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繰り返す日常の中で。  作者: 理春


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第22話

無情にも俺と理人の関係はいつしか、血族者という所から一歩も動かなくなった。

最初からそれは変わらないのだけど、まだまだ脳内が幼かったあの頃から、俺と理人は身内以上に、それ以上に永遠に愛し合って行けるものだと思い込んでいた。


けど蓋を開けてみたらどうだろう。

理人は日々一生懸命生きながら、自分の将来や好きな人のことに悩みながら、俺のことを気遣っては気を回して、地雷を踏まないように接しているように見える。


自信なさげに俺に寄り添う理人の頭を、肩で抱えながら何となく小さな音で流し見ていたテレビ番組は、きっと俺たちの頭に少しも入ってこない。

もう諦めて終わらせたんだから、これ以上何もしようがない。


・・・・諦めた先は・・・・どうするの?


頭の中でどうしてか、いつか話した卯月さんの声がする。


それなら・・・・・俺が一緒に居てもいい?


「ふん・・・・」


脳内でフラッシュバックした卯月さんのセリフに、思わず失笑が漏れた。


彼は、人付き合いがそこまで上手いほうじゃないのかもしれないし、恋愛下手だと自覚してた。

口説くのも下手で、その割にベッドの上では要領よくて

素直な気持ちを口にする人で、何考えてるかわからないようで単純で

けど・・・人間ってものが・・・少なくとも俺が、寂しく見えるという本質には気付いていた。


寂しくてたまらない俺が、何かを期待して一緒にいたことは、理解してた。


俺は自分にガッカリしてたんだ。

諦める諦めないだのゴチャゴチャ考えてるフリして・・・

とっくに気持ちが変わってしまってることを認めたくなくて、棚に上げてた。


「理人・・・」


「・・・ん~?」


お兄ちゃんな俺に甘えずにいられない理人は、頭を預けたまま気だるく返事をした。


「俺さ、好きな人が出来たんだ。」


肩がそっと軽くなって、理人はまたさっきみたいにじっと俺を見つめた。


「その人が・・・突然もし死んじゃったとしたら、心底後悔すると思った。まだ何も叶えてないじゃないかとか、一緒にどこどこに行きたかったとか、ちゃんと気持ちを伝えてないだとか、そんなことをぶちまけたくなるに決まってるんだ。理人を心底愛してる自分は変わらないけど、俺の気持ちはそれだけじゃなくて、その人に動かされた気持ちを、大事に覚えてたり、思い出したり、また会いたいなと思ったり、そう思うように変化してたんだって気付いたよ。」


