第29話 僕とエレナ様とセレブと
僕に話しかけてくれたのは、リヒトさんが仕えるご令嬢――エレナ様だった。
今はリヒトさんではなく、別の騎士と共に外出していたらしい。
目の前に立つご令嬢は、屋敷で出会った時とは少し違って見えた。
凛としている。
やっぱり、ご令嬢なんだ。
綺麗な佇まいに見入ってしまっていたからか、隣にいた騎士が一歩前へ出て、僕とエレナ様の間に割って入った。
「何用で?」
「あ、す、すみません! 綺麗だったので、思わず見てしまっていました」
素直に言うと、騎士は鼻を鳴らし、腕を組む。
「当然だろう」
……まぁ、ご令嬢だもんね。
「アレン、その方はリヒトの友人よ。もう少し丁寧に扱いなさい」
「っ、申し訳ありません」
騎士を下がらせ、エレナ様が前へ出る。
「何かあったみたいね。話を聞かせて頂戴」
「は、はい!」
そう言うと、なぜかエレナ様は背を向け、そのまま歩き出してしまった。
え、話を聞いてくれるんじゃ――
「何をしているの? 早くついてきなさい。ここでは目立つわ」
言われて周囲を見る。
確かに、僕たちへ視線が集まっていた。
オルレアン家のご令嬢が一般人と話していれば、当然か。
どこへ向かうのかは分からない。
でも、話を聞いてもらえるなら今はついていくしかない。
早く、現状を伝えないと。
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案内されたのは、オルレアン家の一室――エレナ様の部屋だった。
「好きな場所に座ってちょうだい」
「え、は、はい……」
広い。
ものすごく広い。
二人、いや三人でも余裕で眠れそうな大きなベッド。
天井にはシャンデリア。
テーブルも椅子も豪華だ。
……これが本物のセレブ。
「アレン、貴方は部屋の外にいてくださるかしら」
「っ、何を言っているのですか姫様。こんな一般人と、しかも男性と二人きりなど……」
それはそうだ。
前世でも男女が二人きりで部屋にいれば、変な噂が立ってもおかしくない。
「私の言うことが聞けないのかしら」
「しかし……」
騎士の方が押されている。
圧がすごい。
屋敷で会った時とは全然違う。
これが、ご令嬢としての顔なんだろうか。
「早く出て行ってくださらないかしら。話ができないわ」
「……わ、分かりました。部屋の前で待機いたします」
「それもちょっと……」
「これ以上の妥協はできません」
「……分かったわ」
アレンさんは一礼し、部屋を出た。
ご令嬢と二人きり。
前回はリヒトさんがいたから平気だった。
でも今回は、どう接すればいいのか分からない。
少しでも無礼を働いたら――……
「……仕方ないわね。小さな声で話すわよ。ベッドに座って頂戴」
「え、はい」
エレナ様がベッドに腰掛け、隣を軽く叩く。
そこに座れ、ということだろう。
でも隣は無理だ。
立場も違うし、性別も違う。
少し距離を空けて座る。
「扉の外に声が漏れると厄介なの。小声でお願い」
「わ、分かりました」
でも、なぜ声を漏らしてはいけないんだろう。
それに、やっぱり態度が違う。
今は、館で会った時のエレナ様だ。
「それで、何があったの」
「あ、あの……」
今はそんなことを考えている場合じゃない。
早く伝えないと。
「実は――……」
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「分かったわ。それはオルレアン家総出で動かなければならないわね」
話を聞き終えたエレナ様は、即座に立ち上がった。
「リヒトは今、ヴァロワ家の皇子を足止めしているのね。すぐに応援を向かわせるわ」
扉を開け、アレンへ指示を出す。
僕よりずっと簡潔で、分かりやすい。
しかも的確。
見た目は僕より年下に見えるのに、ここまでしっかりしているなんて。
これが、ご令嬢の器なんだろうか。
「今すぐ動いてちょうだい」
「承知しました」
アレンはすぐに駆け出した。
エレナ様がこちらを向く。
「ヴァロワ家が動いているなら、正直、精鋭が揃うオルレアン家でも危険よ」
「え……」
「だから、私たちはクラウド家へ向かうわ」
「クラウド家? なぜですか?」
「応援を頼むの。クラウド家にはオルレアン家と同等の騎士がいる。頼まない理由はないでしょう」
そう言うと、白いドレスを揺らし、エレナ様は部屋を飛び出した。
「あ、待ってください!」
クニーのため息が聞こえる。
でも今は気にしていられない。
早く行かないと。
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