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 踊った後、オルファス様は軽食をとる私についてきてくれた。クレアが言っていたようにエスコートしてくれるらしい。オルファス様と一緒にいたおかげでご令嬢方の視線が和らいだような気がする。みんな私よりオルファス様に目を奪われている気がするのだ。ちらほらと気にしているような視線は感じるのだが、誰も話しかけては来ない。

 オルファス様は話しかけるにはかっこよすぎるのだと私は思う。見た目も整っているし、何より都会の男性にはない野性的な魅力が話しかけるのを躊躇させるのだ。話してみれば意外と気さくで話しやすいと思うのだが、そこにいくまでのハードルが高い。でも気になるのに話しかけられないというところがより一層女性心理をくすぐっているんじゃないかとも思うので、オルファス様の印象は危険人物のままだ。私もいまだに、気を抜くとくらっといってしまうんじゃないかという危機感を感じている。


「兄君は相変わらず女性から大人気だな。」


 オルファス様に言われてお兄様に視線を向けると、たしかにご令嬢方に囲まれている。けれど気のせいでなければ先ほどよりはご令嬢方の壁が薄くなったような気がする。


「もてる男性というのも大変なんだな、というのを我が兄ながら思い知らされましたわ。」


「俺なら無理だな。好きでもない女とそうそうずっと踊ってなんかいられる気がしない。」


「私も遠慮したいですわ。そもそも体力が続く気がしません。

 舞踏会っていうのは体力勝負なんですわね。」


「これは正式な舞踏会じゃないから踊るだけだが、正式な舞踏会になれば挨拶が増えてくる。華やかなだけじゃないことだけは確かだな。」


「オルファス様は正式な舞踏会に参加されたことがおありですか?」


「俺は16だからデビューしたよ。

 うちの親なんかは社交を避けて回ってるが、それでもそれなりに挨拶は避けて通れなかったからな。ルーチェリア嬢はデビュタントの時大変なんじゃないか。」


「そうなんですね。デビュタントなんてダンスのことしか考えてませんでしたわ。」


「ああ、ご令嬢は王子殿下とのダンスがあるからな。クレアの妄想が爆発しないか心配だ。」


 なんとなくレイナルド殿下を見ると、こちらもご令嬢方に囲まれている。お兄様と違って踊っていないぶん、周囲を囲むご令嬢方は減りそうにない。


「前から思っていたんだが、王子殿下を囲んで何をしているんだ?踊ってもらえない時点でやることなんかないだろ?」


「踊っていただけなくても、お話したいとか、少しでも目に留まりたいとか、いろいろあるんだと思います。」


「ふうん。ルーチェリア嬢は行かなくていいのか?」


「あの人垣を見ると近づく勇気が失せてしまって。それに私は生徒会でもご一緒していますし、レイナルド殿下に関わる機会はそれなりにあるので。」


 納涼会が始まる前は、私もレイナルド殿下と踊りたいと思っていた。思わぬところでその望みは叶ったのだが、もしそうでなかったとしてもあの人だかりに混ざることはできなかった気がする。勢いがすごすぎてどうも気後れしてしまうのだ。そんなんじゃクレアには怒られそうだが、それでもあれはさすがに勇気が出ない。



 そのままオルファス様と一緒に食事をしたり、おしゃべりをしたりを続けていると閉会の時間が近づいてきた。レイナルド殿下を囲んでいたご令嬢方が名残惜しそうに離れていく。レイナルド殿下が退場すれば本格的に閉会の準備が始まる。ようやくお兄様が戻ってきた。入場したときに比べ、心なしかくたびれている気がする。クレアもいつの間にか近くに来ていた。お兄様がオルファス様に挨拶がてらお礼を言っているので、私もクレアに話しかけることにする。


「クレア、今日はオルファス様を貸してくれてありがとう。」


「どう?役に立った?」


「うん、ばっちり。オルファス様のおかげでご令嬢方からの視線が紛れた気がする。」


「今日のところは、ね。カタル様の色を着てあのカタル様と踊ったという事実はなかなか消えないわよ。」


 クレアはものすごく楽しそうに言う。私は明日からの学園生活が思いやられた。


「結局クレアは踊らなかったの?」


「踊らないわよ。時間がもったいない!せっかく他人の恋路を堂々と見守るチャンスなのに。おかげで今日はいろいろと楽しめたわ。

 ルーチェは兄貴とも踊ってたわよね。どうだった?」


 身を乗り出して聞いてくるクレアに苦笑して、私は答えた。


「オルファス様で妄想してたのがバレちゃって、挙句どんな恋愛小説が好きなのか聞かれた。」


「あはは。兄貴で妄想してたの?おもしろそうなのできた?」


「何言ってるのよ、クレア!オルファス様よ?魅力的なもの以外できるわけないじゃない!」


 両こぶしを握り締めて力説する私に、珍しくクレアがちょっと引いている。


「え?兄貴そんなによかった?」


「当然よ!今だってうっかりしたらくらっといきそうで、私がどれだけ頑張って耐えているか・・・。

 そんなオルファス様とならすべてをゆだねて奪われる恋愛ができると思うの!」


 その後も私はお兄様が挨拶を済ませて戻ってくるまで、ドン引きしているクレアにオルファス様とオルファス様の物語の魅力を語り倒したのだった。





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