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「アドレアン様は納涼会、誰と行くんですか?」
「誰ともいかない。むしろ行きたくない。」
「アドレアン様の家柄でそれは無理だと思いまーす。
じゃあこれまでの2年間も1人で出てたんですか?」
「ああ。納涼会は1人参加が認められてるだろ。」
「認められてなかったらどうするつもりだったんですか?」
「出ない。」
「無理だと思います。」
「適当に親戚とか、母親かなんかと出ることになるだろ。」
「なんか適当ですね。」
「どうでもいいからな。」
「社交界は出会いのチャンスなんですから、そんなんじゃだめだと思います。」
「それを言うならこの学園もだろ。
出会いなんか求めてないからいいんだよ。」
「アドレアン様、学園でも張りのない生活してるじゃないですか。
出会いを求めてないのって、いい出会いがあっても結局政略結婚させられちゃうから、とかそういうのですか?」
「いや、俺は・・・。
あー、でもまあそんなもんか。」
「なんか歯切れが悪いですね。」
「いいだろ、別に。
それにレイナルドは立場上仕方ないとしても、クリストフだって1人で参加してたぞ。」
「お兄様ですか?
あー、お兄様は不安なんですよね。あんな感じで本当に婚約者とかできるんでしょうか。」
「本人はともかく、クリストフ自体はモテるぞ。
ただ本人に今ひとつその気がなさそうだから何にもならないだけで。」
「え、そうなんですか?
いやでもわかる気がします。お兄様が教室に来た時の黄色い悲鳴とか考えたら、モテてないってことはなさそうだってさすがにわかります。」
話をしながら歩いていると、校舎の奥まで来るのもあっという間だ。アドレアン様がポスターを貼ってくれるので、私はポスターを持って彼に差し出す係だ。
アドレアン様が手際よくポスターを貼ってくれたので2人で生徒会室に戻る。
「納涼会、1人で参加してたってことは踊ったりはしなかったんですか?」
「誰が躍るか。せっかく1人で参加してんのに。」
「まあそうですよね。お兄様は?」
「クリストフはご令嬢方から引っ張りだこになっていたよ。レイナルドに匹敵するほどの大人気ぶりだ。」
「お兄様もなかなかやるんですね。」
「お前はダンスはうまくなったのか?」
「ダンスですか?」
「苦手だって前に手紙に書いてただろ。」
「そうですね。あの頃はお兄様の足をひたすらに踏み続けていて、いつかそのまま踏み抜いてしまうんじゃないかとちょっと怯えていたりもしました。」
「・・・ひどい状態だったんだな。」
「そんなに引かないでください!
大丈夫です。もう足を踏んだりしてません。お兄様だって足がなくなったりしていないじゃないですか。」
「2年間の特訓の成果がでたわけか。」
「そのとおりです。今は優雅に踊れます。嘘じゃないですよ?
私、デビュタントでレイナルド殿下に傷を負わせた不届きものになりたくありませんから。」
「ははっ。」
「笑い事じゃありませんって。本当に大変だったんですから!」
「じゃあ本当か確かめてやるよ。」
「え?」
「納涼会。ダンスの誘い、断るなよ?」
いつの間にか生徒会室についていたようだ。アドレアン様はそう言ってにやりと笑うと、さっさと生徒会室に入っていく。私は慌てて後を追った。
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ホームルームで納涼会の説明をしたその日の昼休み。クレアと食堂でランチを食べながら納涼会の話になった。
「ルーチェはやっぱりクリストフ様と一緒に出席するの?」
「うーん、直接聞いたわけじゃないけれど、やっぱりそうなるんじゃないかしら。」
「なるほどねー。それで王子殿下は1人か。
飢えた狼達が狙ってるわよ?王子殿下は大丈夫かしら。」
「飢えた狼って・・・。
たしかに生徒会でもレイナルド殿下と踊りたい令嬢たちが殺到して大変だったって話は聞いたけれど。」
「やっぱりそうなんじゃない。
上級生なんてデビュタントで殿下と踊れない人もいるでしょ?絶対大人気に違いないって。」
「納涼会の運営が不安だわ。」
「運営なんて心配してる場合じゃないって。
これはピンチで、それでチャンスよ!」
「は?
ピンチでチャンス?」
「そう。ピンチでチャンス。
王子殿下を狼達に奪われてしまうピンチに、狼達に紛れて王子殿下と踊るチャンス。」
「レイナルド殿下と踊るチャンスって言っても、殿下は大変そうだわ。」
「何言ってるのよ。
納涼会では女性の側からダンスに誘うのが許されてるのよ?この機会を利用しない手はないじゃない。婚約者候補なんだし、なんでもいいから理由をつけてアタックしないと!」
「そう言われても。」
「王子殿下と踊りたくないの?」
「うっ。そりゃあ踊りたいけれど。」
「それなら悩んでる暇はないわ。どうせクリストフ様も飢えた野獣の群れに連れていかれちゃうだろうし、壁の花になるなんてもったいないわ。アタックあるのみ!」
「クレアってこういう時は妙に積極的よね。」
「だっておもしろいじゃない。」
「おもしろいって、他人事だと思って。」
「ごめんごめん、そんな恨みがましい目しないでよ。
知ってるでしょ?私の推しは貴族令嬢と王子様のロマンスなの。だからついヒートアップしちゃって。」
クレアは屈託なく笑った。