卯月さんが俺を変えてくれたとか、そういう大層なことじゃない。

単純に、彼に惹かれている自分がいる。会いたいと思う自分がちゃんといるんだ。


「・・・・・えぇ~~~?何それぇ・・・もっと灯くんの恋バナ聞きたいんですけど!」


興奮を抑えられないように理人は口元に手を当てて言った。


「・・・そこまで話せるほど、まだ親しいってわけじゃないかもしれないけどね・・・」


「え、え・・・どんな人?イケメン?」


「・・・まぁ・・・相当イケメンだと思うよ。」


「え~~~~!!ずっる!!俺に紹介してくれてもよくない!?」


「あ~・・・そうだね。理人のお相手として紹介してあげるのも一つの手だったかなぁ。」


「いやいや冗談だけど・・・。え~写真ないの?」


「・・・写真・・・。」


言われてみれば、デート中に写真撮影なんてしたことなかった。

もしかしたら寝ている間に盗撮されている可能性はゼロじゃないけど・・・


「・・・写真はないけど・・・もしかしたら理人は会ったことあるかもしれないよ。」


「へ・・・?どういうこと?」


「・・・T大の生物学の准教授なんだ。・・・職を偽って無ければだけど・・・」


「生物学・・・・・・・・・あ~・・・・え・・・もしかして・・・卯月准教授?」


「うん、やっぱり知ってる?」


「・・・・俺は講義受けたことないけど、一回だけ学食で見かけたことあるよ。話したことはないけど、有名人だし。」


「そうなの?」


「そりゃ~あのルックスと若さで准教授なんて滅多にいないし・・・。頭いい上に生徒からも好かれてて、先生方からも評判いいらしいし・・・。」


「へぇ・・・・・逆に怪しいね。」


「えぇ!?逆ぅ?」


「いい?理人・・・そういうイケメンは裏で何をやってるかわかんないんだよ?」


「・・・・それ・・・灯くんが言うの・・・注意しろって意味で俺が言うならわかるけど・・・少なくとも多少はデートしたりで交流あるんでしょ?」


「まぁ・・・でもイケメンな上にセックスも上手いってちょっと腹が立つじゃん。」


「えぇ・・・?そう?・・・俺灯くんに腹立ったことないよ?」


「はは・・・俺はイケメンじゃないでしょ。」


「えぇ・・・無自覚・・・。んまぁ本性がどうあれ、逃すと後悔するレベルのスパダリなのは言うまでもないね。」


「ふふ・・・」


当の本人は見た目だけで大した中身もないという自覚の元、ちょっと自信なさげで、俺の顔色窺う可愛い子犬みたいな一面もあるのに。


「へぇ~灯くんじゃあ、卯月先生とお付き合いする感じ?」


「・・・・先生って聞くと悪くない響きだなぁ・・・」


「・・・なんで?」


「高校生の時、体育教師のイケメンで色黒な、いかにもスポーツマンって感じの先生に誘惑されてさ、ちょっとエッチなことされたことがあって・・・。後、興味もないのに何となく科学部だったから、そこの隠れイケメンっぽい白衣の先生にも誘惑されたことがあって・・・それはそれで美味しい展開だったなぁとか思い出すし・・・」


「おおん・・・灯くん・・・何か苦労多いな・・・」


「そういうエロいハプニングは大歓迎だからいいんだよ。二次元脳にはたまらないというか・・・。そういえば普段、講義以外は学者として研究が仕事らしいし・・・そういう意味では白衣着てる人なのかな。」


「あ~そうじゃない?俺が学食で見かけた時はさすがに私服だったけど、ラボで働いてる先生とかなら、当然白衣でしょ。」


「そっかぁ・・・。いいなぁ・・・・。」


理人は再びニヤニヤしながらソファに置いてあったクッションを抱えた。


「いいこと思いついた。仕事中の様子が気になんならさ~大学に講義受けに来たら?」


「え・・・俺が?」


「うん、先生が先生してる白衣姿も見れるわけだし、灯くんが平日に休みとか取れたら、大学は誰でも講義受けられるし、いいじゃん。」


思いもつかなかった提案に、まさに目から鱗だった。


「確かに・・・何それ面白そう。」


「でしょ?俺生物学の講義なんか受けたことないから、どこらへんの教室か知らないけど、灯くんが来る前に調べとくから。当日来てくれた時に案内するよ。」


「理人・・・なんていい子なんだろう・・・。」


思わずぎゅっと理人に抱き着いて、頭をなでなでした。


「大好きだよ、理人♡」


「えへへ・・・俺も大好き~。・・・あ~あ・・・」


「ん?なあに?」


体を離すと、理人は少し寂し気に視線を動かしながら頭をかいた。


「ん~・・・灯くんと親戚じゃなくて他人だったら・・・好みどストライクだし、すぐ付き合ったのになぁとか考えちゃうし・・・それは俺の悪い所だけど・・・。んでもそうじゃなくても、灯くんが誰かと一緒になるかもしれないって思うと、ちょっと焼きもちはあるじゃん。」


「・・・・」


以前までならそんな理人の戯言に心乱されて、情緒不安定になっていた気がするけど、自分でも驚くほど客観視出来ている気がした。


「生まれ変わったらそういう世界線もあるかもね。」


「ふふ・・・その時は俺が灯くんを幸せにするわぁ。」


「ふふ・・・ありがとう・・・」


また人懐っこい笑顔を向ける彼を見て、卯月さんの子供っぽい可愛い笑顔も思い出した。



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