対極の2人
「お、おはよう」
「おはよう」
黒崎は朝登校して教室で霧島と顔を合わせたが、霧島は至って普通の表情をしていた。
「なあ、、昨日の話なんだけど、、」
「あ、あまりここでその話しないでもらえるかしら」
「え、あ、、ごめん、、」
話しかけると、割と素っ気ない態度を取られ、少しへこむ黒崎である。
(それじゃあいつヒントを聞けばいいんだ、、?)
学校で聞けないとなると帰り道に聞くぐらいしかタイミングがない。そして帰り道に聞いたとしても考える時間が少ししか無くなってしまうのである。
「そ、それじゃ今日昼一緒に食わねえか?」
昼休みに2人きりになることで、何とか聞き出そうとする作戦である。
「別にいいけれど」
「おっけー!」
意外にもあっさりと承諾され、何とか話すタイミングを掴み取った黒崎であった。
「な、なんでこんな所で食べるのよ」
「いいだろ誰もいなくて静かだぞ」
2人は昼ごはんを食べるため、人気のない屋上付近の階段に来ていた。
「へ、変なことする気じゃないでしょうね、、!」
「しねえよ、俺をなんだと思ってんだ」
怪しげな目を向ける霧島に対してそう言葉を返す黒崎である。
「ん、我ながらいい弁当の出来だな」
「、、、、」
「どうした?弁当食わねえのか?」
霧島は何も食べないどころか、まず何も持ってきていなかった。
「、、、もしかして弁当忘れたのか?」
「そうよ、、笑えばいいじゃない」
「いや先に言えよ!そしたら購買とか寄ったのに!」
何故か何も食べないと思っていたが、どうやら弁当を忘れてきていたようだ。
「別に、、お腹すいてないからいらないわよ」
「ダメだ、ほら俺のちょっとやるから」
そうして黒崎は自分の弁当箱を差し出した。
「じゃあ、、、ん、、」
「は、、?」
霧島は目をつぶり、小さな口をあけてまるで食べさせろと言わんばかりの素振りを見せる。
(いやちょっと待て、、!食べさせんのもきついけどまず関節キスだろ!!)
黒崎は心の中でそう叫んだ。
「、、、、、まだ?」
数十秒たってもまだ口をあけ続けている霧島に、黒崎は葛藤していた。
(ああもうしらん!!)
「んん、、、!」
黒崎は覚悟を決めて、霧島の口の中に卵焼きを詰め込んだ。
「、、、、おいしいわね」
「お、おう、、」
(と、どうしたんだ急に!?)
いきなり不可解な行動をし始める霧島に困惑する黒崎である。
「次これ、、、、ん、、」
「と、トマトは自分で取れるのでは、、?」
「、、、、ん!」
「、、、、、くそっ、、!」
頑なに自分で口にしようとしない霧島に、恥ずかしさと困惑で頭がぐるぐるしながらも、口の中にトマトを運ばせる黒崎である。
「、、、おいしいわね」
「あ、ああ、、、」
(ま、マジでなんなんだよ!)
特に何も言わず、ただ食べさせられ美味しいとだけ言う霧島である。ただ、霧島が何を考えているか、黒崎は少しずつわかってきていた。
「な、なあヒントを使いたいんだが、、」
黒崎は、ここで2つめのヒントを切り出そうとした。
「、、、さっきから結構ヒント出してるのだけれどね」
「そ、そうなのか、、?」
どうやら先程までの行動はヒントだったようだ。
(まさか、ほんとに、、?)
黒崎の今のところの答えは、「本当のカップルになりたいから仮のカップルを辞める」というものだ。我ながら都合のいい解釈だと自覚している黒崎だが、逆にそれ以外の答えが浮かばないのである。
「で、でも俺が聞いた訳じゃないし、使ってもいいか、、?」
「まあ、いいわよ」
「まじ?」
意外とあっさりと承諾した霧島に、少し驚く黒崎である。
(直球に聞くか変化球を出すか、、)
と考えたものの直球に聞けるはずもなく、変化球を投げた。
「理由を言いたくないって言ってたけど、その辞めたい理由を俺が知ったら一体どうなるんだ?」
そのままド直球に聞くのではなく、すこしふんわりした部分を攻めた黒崎である。
「それは、、黒崎くん次第かもしれないわね」
「俺次第、、?」
(やっぱり俺の気持ち次第で変わるってことか!?)
