵士と戦う必要なんてなかったのに。」
彼女は領主へ目を向けた。
領主はその場から動かず、雷撃を放った瞬間から、一瞬たりともロキから目を離していなかった。
リンゴには目もくれず、倒れた兵士たちにもほとんど関心を示していない。
彼の関心は、ただロキ一人に向けられていた。
マキ(心の中):「どうして、あんな目でロキを見ているの? 部下たちが倒されても、少しも怒っていないみたい……。」
そのとき、領主がようやく動いた。
彼はわずかに手を上げた。それを見た隣の指揮官は、すぐに命令を出すのをやめた。
領主:「そこまでだ。」
指揮官:「閣下?」
領主:「そこまでだと言った。その小僧を殺すな。」
指揮官は驚いたように領主を見つめた。
指揮官:「しかし、あの者は我々の兵を大勢倒しました! 自由に動かせば、我々にとって危険な存在になるかもしれません!」
領主:「もう一度、言わせるつもりか? あの小僧は生け捕りにしろ。残る二人は、最後まで抵抗するなら殺しても構わん。」
指揮官は一瞬ためらったが、やがて頭を下げた。
指揮官:「承知いたしました、閣下。」
その言葉を聞いたマキの恐怖は、さらに深まった。
マキ:「生け捕りにする……どうして?」
戦場の中央では、リンゴにかかる圧力が次第に増していた。
彼は兵士たちの間を動き回り、次々と攻撃を防いでいた。しかし、思うような速さで敵の数を減らすことができない。
兵士の一人:「動きを封じろ! 包囲するんだ!」
リンゴは一歩後退し、素早く左右を見渡した。
リンゴ(心の中):「また囲もうとしているのか……このままここにいたら、完全に包囲される。」
彼は地面を踏みしめ、敵の隊列の中で最も手薄な場所へ突進した。
剣の一撃を受け流し、相手を横へ押しのける。そして、二人の兵士が道を塞ぐ前に、その間をすり抜けた。
兵士の一人:「逃げようとしているぞ! 止めろ!」
リンゴ:「逃げるだと? 笑わせるな!」
振り返りざまに追ってきた兵士の武器を弾き、相手を突き飛ばした。
リンゴ:「俺はお前たちの指揮官のところへ行く道を探しているだけだ!」
彼は領主へ視線を向けた。領主は相変わらず、その場に立っていた。
リンゴ:「おい、そこのお前! 自分で戦う気はないのか? それとも、次々と倒される部下たちの後ろに隠れているつもりか!?」
兵士たちの剣が、一瞬だけ止まった。
領主はリンゴへ目を向け、その顔に冷たい笑みを浮かべた。
領主:「どうやら、よほど死にたいらしいな。」
リンゴ:「お前の兵士たちを相手に時間を無駄にするより、お前自身と戦うほうがましだ!」
領主:「ならば、お前の望みを叶えてやろう……だが、今ではない。」
彼は兵士たちに指を向けた。
領主:「あの小僧を仲間から引き離せ。二人に連携させるな!」
指揮官:「はっ!」
兵士たちの攻撃方法が、即座に変わった。
全員でリンゴに向かうのではなく、一部がロキへ向かい、残りがリンゴをロキから遠ざけようと動き始めた。
リンゴ:「ちっ! ようやく戦い方を理解したか!」
ロキは呼吸を整えながら、核の熱が少しずつ下がっていくのを感じていた。
彼は手を上げ、指先の周囲に現れていた火花が、ほとんど消えていることに気づいた。
ロキ(心の中):「頼む……もう少し冷えてくれ。自分のせいで核が爆発するなんて、絶対にごめんだ。」
彼は深く息を吸い、周囲の騒音を無視しようとした。
だが、突然、背の高い兵士の影が彼の頭上に落ちた。
兵士:「休憩は終わりだ、小僧!」
ロキは顔を上げた。
ロキ:「またお前か!? いい加減、飽きないのかよ!?」
兵士:「閣下はお前を生け捕りにしろと命じられた。何がお前の目的なのかは知らんが、お前を連れていけば、きっと大きな報酬が手に入る!」
ロキ:「報酬だと!? つまり、お前は金のためだけに戦っているのか!?」
兵士:「それがどうした!?」
ロキの表情が変わった。
ロキ:「別に……ただ、俺は自分の利益のために他人を襲うような奴が大嫌いなんだ!」
兵士は突進し、剣を振り下ろした。
ロキは後退して斬撃をかわすと、素早く身をかがめ、相手の脚を蹴りつけた。
兵士はバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
ロキ:「雷が使えなければ戦えないと思うなよ!」
ロキは後方へ跳んだが、二人の兵士が進路を塞いでいた。
兵士の一人:「捕まえろ!」
もう一人:「逃がすな!」
ロキ:「逃げてなんかいないぞ!」
二人の間を抜けようとした瞬間、一人が彼の腕をつかみ、もう一人が剣を振り上げ、その刃の側面でロキを打とうとした。
