2.銀行強盗の夫婦と待ち伏せ作戦
「ねえ、あんた、まだなの?もう1ヶ月以上も掘ってるのよ」
「周りに気付かれないように掘り進んでいるから待て、あと少しのはずだ」
男は地図を広げて説明している。
地図には銀行の地下金庫への通路が描かれている。
「あんたが、地下道が崩れないようにセメントや板で補強しているからいいけど、
あまり気持ちの良いものじゃなかった。でも下水道へ繋がればもう心配ないね」
「そうだ、仮に警察が来てもこの通路に隠れていればわからないから安心だ」
「あんたは、本当に天才だわ」
「ああ、来週には地下金庫の壁に着くから、仕事終わったら高飛びだな」
「楽しみね、私はヨーロッパがいいわ。私はブランド物を買いまくるの」
「何でも買いたい放題だし、どこでも行きたい放題さ、
地下金庫は電子錠だから銀行側は安心しているはず。
それに金曜日の夜に地下金庫に入って盗めば、
発覚するのは月曜日だからその時には俺達はもう日本にはいないのさ。
それにあいつらも来るから荒事も大丈夫だしな」
「でも、大丈夫?あいつら信用できるの?」
「まあ、いざという時のための保険だから、
それに仲間にしなかったら殺されてたし」
「そうだけど、ニュースではあの組はこの前解散したみたいな話だったよね?」
「解散しても残党はたくさんいるから仕方ない。早く終わらせて高飛びしようよ」
「そうね、こんな嫌な日本とはおさらばだわ」
「でも、今回はお前の銀行の情報が正確だったから助かったよ」
「ああ、あの銀行、酷いところだから。特に支店長、最低な奴」
「確か、セクハラというかそれ以上の・・・酷い話だよなあ。こんな可愛いのに」
「あんたって、天才ね。好き、もっと私を喜ばせて・・・」
前回のオレオレ詐欺事件の実行犯の川口組の残党が絡んでいると知って緊張した。
川口組はチャイニーズマフィアとも関係があり、武器も潤沢な暴力団だからだ。
この前の事件以来、縄張りを他の組に取られて肩身の狭い思いをしているので
残された子分達はここらで一発派手にやって
親分や幹部へ元気にやっている感を残したいと考えているのかもしれない。
この戦いには双方で死人が出るかもしれないと思い戦慄した。
翔は、泥棒夫婦が寝静まった頃、そっと地下道へ降りて行った。
ゴーグルには赤外線や紫外線感応画像が流れていく。
こんな大きな地下道をよく二人で掘り進んだものと感心した。
こんなことに尽力するなら他にいくらでもできることがあるだろうに・・・
ちょうど爺さんの部屋の下辺りに来ているが、柔らかい土が落ちてきている。
泥棒夫婦は、天井部分の脆い部分は厚い板や太い柱でキチンと補強している。
泥棒夫婦が掘り進んだ通路は庭のプレハブから下水道へ繋がっている。
そして下水道の壁は、綺麗にレンガ積みとなっている。
翔は通路から下水道に続く場所を撮影し、レンガをそっと崩して下水道へ出る。
通路と下水道の間のレンガ壁を同じように再度組み直した。
そして泥棒夫婦の目的である銀行の地下金庫付近を調査した。
レンガを剥がしていくと地下金庫の壁材が見えている空間に着いた。
これはすごい考えだった。
この薄い壁1枚の向こうには札束や金や貴金属でうなっているのだ。
足元にはセメントを砕く機械や金属を溶かすバーナーを用意されている。
来週が月末の金曜日なので多くのお金や貴金属が運び込まれる筈だった。
翔は、下水道との壁の画像を比べて
レンガを元の状態に組み直して下水道から歩いて地上へ出た。
都倉警部に連絡し現行犯逮捕するために待機した。
いよいよ金曜日の銀行業務が終了し深夜が訪れた。
警部たちは、川口組がどこから来るかわからないため、
とりあえず少し離れた場所で待機している。
地下道の反対側にも警官を配備予定で、1人も逃がさない布陣を考えている。
泥棒夫婦は近所が寝静まったのを確認して、
大きな鞄を持って庭から地下道へ入っていった。
もちろん男の背中にはクモ助が下りており
『聞き耳タマゴ』は設置されている。
男は携帯電話で川口組へ連絡をしている。
有料駐車場にバトルカーを停めて
川口組を見張っている百合とアスカから連絡が入った。
10名ほどの組員が事務所から出てきた。
1人の組員の背中にクモ助を下ろして『聞き耳タマゴ』の設置に成功した。
彼らはゴルフバッグのようなものを多く担いでおり中身は武器と思われた。
彼らが目の前を歩いて行く。
アスカがすぐさま草むらに隠れているクモ助を回収して車に戻ってくる。
翔のゴーグルへ彼らの移動地点が送られてくる。
警部へそのデータを送信し、彼らの移動場所を知らせ
彼らに見つからないように周りから包囲し逃げ道を塞いでいった。




