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 学園が始まって一か月が経過した。忙しいながらもなんとか学園生活を満喫できている。今日はこれからレイナルド殿下とお兄様と一緒の授業がある。教室に入ると私は全体が見渡せる後ろの席に座った。

 ここからだと前の方に座っているレイナルド殿下をよく観察できる。レイナルド殿下とお兄様の周りは常に生徒達でいっぱいで、その周囲にみんながかたまって座るので遠くの方の席は割とすいている。近くに座るのもいいが、レイナルド殿下をよく観察できるこっちの席の方が私のお気に入りだ。

 レイナルド殿下はいつも姿勢よく座り、授業が始まるまで完璧なアルカイックスマイルを絶やすことなく近づいてきた生徒達の話に耳を傾けている。隣に座るお兄様も同様だ。お兄様はレイナルド殿下の隣に座っているが、レイナルド殿下の反対側の隣に座ってはいけないという不文律でもあるのか、逆サイドの席はいつも空いている。アドレアン様がいればアドレアン様がそこに座るのだが、一般の生徒が座ることはない。

 レイナルド殿下のいる授業はどれもこんな感じだ。レイナルド殿下を中心に人だかりができ、やや遠巻きに取り巻いて授業が始まるまで、完璧なアルカイックスマイルを浮かべ続けるレイナルド殿下に話しかける生徒が絶えない。これじゃあレイナルド殿下は気の休まる時がないだろう。昼休みに王族専用席で食事をとる時が唯一ではないだろうか。王族の苦労を垣間見た気がした。私がレイナルド殿下の心を休める場所になれればいいのに、ふとそんなことを思った。慌てて頭を振って思考を打ち消す。そんなことを思ってしまうあたり、思っていた以上にレイナルド殿下に惹かれているのかもしれない。授業中も気を抜くとずっとレイナルド殿下を眺めてしまっているし。このままいけばそのうちレイナルド殿下の姿絵でも自室に飾るようになりそうだ。そんな自分を想像して心の中で苦笑した。



 講師が入ってきて授業が始まると、レイナルド殿下を取り巻いていた生徒たちは席に戻っていく。レイナルド殿下が選択している講義は、レイナルド殿下が選択しているというところからもわかるように貴族の生徒が多い。中にはレイナルド殿下目当ての令嬢方もいるが、その多くが家を継ぐことになったり政治にかかわることを志望する子息達だ。平民の生徒は多くない。だから講義の内容も家で家庭教師から教わっていることを前提に進められる。平民中心の授業ほど難易度は高くない。だがその分、実際に必要になる生徒達を相手にしているために実践的な内容となる。実際にあった事例などを基にして授業が進められていくため非常にためになる内容になっていると思う。

 授業自体はとても面白く、あっという間に時間が経ってしまう。なので少し複雑でもある。授業に夢中になってしまうとレイナルド殿下の観察ができないのだ。せっかくのなかなかない機会なのに。クレアとの約束もあるし、私個人としてもレイナルド殿下のことをもっと知りたいと思うので、正直なところを言えばもっと観察していたい。残念だ。

 授業中、たまに講師に指名されてレイナルド殿下が発言することがある。そんな時には私も他の生徒と一緒になって、レイナルド殿下の言葉を一言一句聞き洩らさないように耳をそばだてている。レイナルド殿下の意見は端的で無駄がなく、その聡明さをよく表していると思う。講師も感心しているし、もちろん生徒達もだ。それでいておごることなく、講師や他の生徒の意見にもよく耳を傾けている。そしてお互いの意見を尊重した折衷案を出してくれたりするのだ。授業に出席するだけでレイナルド殿下はファンを増やしていると思う。私も負けてはいられない。人生は2度目だ。レイナルド殿下と同等とまではいかなくても、2度目の人生に恥じない程度には優秀でありたいものだ。それに、出来が悪くてレイナルド殿下にがっかりされてしまうことが怖かった。大したことない子だと思われたくなかった。レイナルド殿下の中でちょっとでも特別な枠にいたくて、それがまた私の原動力になっている。

 やっぱり、レイナルド殿下の姿絵を自室に飾る日も遠くはないのかもしれない。



 


**********





 アドレアン様と一緒の授業は、レイナルド殿下と一緒の授業とはまた少し違った。まず、教室が遠い授業が多い。理由は不明だが前の授業の教室と離れたところで行われる授業ばかりなのだ。だから必然的に教室に入るのがギリギリになる。そのせいで席が空いていなくて、空いている席に座ろうとするとどうしてもアドレアン様の隣に座ることになるのだ。

 アドレアン様はレイナルド殿下と違って遠巻きにひそひそされていることが大半だ。なので空いている席はアドレアン様の周囲に固まる。そこにギリギリにやってきた生徒が遠いところから順番に座っていくものだから、気づけばアドレアン様と隣で仲良く授業を受けることになるのだ。






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