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 中間試験が終わった翌週、早速試験の結果が廊下に張り出された。好成績だった自信がある。クレアと一緒に張り出された結果を見に行くことにした。

 1年生から5年生まで全学年一緒に張り出されているらしく、廊下には結構人がいた。人波をかき分けて1年生の結果の前まで行く。

 やった。私の名前は一番上にあった。


「さすが新入生代表様ね。」


 クレアにからかわれる。


「クレアはどうだったの?」


「私は安定の20位くらいってとこ。」


 クレアと会話しながらその場を他の生徒に譲る。移動の途中でレイナルド殿下の名前が見えた。3年生の結果を見る。レイナルド殿下が学年首席でその次がお兄様。意外なことにアドレアン様が3位だった。でもたしかにそうなのかもしれない。アドレアン様のあまり真面目に勉強している印象がないから意外だったが、アドレアン様はレイナルド殿下の勉強会に参加していた。学園で勉強するような範囲はもう終えているだろう。それでもアドレアン様と成績優秀という響きが結びつかない。私は不思議な気持ちになりながら教室へ戻った。





**********




 5月も終盤に差し掛かり、今日は恒例となったレイナルド殿下とのお茶会の日だ。相変わらずレイナルド殿下は私にワンピースを贈ってくれている。今日のワンピースはカクテルカラーのピンクのグラデーションのものだった。胸のあたりまでは薄いピンク。それが裾の方にいくにつれ赤紫がかった濃いピンクになっている。裾のフリルは白だ。

今日のアクセサリーももちろんレイナルド殿下から贈られたもので、ゴールドで薔薇の花を模したトップパーツにしずく型のサファイアが揺れるようにチェーンでつけられている耳飾りと、細いゴールドのチェーンに花芯にサファイアを冠した金の薔薇のついた首飾り。髪飾りは金の枝、銀の葉にサファイアの薔薇とアメジストの薔薇が咲いたデザインのものだ。初めてレイナルド殿下にもらったものに少し似ている。

 考えてみるとレイナルド殿下からもらうアクセサリーはどれもよく似ている。そのほとんどが金色とサファイアで薔薇がかたどられたものである。だからレイナルド殿下からの贈り物はすぐにわかる。ワンピースにも似たような刺繍が入っていることもある。私としてもレイナルド殿下のイメージは初めて会った日に庭園で見た青い薔薇のイメージだ。だからサファイアの薔薇を身に着けるとレイナルド殿下が身近に感じられる。私とレイナルド殿下はまだ婚約者候補というだけの関係だが、あたかもレイナルド殿下の婚約者や恋人になったかのような気分になれるのだ。それがちょっとこそばゆい。

 


「学年首席おめでとうございます。」


「ありがとう。手紙ではお祝いの言葉をもらっていたけれど、直接祝われるのはやっぱり嬉しいね。君がほめてくれるのなら、いくらでも頑張れる気がするよ。

 ルーチェリア嬢も学年首席おめでとう。でも君には簡単だったんじゃないかな?」


「ありがとうございます。たしかに一般的な学科は簡単だったんですけど、魔法の授業の応用問題は苦労しました。

 魔法は今まで勉強したことがなかったので。」


「そうだね。王宮の勉強会でも取り上げたことがなかったな。剣術の訓練の時に一緒に魔法の訓練をすることがあったくらいか。

 ルーチェリア嬢は魔法の応用講義を受ける予定が?」


「はい。友達と一緒に魔法の勉強をしているところです。」


「どうして魔法の勉強を?一般的に貴族は学ばないだろう?」


「最初はお茶会でお庭散策をしているときに思ったんです。ご主人の海外の珍しい樹木を育てているお家とかがあって、私もそういうお庭を作れるようになりたいと思って。青い薔薇にも憧れましたし。

 最近は、恋愛小説の影響で。」


「恋愛小説の影響?」


「はい。貴族令嬢が主人公のものだと珍しいんですけど、平民女性が主人公だと主人公がお菓子作りとかをしたり、料理をするシーンが結構出てくるんですよ。

 それで私の友達のクレアも同じく大衆恋愛小説が好きなので、一緒に小説の主人公のようにお菓子を作ったりしたいね、ということになりまして。」


 さすがに差し入れ計画のことは隠した。アドレアン様に差し入れる予定で練習しているなんてレイナルド殿下には口が裂けても言えない。むしろ知られたくなかった。


「そうなんだね。君が作ったお菓子が食べられるランドール嬢がうらやましいな。

 私も王子でなければ君と一緒にお菓子を食べたりしたかったよ。けれど王子でなければ君と知り合えなかったかもしれないし、婚約者候補になることもできなかったからね。我慢するよ。」


 レイナルド殿下は切なげに微笑む。その微笑みにクラっとした。ついレイナルド殿下のために作ります、なんて言葉が口から出てきそうになった。現実的にはレイナルド殿下に手作り品を渡すことは難しいのに。現に今みたいなお茶会の時だって、レイナルド殿下が口をつける前にレイナルド殿下が連れてきた侍従が欠かさずに毒見をしている。


「なので今はクレアを週に2回ほど家に呼んで、使用人から料理と魔法を教えてもらっているんです。」


「私も魔法は嗜みがあるから、もし何か困ったことがあったらすぐに相談してくれて構わないからね。」


 レイナルド殿下に差し入れができないことをとても寂しく思った日だった。





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