黒崎の中でほとんど結論は出ていた。しかし、それを直球に聞けるほどの度胸は黒崎にはなく、さらに万が一違った場合この関係がめちゃくちゃに壊れてしまいそうで、なかなか前に踏み出せないのである。
「そんなことより、次はそのハンバーグが食べさせてもらえるかしら」
「結局めちゃくちゃ食いたかったんじゃねえかよ」
「はあ、、、まあそういうことでいいわよ、、」
「?」
霧島はあまり浮かない顔をしていたが、口は開けていたためとりあえずハンバーグを放った。
「せっかくだから黒崎くんにも食べさせてあげる」
「なんで!?」
何故か黒崎の箸を奪って、おかずを手に取り食べさせようとする霧島である。
「ほら、食べなさいよ」
「いいって!自分で食えるから!」
「はぁ、、食べてくれたら特大ヒントあげるのに、、」
「わかりました食べます」
「ふふ、それでいいのよ」
まんまと餌につられおかずを口の仲に運ばせられる黒崎である。
「んで、、特大ヒントって、、?」
なにをぶっ込んで来るのかと黒崎はヒヤヒヤしながら聞いた。
「べ、別に無理に言わなくても、、」
「私、黒崎くんのことが好き」
「、、、、え?」
黒崎は数秒ほど思考が停止した。
「それじゃあまた放課後ね」
「え!?ちょっと待、、」
そう言った頃には霧島は目の前からいなくなっていた。
(え、、!?まじで、、、!?ええ!?!?)
突然の霧島からの言葉に、とんでもない驚きと共に、嬉しさが込み上げてきた。
(じゃあやっぱり答えって、、)
そう考えるまでもなく分かりきっていた。霧島は黒崎と本当の関係になりたい。それが仮のカップルを辞めたい理由である。
(ああ、、、、)
今までの苦労が実った嬉しさと、全てに決着がついた疲労で立つ気力すら起きない黒崎は、そのまま昼の授業をサボることとなった。
「、、、っち!龍っち!!」
「なんだ、、、?俺寝てた、、?」
外も少しばかり暗くなってきていて、ある人の声で黒崎は目が覚めた。
「もう放課後だよ!!玲奈っち帰っちゃうよ!!」
「放課後、、!?そんな寝てたのか、、!?」
目の前にいたのは星宮だった。そして時刻はとっくに16時になっており、下校時刻をすぎていた。
「早く玲奈っちのとこ行かないと!」
「ああ!行ってくる!待て、、、なんでお前知ってるんだ??」
走り出そうとした瞬間に冷静になり、星宮にそう問いかけた。
「うちはなんでもお見通しだよ?」
「いやこわ、、、じゃなくて!早く行かねえと!」
「頑張れ〜!!」
星宮にそう声をかけられ、黒崎は教室へと向かった。
「いねえ、、」
教室に戻った頃には霧島の姿はなかった。
「まさかもう帰った、、?」
霧島が帰ってしまったとなると、このクイズに黒崎は正解できなかったということになってしまう。
「てか思ったけど、正解して何になるんだ、、?」
確かに勝負はしているが、特に勝ったからといって罰ゲームや報酬なども何も決めていない。
「答えがほぼ告白同様ということは、この勝負自体に意味があるという事だよな?」
「気づくの遅いよ龍ちゃん」
「うわびっくりした!!」
一人でブツブツと考えていると、突然背後から蒼空がやってきた。
「鈍感すぎるんだよ龍ちゃんは」
「いやーそんなことないと思うんだけどなあ」
「だとしたらかなり前に委員長の気持ちに気づいてると思うんだけど、、」
「え?」
「あ、僕バイト行かなきゃ。ばいばい龍ちゃん」
「え?お前バイトって、、なんの、、?」
「セミの7日間を記録するバイト」
「え?なにそれこわ、、」
「ばいばーい」
そうして蒼空はその場から立ち去っていった。
「いや違う違うこんなことしてる場合じゃねえ!追いかけねえと!」
恐らくもう下校しているであろう霧島を黒崎は必死に追いかけた。
「ったくどこだ、、、」
霧島がいつも帰っている道を走り回るが、霧島の姿は見えない。
「仕方ねえ、、電話するしか、、」
どうにかして帰る前に引き止めるべく、プライドを捨てて電話をかける黒崎である。
「こっちから音がする、、!?」
電話をかけるとなんと路地裏から携帯電話の着信音がした。そして、黒崎は霧島を見つけることに成功した。
「ようやく見つけた、、、なんでこんなとこにいんだよ、、!」
「な、なんで来るの、、?」
「え、、?は、、?ちょなんで泣いて、、!」
霧島と鉢合わせ顔を合わせた瞬間、霧島の顔には涙が浮かんでいた。
「せっかく隠れたのに、、、、なんで、、、」
「なんでわざわざ隠れたんだよ!必死に探したんだぞ!」
「だって、、、放課後になっても来ないから、、、、、私が変なこと言ったから、、、、」
「は、、、?」
霧島は泣きながら言葉にならない言葉を発していた。
「ごめんなさい、、、!好きとか言って、、、迷惑かけてごめんなさい、、、!」
「おい!ちょっと待て!俺は迷惑だなんて思ってねえよ!!」
「え、、、?」
霧島は泣きながらも不思議そうな顔で黒崎の方を見た。