ロキは必死に抵抗した。
ロキ:「離せ!」
兵士:「大人しくしろ!」
ロキは腕を激しく引き、どうにか一瞬だけ拘束を振りほどいた。しかし、肩に一撃を受け、後ろへよろめいた。
ロキ:「くっ!」
痛みに顔をしかめたものの、彼は倒れなかった。
怒りを込めて顔を上げ、兵士たちを睨みつける。
ロキ:「本当に頭にきたぞ……!」
その瞬間、背後からマキの叫び声が響いた。
マキ:「ロキ! 危ない!」
ロキが振り返ると、背後から槍を構えた兵士が突進してくるのが見えた。
攻撃をかわす時間は、ほとんど残されていなかった。
だが、槍がロキに届く直前、横からリンゴが飛び込んできた。
リンゴは剣で槍の柄を叩き、その軌道をそらした。槍はロキを外れ、地面に突き刺さった。
リンゴ:「今日はあと何回、お前を助ければいいんだ!?」
ロキ:「ははは! ちゃんと対処できてたって!」
リンゴ:「そうか! だから背後から刺されかけたんだな!」
ロキ:「見えてなかったんだよ!」
リンゴ:「それのどこが対処できてるって言うんだ!?」
こんな状況にもかかわらず、ロキは笑った。そして、リンゴの隣に立った。
ロキ:「分かった、分かった! もう言い返さないよ!」
リンゴ:「そいつは、こいつらを片づけてからにしろ!」
二人は並んで立ち、再び周囲を取り囲もうとする兵士たちに向き合った。
一方、領主は次第に苛立ちを募らせていた。
これほど大勢の兵士を相手に、二人の少年がここまで持ちこたえるとは予想していなかった。それどころか、これほど多くの部下に損害を与えるとは思ってもいなかったのだ。
しかし、彼が苛立っている本当の理由は、それだけではなかった。
ロキの腕に青白い雷がまとわりつくのを見た瞬間から、領主の心には疑念が生まれていた。
領主(心の中):「あの力……偶然であるはずがない。」
彼は再びロキを見つめ、雷の火花の形と、拳から電撃が放たれたときの様子を思い返した。
領主(心の中):「以前にも、よく似た力を見たことがある……だが、あれは何年も前のことだ。」
彼の目が細くなった。
領主(心の中):「まさか、あの小僧は核を手に入れたのか?」
その顔から、笑みが完全に消えた。
領主:「おい、指揮官!」
指揮官:「はっ、閣下!」
領主:「無闇な攻撃をやめさせろ。あの小僧を包囲するだけでいい。必要以上の力を使うな。決して逃がすな。」
指揮官:「承知いたしました!」
指揮官は部下たちに向かって叫んだ。
指揮官:「領主様の命令だ! あの小僧を包囲しろ! 殺すな! 必ず生け捕りにしろ!」
兵士たちは互いに顔を見合わせ、それから、より慎重に動き始めた。
ロキ:「なんだ? 急に攻め方が変わったぞ?」
リンゴ:「領主はお前を死なせたくないらしい。」
ロキ:「それは聞こえた! でも、どうしてだ!?」
リンゴ:「それを突き止める必要があるな。」
ロキは領主へ目を向けた。
男はまっすぐにロキを見つめていた。
その目にあったのは、ただの憎しみではなかった。むしろ、何かを欲しがり、期待しているような眼差しだった。
ロキの背筋に、ぞくりと悪寒が走った。
ロキ(心の中):「この男……俺に何を求めているんだ?」
突然、領主が戦場全体に響き渡る声を上げた。
領主:「ロキと呼ばれる小僧よ!」
ロキは動きを止め、一瞬だけ領主を振り返った。
ロキ:「なんだ!?」
領主:「一つ、聞きたいことがある。」
ロキ:「降参しろって言うなら、断るぞ!」
領主:「聞きたいのは、そんなことではない。」
領主は一歩前へ進み出た。
領主:「教えろ……その力を、どこで手に入れた?」
ロキはしばらく黙っていた。
ロキ:「俺の力だって?」
領主:「そうだ。お前の体から放たれる火花と、先ほどの雷撃だ。まさか、ただの手品だと言うつもりではあるまい。」
ロキ:「これは俺の力だ。それ以上、お前が知る必要はない!」
領主:「お前の力、だと?」
領主は、笑いとは呼べない短い声を漏らした。
領主:「愚かなことを言うな、小僧。その力は、誰もが簡単に手に入れられるものではない。」
リンゴの表情が変わった。
リンゴ(心の中):「こいつ、ロキの力について何か知っている……。」
一方、マキは目を見開いた。
マキ(心の中):「核の秘密を知っているの……?」
領主:「正直に答えろ。お前は核の力を手に入れたのか?」
戦場に沈黙が広がった。
攻撃の準備をしていた兵士たちでさえ、一瞬動きを止め、好奇の眼差しをロキへ向けた。
その場にいる全員の視線が、自分に集まっていることをロキは感じた。
ロキ:「核……?」
彼はすぐには答えなかった。
