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お兄さま達の鍛錬を見学した翌日。私達はまた図書室に集まっていた。辺境伯夫人とクレアとのお茶会再び、だ。
「昨日は楽しかった?」
席に着くなり開口一番、辺境伯夫人が問いかけてくる。
「王都で見学した鍛錬と全然違ってカルチャーショックのようなものを受けました。やっぱり辺境というのは過酷な地なんだと思い知らされましたわ。
それに、クレアが想像以上に強かったことにもびっくりしました。
お兄様がこんな鍛錬に混ざって大丈夫なのかと、ずっとハラハラしながら見ていたせいで疲れてしまって、おかげで昨日の夜はぐっすり眠れましたわ。」
「オル兄もかっこよかったしね。」
クレアが意味ありげに言う。思っていたよりクレアはお兄さん子なんだろうか。ウィリアム様も活躍していたと思うのだが、オルファス様の方が好きなのだろうか。
「あら、クレアも鍛錬に参加したの?私も参加すればよかったかしら。
でも小説が私を待っていたのだから、それを裏切って参加するなんてできなかったのよね。残念だわ。」
「もちろんですわ、お母様。
クリストフ様を打ち負かしました。」
「クレアがあんなに強いと思っていなかったから、お兄様の心配ばかりしてしまってクレアの応援どころではなかったわ。」
「うんうん、知ってる知ってる。
ルーチェはそれどころじゃなさそうだったもんねー。」
どうしたのだろう。クレアの様子がなにか変だ。さっきから意味ありげな視線を向けられている気もするし。どこかニヤニヤしている。
「それに、外でみんなで食べるごはんも美味しかったわ。
ね、ルーチェ。」
まただ。クレアが私を見てウインクをした。何が言いたいのだろう。考えつつも言葉を紡ぐ。
「お兄様があんなに食べているところも、あんなふうに食べているところも初めて見たわ。
いつもは上品に適度に食べているもの。あんなにがつがつ食べていることなんてないのよ。だからちょっとびっくりしたけれど、そういうのも健康的でいいと思うわ。たくさん動いて、たくさん食べて。なんだかすごく幸せじゃない。」
「そうね。クリストフ様もこっちに長くいたら、都会の優男を卒業して健康的で逞しい男になれること間違いなしよ!
ワイルドイケメンのクリストフ様っていうのもちょっと興味あるなぁ。」
「たしかに。ちょっと見てみたいような気もしてきたわ。
ここに来て鍛錬を見るまではそんなお兄様気持ち悪いと思っていたのに。不思議だわ。」
「気持ち悪いなんて言っちゃダメよ、ルーチェちゃん。
都会派イケメンには都会派イケメンの、ワイルドイケメンにはワイルドイケメンの魅力があるんだから。
恋におちて途中でシフトチェンジする男性も物語の中には登場するじゃない。それを私達はいつもときめきながら見守っているんだから。」
「それもそうですね。
恋におちて今までの自分とガラッとかわってしまう男性。それも素敵です。
特に軟派な男性が一途になったり、ひょろひょろだったのに鍛えて騎士になったり、とか。ときめき要素の塊です!」
「そうでしょう?人っていうのは可能性の塊なのよ。特にロマンチックな方面でね。」
「そうそう。おとなしい王子様の婚約者だった侯爵令嬢が辺境伯子息と出会って、人が変わったように激しい恋をして辺境に嫁いだりすることだって十分にありえるのよ。
私には王子様がいるのに。私は侯爵家令嬢なんだからそんなこと許されないってわかっているのに。それでも彼に惹かれていく心を止められない。いけないことだってわかってるけど、自分の本当の心に嘘はつけない!
ロマンよ!!」
さっきからクレアの発言がところどころ引っかかる。私の考えすぎだろうか。
「そうよ。ルーチェちゃんが王子殿下を捨ててうちに嫁いできたって誰もあなたを責めたりしないわ。少なくともうちでは絶対ね。だって恋におちちゃったんだもの。仕方ないわよ。
それで、ルーチェちゃんはどっちが好み?」
「は?」
「ウィリアムとオルファスよ。」
「当然オル兄に決まっているわよ、お母様!」
「そうなの?」
「そうよ!そんなこと聞いたら野暮ってものよ。」
「え?ちょっと待って、クレア。野暮だなんて何言ってるのよ。」
「何言ってるのは私のセリフだわ。昨日だってあんなにお熱かったじゃない。」
「は?昨日?」
「もうっ、とぼけないでよ。私ちゃんと見てたんだからね!
ルーチェがオル兄と熱く見つめ合ったり、手をつないでたりしたの。」
首から頭のてっぺんまで一気に血が駆け抜けていくのを感じた。今の私はきっと真っ赤になっているのだろう。自分でもそれがわかるほど顔が熱かった。
「クレア、それは本当?」
「本当ですわ、お母様。ルーチェの反応を見れば火を見るより明らかでしょう。」
「・・・そうね。若いっていいわね。
具体的にはあなたは何を見たの?」
(もうやめてー--!!)
私は真っ赤な顔を押さえながら心の中で叫び声をあげた。




