第35話 僕と騎士と安心感と
なんだか、落ち着かない。
頭に血が上っている。
僕はいま、本気で怒っている。
「く、クリエント。まさか、怒っているのか?」
「怒っています。リヒトさんが自分の命を大事にしないから」
「し、しかし、騎士というのは、そういうもので――……」
「自分の命を軽く見ている人は、他人の命も軽く見がちだと本に書かれていました! リヒトさんはそんな人ではありませんが、それでも自分の命を軽んじる発言や行動は許せません!!」
今まで、ここまで頭に血が上ったことはあるだろうか。
たぶん、ない。
前世でも、今世でも。
僕は怒りという感情に鈍い。
たぶん、すべてをあきらめていたからなのかもしれない。
怒っても、悲しんでも、もう死ぬ。
そうあきらめていたから、怒りの感情すら湧かなかったのかもしれない。
けど、今は違う。
体は自由に動く。走れる。魔法が使える。
あきらめなくても、僕は何でもできる。
だから、怒りが湧くのだろう。
「リヒトさんは騎士です。でも、それだけではなく、僕にとってリヒトさんは、本当に大事な人なんです。優しくて、温かくて。僕は絶対に、リヒトさんを失いたくない。僕は、リヒトさんにはずっと生きていてほしいです!!」
リヒトさんの服をつかみ、見上げる。
少し声を張り上げすぎて、喉が痛い。
それでも、気持ちが落ち着かない。
怒りが収まらない。
鼻息を荒くしていると、リヒトさんが僕を抱きとめた。
――――っ!?
そ、そそそ、そんなことをしても、僕の怒りは収まりませんよ!!
「――ありがとう、クリエント」
「え、ありがとう?」
ぼ、僕は怒っているのですよ、リヒトさん。
な、何を?
「そんなことを言われたのは初めてだ。騎士は、国のために命を捨てて守るのが仕事だ。だから騎士は誰でも命を軽く見る。それが当たり前なのだ」
少しだけ体を離され、リヒトさんが僕の瞳を見る。
「だから、今回のような言葉をかけられることはない。命を落としてでも国を守れた方が、称えられるんだ」
「そ、そんなのおかしいです! 国は確かに大事です。でも、それで何十人もの騎士が命を落とすのが当たり前だなんて、そんな世界おかしいです!! そんなの、僕が変えてやる――!!!」
感情のままに叫ぶと、後ろから噴き出すような声が聞こえた。
リヒトさんと一緒に振り向くと、サモスさんとクニーがなぜか笑いをこらえていた。
「な、なぜ笑うのですか!」
「い、いや。君は本当に面白いねぇ。世界を変えるかぁ~。うん、わかったよ」
「え、わかった?」
わかったって、何が?
「君は、自分がどれだけすごい力を持っているのか、まだ理解できていないんだねぇ~」
「ど、どういうことですか?」
サモスさんが僕たちに近づいてくる。
「本当に世界を変えるのなら、力を貸すよ。面白そうだしね。まぁ、そうなれば創造館は閉館しないといけないだろうけどねっ――……」
「ダメだ!!」
サモスさんの言葉にいち早く反応したのは、意外にもリヒトさんだった。
振り返ると、リヒトさんが口を押さえて俯いている。
「え?」
「ふふふふっ。クリエント」
「は、はい」
サモスさんに呼ばれ、視線を合わせた。
「今はまだ、世界を変えなくてもいいんじゃないかな。今はとりあえず、みんなに癒やしを与えることを考えよう。それが、もしかしたらゆっくりと世界を変えることになるかもしれない」
そうなのかなぁ。
考えていると、リヒトさんが僕を後ろから抱きついた。
「クリエント、創造館は閉館しないよな? 大丈夫だよな?」
今まで見たことがないほど不安そうだ。
なんだか、ないはずの犬の耳が垂れているような気がする。
か、かわいい……。
「だ、大丈夫ですよ。僕、創造館に戻るために今回頑張ったのですから、ここで閉館させてしまえば本末転倒ですよ」
リヒトさんの頭が近くにあるため、撫でてみる。
すると、本当に安堵したかのように、
「よかった」
と、小さく言葉を漏らした。
「では、もうそろそろ動けるかな。大丈夫は大丈夫だけど、一応オルレアン家に戻った方がいいだろう。心配もされているだろうしね」
言いながら、サモスさんは空間を切る。
僕が転移したときのような闇の空間だ。
「では、行こうか」
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