目の前の男が、ただ雷のことを話しているのではないと気づいたからだ。
この男は、ロキの力の源について何かを知っている。
領主:「黙っていることが、何よりの答えだな。」
ロキ:「勝手に決めつけるな!」
領主:「ならば、否定してみろ。」
ロキは拳を握りしめた。しかし、その指先に火花は現れなかった。
ロキ:「お前には何も教えない!」
領主は再び笑みを浮かべた。
領主:「素直に答えてくれることを期待していたのだがな。まあいい……お前自身の口から話したくなるようにしてやろう。」
そう言って、彼は兵士たちに手を上げた。
領主:「全員、下がれ。」
兵士たちはためらったものの、命令に従い、ロキとリンゴから徐々に距離を取っていった。
リンゴは警戒しながらロキを見た。
リンゴ(小声で):「油断するな。あの男は信用できない。」
ロキ:「俺もそう思う。」
そのとき、領主は一人で戦場の中央へ進み出た。
その足取りは落ち着いており、二人を相手にすることを恐れている様子はまったくなかった。
二人から少し離れた場所で立ち止まると、腰に差した剣の柄に手をかけた。
領主:「真実を話す機会を与えてやった。それでも、お前は拒んだ。」
ロキ:「これからも答えるつもりはない!」
領主:「ならば、お前の自信がいつまで続くか、確かめてやろう。核の力を持っているだけのお前と、その使い方を真に理解している者との違いを見せてやる。」
ロキの表情が変わった。
ロキ:「今、なんて言った!?」
リンゴ:「待て……お前も核を持っているというのか!?」
領主は答えなかった。
ただ、ゆっくりと鞘から剣を引き抜いた。
シュゥゥゥン!
松明の光が刀身に反射し、炎の中に浮かぶ一本の闇の線のように見えた。
領主は片足を前に出し、洗練された戦闘姿勢を取った。
領主:「来い、ロキ。」
ロキは拳を強く握りしめた。
ロキ:「望むところだ!」
リンゴも隣に立ち、剣を構えた。
リンゴ:「お前一人には戦わせない。」
ロキはリンゴを見て、笑みを浮かべた。
ロキ:「お前なら、そう言うと思っていたよ!」
リンゴ:「今は笑っている場合じゃない! 敵に集中しろ!」
領主は二人を黙って見つめていた。
そして、低い声で言った。その声は小さくとも、二人にははっきりと聞こえた。
領主:「よし……始めようか。」
次の瞬間、領主は二人が予想もしなかった速さで突進してきた。
ドゴォォン!
領主の剣がリンゴの剣と激突した。
その衝撃でリンゴの両腕が激しく震え、彼は数歩後退せざるを得なかった。
リンゴ:「な……に……!?」
領主は、リンゴが体勢を立て直す隙さえ与えなかった。
すぐさま身をひるがえし、今度はロキへ向けて二撃目を放った。
ロキは両腕を上げて攻撃を防いだが、凄まじい衝撃に押し戻され、足が地面の上を滑りそうになった。
ロキ:「なんて、とんでもない力だ……!」
戦いが始まって以来、ロキが驚きを隠せなかったのは、これが初めてだった。
領主は目の前に静かに立っていた。まるで、ロキを後退させた一撃など、何の労力も必要としなかったかのように。
男は再び剣を持ち上げた。
領主:「さあ……お前の持つ核の力を見せてみろ。」
ロキとリンゴは、素早く視線を交わした。
二人の戦いは、まったく別のものへと変わっていた。
小屋を包囲していた兵士たちは、もはや最大の脅威ではない。
本当の脅威は、今、目の前に立っている。
冷たい笑みを浮かべ、剣を握る男こそが、二人の前に立ちはだかる真の敵だった。
広場の後方では、マキが金属片を握りしめていた。
十二年前に起きた出来事は、自分が想像していたよりも、はるかに大きな秘密と結びついているのかもしれない。
マキ(心の中):「どうして私は、こんなにも弱いの……!? ロキもリンゴも、私のために命を懸けて戦っているのに、私はただ、ここで見ていることしかできない……。いつまで、ほかの人たちが私の代わりに戦う姿を見ているだけなの!? 二人の重荷になんてなりたくない! どんなことをしてでも、二人を助ける方法を見つけなきゃ!」
第十三章へ続く……
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第12話はいかがでしたか?
もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★)】で応援していただけると嬉しいです!
現在、コンテスト参加中です。皆さんのワンクリックが、執筆の大きな力になります!
次回は、第13話と第14話を明日まとめて公開予定です!ぜひお楽しみに!




