第17話
『真実か挑戦か』、それは1対1、または複数人でも楽しめる、相手との心理戦ゲームと言っていいだろう。
道具は何も必要としない、相手との対話だけで成り立つシンプルなゲームだ。
お題を設ける側と、答える側に一人ずつ分かれ、回答者側はまず真実か、挑戦かを選ぶ。
真実を選べば、出題者のどんな質問にも真実で答えなければならない。
挑戦を選んだ場合は、出題者のどんな無理難題でもやってみせないといけない。
少し王様ゲームに似通っているけど非なるものだ。
「卯月さん、じゃんけんしましょう。」
「え、うん。」
順番はフェアに選ぶ。ゲームの主導権が常に入れ替わるのが特徴のゲームだ。俺から始めてしまってはいけない。
じゃんけんの結果、結局俺が勝利して始めることになった。
「じゃあ卯月さん、真実か・・・挑戦か?」
「・・・ん~・・・」
さぁて・・・どっちを選ぶかにもよるけど、どういう質問でいこうかなぁ・・・
「じゃあ・・・真実で。」
出来れば卯月さんに忖度させたくない。彼が俺に優しいのはもうわかりきっているし。
「わかりました。そうですねぇ・・・」
卯月さんの何を知りたいだろう。暴露させるレベルのことを聞かないとゲームの意味がない。
1対1で誰も周りにいないわけだし、この状況では何でもいいも同然。
「あ、じゃあまぁ適当ではありますけど、若干恥ずかしいような質問からにしましょう。・・・経験人数は?」
まずはジャブから。
「経験人数・・・・・・えっとぉ・・・」
「真実選んだんですから、絶対本当のこと以外言っちゃだめですよ?」
「ふふ、うん。・・・灯を入れるなら3人だよ。」
「さ・・・・そうですか・・・若干少ないよう気がしないでもないですけど・・・まぁ・・・」
「そう?」
「まぁいいでしょう!次、卯月さんどうぞ。」
「ふふ・・・真実か、挑戦か?」
「・・・じゃあ挑戦にします。」
卯月さんは薄ら笑いを浮かべて、胡坐をかいて座ったまま手を差し出した。
「じゃあキスして。」
「そんなんでいいんですか・・・」
「うん。」
俺は手を取ってそっと近づいて顔を寄せて、軽く唇を重ねた。
じっと綺麗な瞳を近くで覗くと、少し気恥ずかしそうに照れた表情を返される。
「・・・俺は次も真実で。」
「はい、じゃあ・・・・・・・・」
じっと上目遣いで彼を窺いながら、この人の何を暴きたいか考えた。
「・・・本当のところ、俺とどうなりたいんですか?卯月さんの欲望のままの答えが聞きたいです。」
「欲望・・・」
「はい」
彼は少し思案するように視線を落としてから、側にある俺の頬を撫でた。
「独り占めしたいよ。・・・ずっと・・・3か月くらい会えない間、自分でもびっくりするくらい・・・灯のことばっかり考えてた。」
どこか悲しそうに告げる彼は、吐露するように続けた。
「灯が言うように、この年になって誰かを・・・本気で好きになることを、自分でも想像してなかったし、先のことを少し考えもしたよ。・・・でも普通に日常を過ごしてる中で、ふと灯のことが頭に浮かんで、連絡に一喜一憂して・・・不思議な感覚でもあったけど、これが恋煩いなのかなぁって、ちょっと自分で可笑しく思ってたなぁ。」
また幸せそうな笑みを浮かべて、気を取り直すように言った。
「どうなりたいっていう具体的な形はないけど・・・欲を言うなら今すぐ食べちゃいたいよ。」
「・・・・」
思っていた以上の返答が来て、俺は返す言葉もなくフリーズしてしまった。
「・・・無言はオッケーってことかな?」
楽しそうにクスクスする彼を窘めるように見つめ返すと、彼は俺の隣に座りなおして手を握った。
「次は俺が提示する番だよ。」
「・・・じゃあ真実で。」
「オッケー・・・そうだなぁ・・・・・灯は強引に迫る男が好きみたいだけど、気持ちよさに溺れて俺と会う頻度が高くなったら、もう俺を恋人として認識してくれる?」
「・・・面倒くさいことを強いられなければ、別にそれでもいいです。」
「そうなんだ。」
「でも俺からすると、あまりにも卯月さんみたいなタイプの男性が未知なので、友達である期間があったほうがいいのかなと思ってます。」
「なるほどね。」
「それに漫画とかゲームでもそうですけど、いや!もう付き合わんかい!みたいなじれったい関係の間って、なんか盛り上がっていいじゃないですか!」
「ふふ・・・そう?灯がそれでいいならいいかなw」
デレデレして笑う彼を見て、ふと気が付いた。
調子を崩されるなぁと思うのは、反論してもいいことを彼が受け入れるからだと。
思えば最初からそうだった気がする。
卯月さんは楽しそうに手を繋ぎなおして言った。
「今度は挑戦で。」
「挑戦かぁ・・・ちょっと待ってくださいね、考えるんで。」
・・・・・・・・・・ダメだ、イケメンに抱かれたいしか脳内に浮かばない。
何でもしてくれるゲームなんだから、熟考しろ俺!
俺がじっと考え込んでいると、卯月さんはぴったり体をくっつけて座って、肩に頭を預けて来た。
そしてあろうことか、甘えるようにスリスリする。
「・・こ・・・子犬系イケメン・・・」
「ん?」
ダメだ、どうしてもオタク脳が発動しちゃう。
「じゃあ卯月さん、どんどんセクシーになっていくために1枚脱ぎましょうか!」
あぁ欲出ちゃった・・・
「そんなことでいいの?」
「そんなことだとぉ?」
「ふふwオッケー。」
彼は俺が貸したスエットの上着を脱いで、長袖の肌着姿になった。
ピッタリタイプの肌着が、体のシルエットを浮き彫りにさせて、これはこれで・・・
「けしからん・・・」
「ん?」
「卯月さんの番です!」
「じゃあ真実か、挑戦か?」
「俺も挑戦で。」
「ふふ・・・どうしようかなぁ・・・・・・じゃあ」
卯月さんのことだから、子犬系が加速して、撫でてとか、ぎゅっとして♡とかだったりして。
「灯は下のスウェット脱いで。」
「・・・・へ?」
いつもと変わらない優しい笑みで言うので、まぁ仕方ない
暖房もつけてるし特に寒くはないので、大人しく脱いだ。
すると卯月さんは頭を撫でるどころか、露になった俺の太ももを撫で始めた。
「ちょっ・・・くすぐったいです。」
「そう?・・・・どの程度で反応するのか・・・見たかったんだよね。」
??!
言わずもがな、そこでゲームは終了した。




