✴︎プロローグ✴︎
天空より舞い降りた伝説の秘宝とされる石、スカイ・ネイル。
手にすれば全てを可能としてしまう力があるという。
その秘宝が数ヶ月前ついに危峰で発見されたらしい。
信じがたい話だが、それが本当なのであれば皆手に入れないわけにはいかないだろう。
その強き力を求め。
自分の欲望に支配され大切なものを失うのか。
はたまた幸せを手に入れるのか。
それは誰も知るよしはない。
***
スカイ・ネイル。
噂でしか耳にしたことはなかったが、その能力と目撃情報があったことを知り、いてもたってもいられなくなった私はその力を求め国を飛び出した。
誰かが手に入れる前になんとしてでも手に入れなくては。
この世界を、全て無へ返してやれるのならばと。
そしてようやくその時が来たのだ。
今目の前には長く探し求めていた石が確かにそこにある。
どれだけの月日がたったのかはわからない。
「長かった」
ゆっくりとスカイ・ネイルに手を伸ばすと、突然それは鮮やかに光り輝きだした。
まるで使い手が来るのを待ち侘びていたかのように。
しかし何故か触れることができない。
まるで見えない壁があるかのようだ。
だがそれはすぐに魔法で作られたものだと理解する。
「そこまでだ!」
「もうあなたの好きにはさせない!」
「お前はここまでだ、グラセフ!」
背後から聞こえてきた声に伸ばした手を一旦戻し、くるりと後ろを振り向く。
あと一歩というところなのに。
何故天はいつも私の邪魔するのか。
しかしその顔ぶれはどこか見覚えがあった。
「いくぞ!アレン、ルサリィ」
ああ。誰かと思えば同じ国の奴らじゃないか。
何故ここにいるのかは知らないが、スカイ・ネイルを目前とした今構っている暇はない。
「スバル!わかってるな。一撃喰らわしたら南の方角へ」
「言われなくても!」
二手に分かれて走り出し、グラセフを挟み込むような形を作ると、まず背後をとったスバルは炎を纏った大剣をグラセフめがけて一気に振りおろした。
「神器か。しかし」
瞬間辺りが真っ暗になり、直撃したはずの剣は空を切った。
「この闇魔法さえあれば、私は無敵だ」
「ありえない。自分ごと闇に取り込んで攻撃を躱した?!」
「さらばだ」
スバルに向かって手をかざすと、辺りの闇の気がズズズと音を立てるかのようにグラセフの周りに集まり渦巻いていく。
「ブラインド」
そう唱えると、直様スバルの手に握られていた大剣を奪い取った。
訳がわからない様子の彼は立ち尽くしたままその場から動こうとしない。
いや、動けないのだ。
「どういう、ことだ」
「闇魔法。お前は今光すら感じることはできないだろう」
奪い取った剣で容赦なく腹部を切り付ける。
すると急に地面が大きく揺れ動いた。
「スバルーー!」
風と弓を操るアレンはグラセフに向かって鋼鉄の矢を放つ。
「効かん」
再び手をかざす。ーーが。
ドクン、と心臓が大きく脈打つ。
そのせいで反応が遅れ、放たれた矢が右腕を貫いた。
なんだ、この感覚は。
まさかこの私が・・・いや、スカイ・ネイルを目前にして倒れるわけには。
この世界を、全てを手に入れるまでは・・・!
手にしていた大剣を左手で強く握りしめ、アレンめがけて振りかざす。
「ルサリィ!まだか!」
「待って、もう少しよ」
「貴様ら、まさか封印する気か!」
ここまできて、封印されては全てが水の泡になってしまう!
それだけは絶対にさせない!
「よそ見してんじゃねぇ!」
不意を突かれ、今度は矢が胸を貫いた。
急所は外したようで、なんとか意識は保たれている。
だがこのままでは長くは持たないだろう。
次第に足に力が入らなくなり、地へと倒れ込んだ。
「王からの命令でよ。どういうわけかお前のことは殺すなと言われた。俺には理解できなかったがな」
ちょうどアレンと太陽が重なり、逆光で表情が読み取れない。
こんな、ところで。
諦めるわけには・・・。
最後の力を振り絞り、グラセフは小さく唱えた。
「カタス・・・トロフ」
すると再び大地が揺れ動き、辺りが闇に包まれていく。
雷雨が押し寄せ、風が吹き荒れる。
「っまだそんな力が!」
「邪魔は・・・させない」
アレンの足元に亀裂が走り、大きく地面が割れるとたちまち奈落の底と化した。
地の揺れに足を取られ、アレンは奈落へと吸い込まれてゆく。
「ははっ・・・、もう、魔法も使えねぇか」
空が、遠ざかっていくーーー。
すると一筋の光が空を照らしていった。
「あとは任せたぜ、ルサリィ・・・・・」
闇にのまれていく感覚を覚えながら、ゆっくりと目を閉じた。