「嬉しかったんだよ!お前から好きって言われて!!」
「そうなの、、?てっきり来ないから、、嫌われたかと思って、、、!」
「そんなわけねえだろ!なんでそれで嫌いになるんだよ!」
「ほんとは正解した時に、、告白しようと思ってたのに、、、!」
「ああ」
「勢いで、、!告白しちゃって、、!断られたかと思って、、!」
霧島は、言葉を並べながらもさらに涙を増やした。
「まだおれ答えなんて言ってないだろ?クイズも、そして告白の答えも」
「うん、、、、」
霧島は小声でそう言いながら頷いた。
「クイズの答え、それはこれ以上の関係になりたいから。偽の関係ではなく、本当の関係になりたいから。これで合ってるか?」
「、、、、、」
「お前が否定しない時はだいたい合ってる時だ」
黒崎は目線を逸らす霧島の顔に合わせて、顔に位置を変えて目線を合わせた。
「こっち見ないで、、!絶対酷い顔してる、、!」
「お前は可愛いよ、どんな時でも可愛い」
「うるさい、、!バカ、、!」
「そうやって素直じゃないけど本心では嬉しがってるのも可愛い」
「ほんとに、、!なんなのよ、、!」
そう言いながらも、言葉と表情は一致しておらず、少し笑顔になった霧島である。
「そして告白の答え、、いや、、違うな」
黒崎は少し考え込み、深呼吸をした。
「俺はお前が好きだ。真面目なとこも、素直じゃないとこも、笑顔が可愛いとこも、意地っ張りなとこも、そして頑張り屋とこも。お前の、玲奈の全部が好きなんだ」
「ふふ、それしか言えないの?私はあんたの好きなとこ100個は言えるわよ?」
霧島は目を赤くしながらも、マウントを取るように笑顔でそう言った。
「ん、別にもっと言ってもいいけど。顔が赤くなって限界そうだったから」
「う、うるさいわよ!そんな褒められたら誰だって恥ずかしいわよ、、!」
「そうやって褒めたらすぐ赤くなって照れるとこも可愛い」
「も、もうわかったから、、!」
霧島はいたたまれなくなり黒崎から目線を逸らした。
「それで、俺答え聞いてないんだけど?」
「ず、ずるいわよ!私が最初にこ、、告白したんだからあんたが答えを言うべきよ!」
「ん、俺は玲奈の本当の彼氏になりたい。絶対幸せにする、大切にする、俺の全てをお前に捧げる。だからお前の答えも聞かせてくれ」
「だ、だから、、!私は良いって言ってるでしょ、、!」
「良いって何が?よくわかんないなー!」
黒崎は霧島のことをこれでもかと煽った。
「ああもう!!だからこういうことよ!!」
「え!?ちょっ!?!?」
黒崎の煽りを受けた霧島は、顔を黒崎の方まで寄せ、そのまま自分の唇を黒崎の唇に当て、キスをした。
「こ、これでわかったでしょ、、!ふん、、、」
「、、、、、っ!」
黒崎は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にした。
「ところで、、なんであんた放課後来なかったわけ?私ほんとに落ち込んだのよ?」
「いや、、その、、気持ちが同じだって分かったら安心しちまって、、なんか寝ちまってた、、」
「何よそれ」
霧島は呆れながらも、少し笑顔を見せた。
「とりあえず、今日はもう帰るか、、お前も色々疲れただろ?」
「ま、待って、、!」
霧島は帰ろうとする黒崎の手を掴んで引き止めた。
「ど、どうした?」
「ま、まだ目赤いから、、!今帰ったら心配されちゃう、、!」
「じゃあ俺ん家くるか?」
「!?!?そ、それはまだちょっと、、!心の準備が、、!!」
「別に変なことはしねえよ、さっき言っただろ?大切にするって。ちょっと休憩してけってことだよ」
「そ、そういうなら、、お言葉に甘えるわね、、」
「ほら、しっかり手握っとけよ?またどっか行ったら困るからな」
「うるさい、、!言われなくても繋ぐわよバカ、、!」
「はは、じゃあこれから改めてよろしくな、玲奈」
「よ、よろしく、、りゅ、、龍鬼」
「ようやく名前で呼んでくれたな」
「ふん、付き合ってまで苗字呼びはさすがにあれよ」
「じゃあもっかい名前で呼んでくれ」
「い、嫌よ!」
「俺はいつでも玲奈って呼べるけどな」
「うるさい!」
そうして、仮のカップルから本当のカップルへとなった委員長の霧島と不良の黒崎2人。そんな対極な2人は、手を繋ぎながら日が暮れ始めている夕日に向かって歩き出すのであった。
これにて、「委員長の霧島さんは不良の黒崎くんに勝てない」は完結となります。一応エピローグとして少し続きのお話を投稿する予定ではありますが、本編はこれでおしまいとなります。この作品は私が初めて完結まで走りきった作品です。こんな初心者が作った拙い作品を最後まで読んでくださった読者の方々に、深くお礼を申し上げます。これからも他の作品を投稿して、さらに成長していくつもりなので、これからもよろしくお願いします。そして、この作品を1度でも読んでいただいた方にもう1度お礼申し上げます。本当にありがとうございました。




