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「うん、いいと思う。ルーチェ素晴らしい。私なんか21コマにしかならなかったよ。」


「クレアはオルファス様みたいに先に必要単位を取り切ったりしないの?」


「しないよ。

 オル兄ったらルーチェみたいな履修の仕方してたんだよ?そんなの真似してらんないって。私は早くに領地に戻る予定もないしさ。

 いい機会だから文学の講義とか詩作の講義とか受けてまったり恋愛小説に染まりながら過ごす予定なの。」


「それも素敵ね。私も今度はそういう授業をとってみようかしら。」


「王子殿下達が卒業したらね。

 けどそれだけ授業受けて生徒会もあるんでしょ?私達の魔法と料理の特訓もあるわけだし。忙しいんじゃない?大丈夫?」


「うっ。

 体術や剣術の授業の成果に期待してる。」


「クリストフ様みたいに休日も鍛えなきゃいけなくなるかもね。」


 クレアの言葉に私はいつかのお兄様みたく遠い目になった。





**********




 

 無事履修登録も終わり、明日から正式に授業が始まることになる。といっても明日から2週間はまだ仮の期間だ。そこで授業を受けてみて履修を決めたり取り消したりできる。私は既に履修の希望を提出済みだが変更も可能だ。今日までに履修科目を決めていなかった場合、授業の初日に出られなくなる可能性があるのでそれはもったいない。初日は授業の解説や方針についての話など実は大切な話がされる日なのだ。やはり早めに履修科目を決めてきてよかった。あらためてアドレアン様に感謝する。

 


 明日から授業開始ということで今日は応用講義の説明や単位取得のシステムについての説明などで早めに学園が終わる。その後は生徒会の打ち合わせだ。私は食堂でクレアと一緒に昼食をとってから生徒会室に向かった。



 私の生徒会活動は、まず第一にアドレアン様を探すことに始まる。今日も生徒会室にカバンを置いた後はアドレアン様の捜索に出てきた。生徒会室から出て廊下の窓を開ける。今日はあまり風が強くない。そして時間が早いこともあってたっぷりと日が差し込んでいる。温かく過ごしやすい陽気だ。私はあたりをつけて中庭のガゼボへと向かった。



 今日はまだ授業が始まっていないので、校舎内に人は少ない。いつもあまり人の来ない中庭となるとひときわだ。中庭全体がアドレアン様の貸し切りのような状態になっている。アドレアン様は中庭の端にあるガゼボに座って、腕を組んだまま眠っているようだった。

 私が近づくと物音に気付いたのか、アドレアン様が身じろぎした。伏せられていた長い睫毛が持ち上げられていく。見た目だけなら最高にかっこいいのだが、いかんせんこのサボり癖がいただけない。社交もあまりしていそうにないし、婚約者になる人は大変だろう。そんなことを思いながら見ていたのがいけなかったのか、アドレアン様がこっちを見た。あろうことかそのまま目を閉じた。私は慌ててアドレアン様に声をかける。


「アドレアン様!久しぶりに会ったって言うのにどうしてそんな態度なんですか。感動の再会はどこへ行ったんですか。」


 アドレアン様がわずらわしげに目を開ける。こっちを見てあくびをした。


「感動の再会を演出してください!前からずっとそう言い続けているじゃないですか。」


「そんなに言うならお前がやってみろよ。」


 うんざりしたようにアドレアン様は言う。なんか悔しい。

 私は意を決してアドレアン様に飛びついた。


「アドレアン様、お会いしたかったです!」


 アドレアン様は抱き着かれたままひとつため息を落とす。


「安っぽい。お前の感動はこんなもんか?」


「うっ。」


 言われてみると確かにそうだ。感動の再会のイメージがわかなくて、陳腐な芝居になってしまった。


「そろそろ離せ。人に見られるとまた噂になるぞ。」


 言われてぱっとアドレアン様から離れた。


「感動の再会のイメージは長く離れ離れになっていた恋人同士の再会シーンなんですけど、実際やろうとすると具体的なイメージがわきません。」


「だろうな。俺もわかない。いったいどこに何を付加すれば感動を演出できるのか想像もつかない。

 そもそも頻繁に手紙でやり取りしている時点でそんなに久しぶりな気分に思えない。」


「そんなこと言わないでやりましょうよ、感動の再会。

 あ、手紙は今日も持ってきましたよ。」


 制服のポケットから手紙を出してアドレアン様に渡す。


「その節はありがとうございました。大変助かりました。返事をせかしてしまったようで申し訳なく思っております。このお礼はまた改めてさせていただきます。」


 深くお辞儀をする。今回の履修登録がスムーズに進んだのはすべてアドレアン様のおかげだ。これだけはしっかり伝えておかなければ。


「急に畏まったな。その様子だと履修登録は無事にすんだのか。」


「はい、おかげさまで。レイナルド殿下にまでご迷惑をおかけしてしまいましたけど。」


「ギリギリだったからな。」


「すっかり忘れてました。辺境色に染まっていたというか。」


「なんだよ、それ。

 そんなことより俺を迎えに来たんだろ。そろそろ行かなくていいのか。」


 そうだった。また忘れるところだった。私はアドレアン様に促されるまま生徒会室に向かった。これじゃあ完全に立場が逆だ。


(しっかりしないと。)


 気合を入れなおした。





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