表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の創造館の主は、今日も騎士を癒している  作者: 桜桃
癒しの場所を守り続けます

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/39

第11話 僕と雨音

 リヒトは、指切りげんまんをした自分の手を見つめていた。

 自分よりも小さな手、細い指。


 少しでも力を入れれば、折れてしまいそうだ――

 ふと、そんなことを思ってしまう。


 軽く笑みを浮かべ、まずはモナとサグラモールをクラウド家へ送り届けた。


「また頼むわよ」


「タイミングを合わせて行けたら何よりです」


 腰を折り、二人を見送る。


 二人の姿が見えなくなった後、リヒトは姿勢を正し、自身が仕える令嬢のもとへと馬を走らせた。


 ――バカッ、バカッ。


 馬を走らせていると、ふと違和感を覚え、周囲へ視線を巡らせる。

 だが、何もいない。


 視線とは違う、何か。

 一瞬、微かに――普通なら気づかないほどの気配。


 どこから感じたのかも分からないまま、それはすぐに消えてしまった。

 街では、最近妙な噂も流れている。


 リヒトは前を向き直り、馬を走らせ続けた。


 ――報告しておくか、一応。


 ※


 城へ戻ったリヒトは身支度を整え、自身が仕える令嬢――エレナの部屋へ向かった。


 オルレアン家は、ツェダリア国でもっとも大きな家柄。

 仕える騎士は皆、腕利きばかりで、その中でもリヒトは群を抜いていた。


 ゆえに彼には、他の騎士には任されない役目もある。


「エレナ様、リヒトです。お時間よろしいでしょうか」


『構わないわ。入りなさい』


「失礼いたします」


 部屋へ入ると、布団にくるまっていたエレナが、ぱっと顔を輝かせた。


「リヒト!! 遅いわよ!」


「申し訳ありません。これでも早く切り上げてきたのですが」


「それでも、遅いわよ! もっと私を優先してちょうだい!」


 頬を膨らませ、子供のように駄々をこねる。

 そんなエレナをなだめながら、リヒトは今日の出来事を話した。


 モナとエレナは、名前は知っているけれど、あったことはない間柄。

 だが、お互い特に興味はない。


 サグラモールも同じ。

 興味はないが、名前は知っている。


 エレナは、その二人より、クリエントの方に興味が注がれた。


「ねえ、リヒト」


「はい」


「私も今度、その館に連れて行って」


 思わぬ提案に、リヒトはわずかに目を丸くしたが、すぐに頷いた。


「承知しました。エレナ様のご都合の良い日に」


「明日」


「……?」


「明日」


「明日、ですか?」


「明日」


 リヒトは一瞬だけ沈黙し――


「……かしこまりました」


 エレナの言葉に「否」は存在しない。


 無表情のまま脳内で予定を組み替え、即座に段取りを整える。


「では明日、昼頃に向かいましょう」


「それまでに仕事は全部終わらせなさい。午後は休暇を取りなさい。そして私の護衛をしなさい」


「休暇の定義が少々怪しくなりますね。とはいえ、団長に許可は取ってまいります」


 部屋を整えながら退出の準備をしていると、エレナがベッドから降り、リヒトの腕を掴んだ。


「いかがなさいましたか?」


「……何か、他に話すことはない?」


 見上げてくる瞳。


 リヒトは、城へ戻る途中で感じた違和感を思い出した。


「ああ。報告がございました。よくお分かりになりましたね。私、無意識に何か言いかけておりましたか?」


「やっぱり。いーえ、ただの勘よ」


「鋭すぎませんか?」


「女の勘は鋭いものよ」


 強気に笑うエレナ。


 リヒトは彼女の前に膝をついた。


「現在、街で一つの噂が流れております」


「噂?」


「かつてツェダリアを襲い、壊滅寸前まで追い込んだ家――ヴァロア家が、この国へ偵察に来ている、と」


 エレナの表情が一変する。


「……なんですって?」


 十五歳。まだ若い。


 だが、王族として厳しい教育を受けてきたエレナは、ヴァロア家の名も当然知っていた。


 眉を顰め、厳しい顔を浮かべる。


「また戦を企んでいるのかしら」


「現時点では噂に過ぎません。確証はございませんよ」


「……そうね」


 深呼吸し、冷静さを取り戻す。


「父上と母上には?」


「これから報告いたします」


「任せたわ。もし本当なら、早急に体制を整える必要があるもの」


「承知しました」


 リヒトは一礼し、部屋を後にした。


 一人残されたエレナは胸に手を当てる。


「火のないところに煙は立たぬ……嫌な胸騒ぎがするわ」


 シャンデリアの光が、静かに揺れていた。


 ※


 次の日、僕は今、一人で紅茶を楽しみながら読書をしていた。

 クニーははたきを持ち、高い場所の掃除をしてくれている。


 ――ぺらり。


 ページをめくる音が好きだ。


 蓄音機から流れる音楽も、今日も穏やか。


 こんな空間を、もっと多くの人に知ってほしい。

 でも、押しつけにはしたくない。


 ――ぽたっ。


「ん?」


 窓に水滴が落ちた。

 外を見ると、少し雨が降っている。


 雨音も好きだ。

 蓄音機を消そうかな――


 ――ザァァァァァァァァァア!!!


「あー、すごい雨」


 最初は小雨だったのに、一瞬で土砂降りになってしまった。


「今日は……リヒトさん、来ないかな」


 馬でここまで来るのは大変だろう。


 仕方ない。

 今日は一人の時間かな。


 そう思って椅子に座り直そうとした、その時――


 ――バタバタッ。


「え?」


 外から慌ただしい足音。

 クニーがぴょんと肩に乗る。


『警戒した方がよろしいかと』


「う、うん」


 慎重に階段を下り、扉へ向かう。

 雨音の中に、確かに荒い気配がある。


 もしかしたら雨宿りかもしれない。

 でも、それだけではない気配もある。


 ドアノブに手をかけた瞬間――


 ――バンッ!!


「悪い!! 雨宿りさせてくれ!!」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