平和と秘密と夏休み
「やっぱ龍ちゃん昔より平和になったよね」
放課後、蒼空と2人で帰っていた黒崎はそんなことを言われた。
「まあ、そうかもしれんな」
黒崎には自覚症状はあったので別に否定はしなかった。
「これも委員長のおかげかなー」
「な、なんでそうなるんだよ」
黒崎はいきなり霧島の名前を出され少し動揺した。
「中学の時委員長と関わり始めてからなんか丸くなった感じするんだよね」
「そ、そうか?」
黒崎は中学の頃は荒れていた。タバコ、酒、喧嘩など色々やっていたのだ。
「それにしてもなんで委員長と仲良くなったの?正反対の人間じゃん」
何故霧島と黒崎が仲良くなったのか、幼なじみの蒼空でも全く理解できなかった。
「なんか分からんが、授業寝てるとこを一生注意されてたらいつの間にか仲良くなってた」
「意味わかんない普通仲悪くならないのそれ」
「俺もよくわかんねえんだよ」
中学の授業を全部寝ていた黒崎だが、中学3年生の時に初めて同じクラスになった霧島に注意されるようになったのだ。
「なんか分からんが、話しかけてくるやつが珍しかったから、ちょっと面白かったんだよな」
「あーー、だからいじるようになったのか」
「だってあいつおもろいだろ?ちょっといじったら顔真っ赤にして怒ってくんだよ!あんないじりがいのあるやつ中々いないだろ?」
黒崎は満面の笑みで霧島の面白さを語り始めた。
(楽しそうでなによりだなあ)
いつも黒崎をいじる蒼空だが、あまりに楽しそうに話す黒崎を見て今だけはいじることができなかった。
「おい、なんで黙ってんだよ」
「ああ、いやなんでもない」
「?」
よく分からないことを言う蒼空に困惑する黒崎である。
「それで、結局なんでタバコとか喧嘩やめたの?」
大体委員長関連でやめたという想像は付いているが、蒼空には明確な理由はよく分からなかった。確かに黒崎にはそういうものはやめて欲しかったのだが、気づいたらキッパリやめていたので不思議だったのだ。
「龍ちゃんにどんな心変わりがあったのか気になる」
蒼空は意外にも結構真面目な顔して聞いた。
「中3の時に、友達にいじりがいのあるとある女の子がいたんだが、、」
「とある女の子」
(なんで急に隠した?)
「そいつにタバコを吸ってるとこを見られて、激怒されて口聞いて貰えなくなって」
「ほうほう」
(委員長タバコ嫌いだもんなあ)
「どうやったら仲直りできるか途方に暮れてたら喧嘩吹っかけられて集中できなくて初めて負けたんだ」
「ほうほう」
(恋する乙女かよ)
「それでボロボロの状態をたまたまその子に見られてめちゃくちゃ泣かれたんだ」
「ほうほう」
(凶暴な委員長でも泣くことあるんだ)
「それでだな、、」
「ほう」
「その、、なんだ、、、いつも仲良くしてるやつの悲しい顔なんて見たくないし、、仲悪くなったりするのも嫌だろ、、?」
「ほうほう!」
(もう好きじゃん!)
「だからそういうのは今は自粛してるんだ」
「まさか龍ちゃんが平和になったのは委員長のおかげだったとはね」
「そうだな、なんだかんだあいつには日頃から世話になってる」
「ニヤニヤ」
蒼空は不敵な笑みを浮かべた。
「なんだニヤニヤして、、、っていや別に委員長こととは言ってないぞ!?!?」
「龍ちゃん委員長のためにタバコも喧嘩も辞めるとかまじで委員長のこと大好きなんだね」
「だ、だから違うって言ってんだろ!」
「いや今の流れで違うわけないでしょ」
「ち、違うと言ったら違うんだよ!」
「なんか龍ちゃん最近委員長に似てきたよね」
「う、うるせえ!」
「ふふふ」
黒崎の謎をまた1つ解明し、ついでに沢山いじることができて満足気な蒼空であった。
「悪いわね手伝ってもらっちゃって、、」
「ったくクソ教師が、こんな量のプリント女の子1人に持たせんじゃねえよ」
放課後、霧島は委員長の仕事で担任から大量のプリントを運ぶのをお願いされていた。しかし、あまりの量に途方に暮れていると通りかかった黒崎に助けてもらったのだ。
(やっぱなんだかんだ優しいのよね)
本人に善意があるかどうかはよく分からないが、やはり黒崎は優しい。
「あ、手伝ったからアイス奢りね」
「はあ、、」
前言撤回、やっぱり優しくは無いかもしれない。
「委員長って夏休み何か予定とかあんの?」
「予定?」
あと数日すれば夏休み、霧島はインドア&友達が少ないので予定なんてほとんどない。
「まあ、勉強ぐらいかしらね」
「うえーつまんねー」
「悪かったわねつまらなくて」
特に趣味のない霧島にとって夏休みなど勉強くらいしかすることが無い。
「お、そういや夏休み初週にお祭りあるらしいけど行く?」
「は、、、!?」
霧島は突然のデートのお誘いに驚いてプリントを全てぶちまけた。
「おいおい何やってんだよ!」
「ご、ごめんなさい、、」
2人は落ちたプリントを必死にかき集めた。
「どうした急に、疲れてんじゃねえのか?」
「い、いやだって、、!そ、その、、、2人で夏祭りとか、、、そんなの、、、」
「ん?、、、、、いや違えよ!?!?」
黒崎は自分の発言のミスに気づいた。
「普通に蒼空とか星宮とかも誘ってみんなで行こうって話!!」
「そ、そうよね!そんなわけないわよね!」
(か、勘違いしちゃった、、恥ずかしい、、、)
霧島は顔を真っ赤にして俯いた。
「それに別に俺と2人で行っても面白くねえだろ」
「確かに面白いかどうかは分からないわね」
「いや酷いな」
ストレートな言葉に少し傷ついた。
「でも、黒崎くんと一緒なら安心してお祭りが楽しめそうね」
「そ、そうか、、」
霧島の曇り1つない表情で放った言葉に黒崎は顔を合わせることができず、そっぽを向いた。
(鈍感なのか鈍感じゃねえのかよくわかんねえなこいつは)
人から言われた言葉には敏感なのに自分で言った言葉には鈍感な霧島に少々参っていた。
「前みたいにナンパ来たら戦うんじゃなくてちゃんと逃げろよ?」
「大丈夫、あんたに引っ付いて歩けばその心配はないわ」
「そ、そうかよ、、」
その光景を想像すると黒崎は少し恥ずかしくなった。
(自覚症状ねえのも困るなほんと、、)
霧島の鈍感発言に一々参ってしまう黒崎であった。




